異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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ズボラライフ2 ~新章~

23.開会

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人が……、観客席に人が入りはじめているじゃないか!!!!

「ロード!! 行かなきゃっ 良い席が埋まっちゃうよ!!」

焦る私にロードは胡乱な目を向けるだけだ。

「もういい!! ロビンこっちにおいで。お母さんと大会を見に行こうね」

ロードからロビンを取り戻そうと手を伸ばすと、高い高いをする要領で避けられる。

「!? 時間が無いんだから意地悪しないで!!」
「意地悪じゃねぇよ。ここで良いじゃねぇか。何でわざわざ人混みに行こうとしてんだ」
「だから、お祭りは皆で楽しむものなの!! 」

そう言えば大袈裟な位の溜め息を吐かれる。

「オメェは貴族達にゃあ精霊として顔も知られちまってんだぜ。もしそいつらにあの観客の中でかしずかれでもしてみろ。王都中に顔が知られてもう店も開けられなくなるんだぞ」
「う゛…」

王宮を好き勝手歩いていた弊害がまさかこんなところで返ってくるとは!!

痛い所を突かれ、ロードから目をそらして考えた。

「あ。それならフードしてれば大丈夫!!」
「ここなら邪魔くせぇフードも被らなくていいだろうが。何でオメェはそう問題が起きそうな行動を取ろうとすんだ」

つがいなのに心底呆れられるって逆にすごくない?
前々から言っているが、普通つがいって相手が何をしていても可愛く見えたり素敵に見えたりするらしいのに、ロードは私に対してかなり酷い。
もしかしたら、鬼人族と人族のつがいの扱い方は違うのではないだろうか。

「ったく。仕様のねぇ嫁さんつがいだなぁ」

ロードは溜め息を吐き、自分の着ていた外套を脱ぐと私の頭からそれを被らせ言ったのだ。

「それは絶対脱ぐんじゃねぇぞ」

そしてロビンを片腕に抱き、私を引き寄せると移動を始める。
戸惑いながら流されるままついていくと……


「ロード、ミヤビ殿は見つかった…みたいだね」


迷路みたいな半地下の道を右に左に曲がり階段を上がった先、外に繋る出入口を潜れば、観客席が一望出来る場所へと出た。そしてそこに居たのは、優しい笑みをたたえる色男。

「カルロ、ガキ共も居るから怖がらせるんじゃねぇぞ」

そう。カルロさんだ。

カルロさんが双子を怖がらせるわけないだろうに、ロードはそんな事を言ってカルロさんが座っている席の後ろを指差す。

「ミヤビ、オメェはここに座ってろ」
「え? もしかして本当に席を取っててくれたの?」

観客席も闘技場も一望出来るこの場所は特等席だろう。

「地下の控え室で納得してくれんなら一番良かったけどな。俺から離れられるよりゃマシだ」

たまにはつがいらしい事もするんだなと感心していれば、「みーちゃん!」と可愛らしい声をかけられたのだ。驚いて見れば、そこにはトモコが居るではないか!
ロードの陰に隠れていてわからなかった。

「トモコ! 屋台を見に行ってから全然帰ってこないと思ったら、こっちに来てたの!?」
「屋台に並んでたらロードさんに会ってね、みーちゃんを連れて行くから先に行ってろって、レンメイさんに連れてきてもらったの」

よく見ると、トモコの奥にはレンメイさんも居る。
愛しのホワイトローズともこに会えたからか、随分とご機嫌のようだ。


という事で、ロードの外套を引きずりながら指定された椅子に座り、あつらえたかのようなスペースにベビーベッドを出して子供達を座らせるとはたと気付く。

私の目の前に座るのはロード、カルロさん、そしてレンメイさん。騎士という事もあり、普段から身体を鍛えている3人は身長も高い。つまり横も縦も大きいわけで……

目の前に壁が立ちはだかり何も見えない!!!!

「何これ。せっかくこんな見晴らしの良い特等席なのに、なんでむさい男の背中しか見えないの?」
「きっとみーちゃんの姿を誰にも見せない為だと思うなぁ」

ボソボソ呟く私に返事をするトモコは苦笑いだ。

やっぱりこんなオチだったかと溜め息を吐き、仕方ないので3人の大男の背中をモニター代わりに闘技場を映しだすと、トモコが「おおっ これは良いね!!」と喜んでいた。

暫くするとざわついていた場内に大歓声が上がり、国王が姿を現した事が知れた。国王は私の後ろの3段位高い位置におり、後ろを向けば困惑する国王と目が合ったので、どうもすみませんという気持ちを込めてお辞儀をしておいた。


突如ラッパが鳴り響き、大歓声が止むと声がデカイ人が開会の挨拶を始めた。
建物の設計上声が響くように出来ている為か、一応上の段の席まで聞こえるがやはり聞こえづらい。

ここは協力するしかないだろう。

一人頷き、挨拶と解説は皆にはっきり聞こえるよう願ったのだ。

「な、なんだ!?」
「声がはっきり聞こえるわ!?」

突然司会の声がはっきり聞こえだした為か、会場が騒がしくなる。
ロードが鬼の形相でこちらを振り返ったので、ヤバイとフードを深く被って自分を守った。

「静粛に!!」

司会とはまた別の、激渋声が聞こえて会場が静まる。

「この現象は、今日のこの日を祝福してくれた神々の御技である。皆、全力で楽しめとの思し召しなのだ」

さすがはルーベンスさん!! 激渋声とそのイケメンさで会場中の女性陣を魅了し、さらに盛り上げているではないか!!

「ミヤビ、後で話をしような」なんて物騒な声は聞こえない。とにかく、ルーベンスさんの機転で何とかなったのだから問題はないだろう。


さぁ、いよいよ待ちに待った試合の開始だ。

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