462 / 587
ズボラライフ2 ~新章~
33.呪術
しおりを挟む雅視点
「逮捕って……ヤコウ鳥をギルドに買い取ってもらおうとして通報されたっていうあの前代未聞の?」
その通りだけど、トモコよ。なんでそんなにニヤニヤしながら話してるのかな。思い出し笑いしないで。
「ゴホンッ …その騒動の時にギルドに張り切って現れたのがあそこにいる人なんだけど、」
何やら悪そうな顔をして舞台へ上がり、床を見ながら喋っている男達を見る。
「あの真ん中の偉そうな人?」
「うん。他の騎士が私を見て子供じゃないかって戸惑ってた時にも、大声で「連行しろ!!」って叫んでたよ。お役目に忠実な真面目な人だなぁって思ってたけど」
トモコと話していれば、何やら“札”のようなものを床に張り出したのだ。その札は床に張った途端溶けるように消えてしまった。一体何なのだろう?
「何か怪しい事してるねぇ~」
トモコの呟きに頷きながら男達の動向をうかがう。
その後男達は一言二言交わし、そそくさとその場を立ち去ったのだ。
「みーちゃん、あれってさ……“呪術”、だよね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロード視点
『ロードよ。ミヤビ様が珍しく剣術の真似事をされているぞ』
御前試合の会議が終わり、引続き警備関係の会議を宰相と師団長のみで行っていれば、突然室内に現れたヴェリウスが来て早々そんな事をのたまった。
「あ゛? どういうこった」
ヴェリウスに跪いている宰相やカルロ達を横目に問えば、上機嫌に続ける。
『前々からおぬしの剣技に興味を持たれていた様子であったが、今日の試合で触発されたらしい。あの舞台上で戯れに木の棒を振り回されているのだ』
母親のような優しげな瞳で語るヴェリウスに、いてもたってもいられなくなった俺は席を立った。
俺のつがいが可愛すぎる!!!!
「ロード、会議中ですよっ どこに行く気ですか!!」
レンメイがハッとしたように叫ぶが今はミヤビだ。
俺の剣技に興味を持ってたとか、棒を振り回してるとかアイツはどんだけ可愛いんだ! 今すぐこの目にその光景を焼きつけてぇ!!
「俺ぁつがいの様子を見てくっから、オメェらは会議続けててくれや」
「何を勝手な……ッ「話はほぼ終わっているからね。後は書類をおいておくから確認しておいてくれ」」
レンメイを遮ってカルロがそう微笑むので、「わりぃ」とこたえて転移した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
男達が去って暫く後、コロッセオにバチバチと派手な静電気が発生してロードが現れた。
「あ、ロード」
「ミヤビ! ……あ゛? もう終わっちまったのか……」
急に落ち込んでしまったロードに首を傾げていると、こちらへ走ってきたロードに抱き上げられる。
「ロード?? どうしたの」
「ヴェリウスからお前が棒を振り回してるって聞いてな。そんな可愛い光景、見ずにはいられねぇだろ」
「え!? なんでヴェリウスがその事を!?」
キョロキョロ辺りを見回すが私達以外見当たらない。
『ミヤビ様と御子様方には私の眷属を護衛につけておりますので、私が知らぬ事などありません』
いつの間にか転移してきていたヴェリウスの声にビクッとする。
ていうか、監視されてたのね……。
『あの事は黙っておきますのでご安心ください』
バレてるゥゥ!!!!
前髪ぱっつん事件を知られていたとは…犬だから表情が読みにくいけど、怒ってはいないようなので良かった…のだろうか?
「?? しっかしオメェ、俺の剣技に憧れてたんだってなぁ」
「はい?」
「早く言ってくれりゃあいくらでも近くで見せてやったのによぉ」
「?? 何? ロードに憧れ??」
このゴリラは一体何を言っているんだとトモコとヴェリウスを見れば、ヴェリウスが呆れたように溜め息を吐く。
『私はミヤビ様がロードの剣技に興味をお持ちだと言っただけです。憧れていると言った覚えはありません』
ああ。そういう…。
「しっかしオメェが棒を振り回してる姿、見たかったぜ」
「本職に見られるのはちょっと…」
「可愛かったんだろうなぁ。ミヤビだもんな」
もしかして棒を振り回してる姿を見る為だけにここへ駆け付けたのだろうか。
「みーちゃん、あの事言わなくていいの?」
「トモコ君。ぱっつん事件は忘れようか」
余計な事を言うでない!! とトモコを睨めば、そっちじゃないと首を横に振られたのだ。
「怪しい男達の話だよ」
「あ゛? 怪しい男だぁ?」
トモコの言葉に耳敏く反応するロードはさすが師団長様だ。
「あ、それね」
「何の事だ。また問題起こしたんじゃねぇだろうなぁ」
さっきのデレッとした顔から一変、ヤクザになったロードに凄まれる。
「いつも問題起こしてるみたいな言い方は止めてくださーい」
「いつも問題起こしてんだろ」
言い返せない事こそ最大の問題だ。
「もう。イチャイチャしてないで話を進めようよ!」
どの辺りがイチャイチャなんだとトモコに訴えるが無視された。それでも心友なのか。
「さっきロードさん達が来る前に数人の騎士がやって来てね、舞台上の床に“呪術”を仕掛けていったんだよ~」
結局さっさとトモコが説明してしまった。
「“呪術”だぁ?」
訝しげに舞台上を見るロードは、多分鑑定しているのだろう。そして遠い目をして言ったのだ。
「放っとけ」
22
お気に入りに追加
2,571
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる