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ズボラライフ2 ~新章~
53.その願い事、全力で叶えます
しおりを挟むアズマ(ロードの部下)視点
ドラゴンの弁当ってどんなものなんだ。
それよりも背負ったリュックからどうやって中身を取り出す気だろうか。
このアホなドラゴンが弁当を食うなんていうもんだから、巨大虫の大群に囲まれている事も忘れ思わず見入ってしまった。
《おべんと、おべんと~♪》
ドラゴンは上機嫌に鼻唄を歌いながら牙を見せる(笑っている)と、リュックが突然光り、パカンと勝手に蓋が開いて大きな光の玉が飛び出してきたのだ。
それはドラゴンの前に着地すると徐々に光を和らげ……そして現れたのはオレの部屋よりデカイ巨大な箱?
何か滅茶苦茶高級そうな細工が施してある箱だ。
あれがドラゴンのお弁当か?
《今日は何が入ってるかな~♪》
器用に鼻先で箱の蓋を開けるもんだなぁと感心していたら、師団長は「虫共に囲まれてよく弁当なんぞ食えるもんだ」と呆れた声を出していた。
そんな師団長の足元には、さっきまで泣きついていた騎士が白目を剥いて転がっている。
《あ~! 今日は僕の大好きなふわふわオムレツが入ってる~!! やったぁ!!》
おむれつって何だよ。ドラゴンって肉食ってんじゃないのかよ。
「って、何その豪華な弁当ォォォ!!!? おま、それ本当にドラゴンの食い物!? 王族より良い飯食ってない!?」
《モグモグ…おいし~!! やっぱりロードさんのご飯はおいしいね~!!》
師団長の手作りだったァァァーーーーー!!!?
「オメェの為に作ったんじゃねぇ!! ミヤビの為に作ったのになんでコイツが食ってんだよ……」
師団長のつがい様ってこんな巨大な弁当一人で食うの!?
《モグモグ。あ、お願い事きまった~?》
「決まるか!! お前の弁当の背景が強烈すぎて記憶から飛んでたわ!!」
《おべんと~のはいけい??》
きょとんと首を傾げるドラゴンは、最初の迫力が嘘のようにアホな子にしか見えなくなっていた。
「お前本当に願い叶えられるの?」
《もちろんだよ~。僕すごーくゆうしゅーなんだ!!》
ポンコツ感がすごいんだが。
「まぁ、叶えてくれるっつーなら……」
師団長のあの早く追い返せって目がオレを決断させる。
「あの回りにいる巨大虫、殲滅してくんないかな?」
《きょだい虫~??》
ドラゴンは弁当を食いながら回りを見て…………
《やだ~何あの気持ち悪いの~! 僕ああいうのにがて~!!》
お前はどこぞの女子か!!
《ロードさん早く追い払ってよ~! 何であんな気持ち悪いのがいるの~?》
「オメェその気持ち悪ぃ虫をさっきから尻尾で潰してんぞ」
《えぇ~??》
気持ち悪い~!! と叫びながら、ドラゴンは片足を上げ下げしている。
コイツもう帰ってくれないかなぁ。
「虫の殲滅は無理そうね……」
《ちょっとむり~。僕ね、気持ち悪いのとか触れないの~》
このドラゴン殺しても良いですかね。
《できれば他のお願い事にして~?》
師団長を見れば、すまなそうな顔で頷かれた。
仕方ないので何がコイツに出来るんだろうかと考える。その時、
「アズマ君!! 早くお湯出してムーをやっつけちまいな!!」
おばちゃんの声が耳に届きげんなりだ。
まだお湯とか言ってんのかよ。だからオレは湯を出すとかんな器用な魔法使えねぇの!!
…………って、待てよ。ドラゴンって湯位なら簡単に出せんじゃね? このドラゴンに湯を出してもらえば願いを叶えたって事で追い返せるし、お湯お湯言ってるおばちゃんを黙らせる事も出来る。
一石二鳥じゃねぇか!!
とても良いアイディアを思いついたオレは、ドラゴンに向かって一番良い笑顔で伝えたのだ。
「あっちの方にお湯出してくんない?」
《お湯~? あそこにお湯~?》
そうだよ!! ドラゴンなんだからお湯位出せんだろ。
《わかった~。僕やってみる~》
よし。これでひと安心…………
《お湯って、地面掘ったら出てくるんだよね~。ミヤビ様から聞いたから知ってる~》
え?
「ッ……ばか!! 止めろ!! オメェなにする気だ!?」
師団長が慌ててる。あの師団長が。
《たしかいっぱい地面掘るって言ってた~》
ドラゴンはそう言って息を大きく吸い込むと、オレが指定した場所にその口を開けた。
次の瞬間、光と轟音と衝撃波が同時に襲ってき、その場にうずくまって踏ん張る事が精一杯で、何が起きたのか分からなかったんだ。
オレの願い事で、まさかあんな事になるなんて……!!
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