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ズボラライフ2 ~新章~
52.お弁当はちゃんと持ってきてるよ~
しおりを挟むロードの部下 アズマ視点
我等が第3師団長には、どうやらドラゴンの知り合いがいるらしい。
人間離れした強さに、精霊様というつがいを持つ男なのだからドラゴンに知り合いがいる位不思議ではない、気もする。
さすが師団長。すげぇわという思いと、もしかして師団長人間やめちゃったんじゃね? という考えが交差し、さらにドラゴンって喋んの!? ってもう頭ん中がパニックだ。
てか何で急にドラゴンが現れたんだよ。
《“しょうかんしゃ”の人どこ~? もしかしてロードさん??》
「んなわけあるか」
《じゃあ誰~? 僕“しょうかんしゃ”って人のお願い叶えてあげないといけないんだって》
「オメェが願いを叶えるだぁ? そんな器用な事できるドラゴンじゃねぇだろ」
《僕だってお願いくらい叶えられるもんね~!》
どう見ても会話してるよな……夢じゃねぇよな?
「ロクな事にならねぇ未来しか見えねぇよ」
《大丈夫だよ~。僕もう大人のオスだもんね。人間の役に立つドラゴンだって知ってもらって、ミヤビ様に褒めてもらうんだ~。そしたらショコたんに認めてもらえるでしょ~》
“ミヤビ様”に“ショコタン”?? ドラゴン仲間だろうか?
「ガキが何言ってやがる。大体テメェがミヤビに褒められるなんざ一万年早ぇ。つーかミヤビが褒めんのは俺だけだ」
ああ。“ミヤビ様”っつーのは師団長のつがいの精霊様か。てかこの禍々しい見た目のドラゴン、子供なの?
《ロードさんのその言動って“おとなげない”っていうんでしょ~。ヴェリウス様が言ってたよ》
「ぁ゛あ゛?」
人族ってのはつがいの事になると大人げないからなぁ。ドラゴンに指摘されてるってのがちょっとあれだけど、師団長の唯一の欠点はつがいへの独占欲の強さだな。仕方ねぇけどさ。
うんうんと納得していると、何故かこっちを見てくる師団長と目が合った。
うわっ よく考えればあの憧れの師団長にこんなに接近したの初めてじゃん!! 目が合うとかありえないんだけど!!
「おい。オメェこのバカの言葉がわかんだろ?」
「は!? ぁ、はい!! 普通に喋ってますよね? 師団長も話してたじゃないっスか」
師団長から話しかけられた!! びっくりしてちょっと声がひっくりかえったけど変に思われてないよな?
「……マカロン、その召喚者ってなぁコイツの事だろうよ」
師団長がオレの一言で眉間にシワをよせ、ドラゴンを見上げた。
オレ何か気に障るような事言った?!
《え~この人間がそうなの~? ねぇ、君お願い事はなぁに~?》
ドラゴンがぎょろりとした目をこっちに向けて鋭い牙を見せる。怖っ 食われたりしないよな!?
「ん? お願い事??」
《そうだよ~。君が“しょうかんしゃ”でしょ~? 僕ねぇ、“しょうかんしゃ”のお願い事叶える為に来たんだよ~》
「しょうかんしゃって??」
ドラゴンの言葉に戸惑っていると、師団長が深い溜め息を吐いた。
「“召喚者”……オメェはさっき虫を1匹殺しただろう。そん時に出たものを触ったせいで自身の意思とは関係なくこのドラゴンを召喚した。だからオメェはコイツの“召喚者”ってわけだ」
「は……はぁぁーーーーー!!!?」
《ねぇ、お願い事まだぁ?》
うるせぇドラゴン!! 今大事な話中!!
「ぇ、あの宝石って、このドラゴンを召喚するアイテムだったんスか!? いや、それより虫倒すとんなヤベェもん出てくるんスか!?」
「大抵は普通の鉱石類みたいだが、中にはそういうもんもあるみてぇでな……」
「鉱石って、それはそれですげぇ事な気が……虫を倒せば倒す程金が稼げるって事っスよね」
《ねぇ~早くお願い事言ってよぉ~》
ちょっと黙ってなさいってば!!
「騎士団が倒した分は国庫に納まるがな」
「ですよね~」
分かってたけどね。
「あれ? て事はこのドラゴンも国の……」
「こんなもん誰がいるってんだ。逆に迷惑かけられて国を荒らされて終わるぞ」
《そんなことないよ~。僕ゆうしゅうなんだよ~。竜王みたいって褒められた事もあるんだからね! えっへん!!》
うん。ポンコツ竜だ。
「だからオメェもややこしくなる前にコイツに出来そうな願いを言って追い返せ」
「このドラゴンにできそうな事って言っても……」
首を傾げてコチラを見るドラゴンはかなりバカっぽい。
このドラゴンに出来る事なんてねぇだろ。
《あ》
「あ?」
《僕お腹すいちゃった~》
無い。このドラゴンには誰の願いも叶えられない。間違いない。師団長だって溜め息吐いてるからね!!
「師団長!! オレにはこのドラゴンがアホに見えます!!」
「その通りだ」
ですよねーーー!!
《ご飯食べてもいい~? ミヤビ様にちゃ~んとお弁当の入ったリュック用意してもらってるんだ~♪》
リュック……? うわっ本当にドラゴンがばかデカイリュック背負ってる!! え、何これ。カッコ悪!!!!
「ミヤビ……何でドラゴンにリュック背負わせてんだ……っ」
手で顔を覆った師団長の姿に、精霊様の仕業なんだ……と口の端が引きつった。師団長でもつがいに振り回されるんだなぁと、手の届かない英雄だったこの上司を身近に感じてしまった。
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