異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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ズボラライフ2 ~新章~

13.はぐれ精霊

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精霊ガット視点



「アーディン様!! 異界への干渉はもうお止めください!!」

「神王様でさえ帰って来れぬ場所、それを神が干渉するなど、どのような事が起こるかわかりません!!」

「アーディン様!!」と主の部屋から毎日のように聞こえる大声。
その声の主はアーディン様が最初に創った精霊、オリバー様のものだ。

神王様がお隠れになってから気の遠くなるような時間、アーディン様はずっとかの御方の行方を探されていた。
それを咎めるような声は、例え“一の精霊”であっても他の精霊達からは良く思われるはずがない。

確かにあの頃の主は異界に干渉する事に重きを置いており、魔素の枯渇で苦しむ人族の事には見向きもせず、オリバー様に全てを任されておられた。
しかしそれも、神王様を異界から連れ戻す為の事。
我らはその行動を誇りこそすれ、非難するなど考えられない事だったのだ。
しかしオリバー様は、あろう事かそんな主に反感を持ち姿を消した。
それを知ったアーディン様を慕う精霊達は怒り狂い、オリバー様を探す事もせず、いないものとしたのだ。
この行動こそが我らの最初の罪だとも知らずに。


私がアーディン様の様子に違和感を抱いたのは“一の精霊”オリバー様が失踪したすぐ後だった。



*****



「━━…それで、貴方以外の精霊はどこにいるんですか?」

目の前で話すこの少女は、神王様に近しい神らしい。

アーディン様の言うままに、現人族の神を神王様だと思い込んでいたあの時、幻獣の核を手に入れようと相対したのがこの女神であった。

確かに神をも超越するような力は、神王様に近しい神なのだろうと、今思えば理解できる事なのだ。

「今は皆、各々に与えられた仕事をこなしている時間ですので、この神殿内には居りません」
「仕事? え、精霊って働いてるの??!」
「はい。神々程ではありませんが、精霊にも仕事はございますので」

世界のバランスを保つ為、日々眷属を管理されている神の仕事を手助けする事が我々精霊の主な仕事だ。
神王様に近しい神ともなると、下々の事情はご存知ないのだろう。

「精霊って、森の中で踊ってたり、何かフワフワしてたりとかじゃないの!?」
「そんな暇な精霊はおりません。もし居たとしてもそれは“はぐれ精霊”でしょう」

まぁそんな事をしている“はぐれ”など聞いた事はないが。

「!? 私の精霊のイメージが!!」

この方は前にも同じような事を言っていたな。
あの時は、常に首を振っている白い精霊がとかなんとか……。

「ていうか、その“はぐれ精霊って何”ですか?」

驚いた。“はぐれ精霊”も知らないのか。
いや、精霊の仕事もご存知なかったのだ。当然か。

「“はぐれ精霊”とは、主を失った精霊の事です」
「ああ、貴方達ははぐれ精霊「違います」」

何気に失礼な方だ。

はぐれ精霊は主から捨てられた、もしくは自らの意思で主から離れた者の事をいう。
例えば主が亡くなった場合精霊も共に消えるが、次代が引き継ぎを望めば消える事はない。
我々の場合もそうだ。トモコ様が我らを望んで下さったから今ここに在る。

つまり“はぐれ”とは敬遠される存在なのだ。

「へぇ。だったらオリバーさんは“はぐれ精霊”なのか…」
「!?」

この方は今何と言った!?

「貴女様はオリバー様をご存知なのですか!?」
「え、あ、まぁ……」
「それでは、今どちらにいらっしゃるかもご存知なのでしょうか!?」
「それは知ってますケド……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



雅視点



「どちらにいらっしゃるのか教えていただけませんか!?」

さっきまで落ち着いて対応してくれていた精霊は、オリバーさんの話に前のめりになり聞いてきた。
いきなりどうしたのかと一歩後ろへ下がる。

「お願い致します! 私はオリバー様に……ッ」

彼が普段冷静そうな態度を一変させ、必死に頼んでいたその時、数人の話し声が聞こえてきて彼はハッと我にかえったのだ。

「も、申し訳ありません。失礼な事を致しました」

そんなに必死になる程オリバーさんの事が知りたいって、もしかして…………元カレですか?

成る程。オリバーさんはアーディンだけでなく彼にも手を出していたのか!! さらにお義父さんにロードまで!! オリバーさん。何て恋多き男!!! 本命は一体誰ですかーーーー!!!?

心の中で妄想を滾らせながらも真面目な顔を装い、精霊のお兄さんに聞く。

「オリバーさんの居場所を聞いてどうするのですか?」

今すぐ会いに行くのか!? 自分を捨てた元カレに!!

「私は……」

私は何!? 忘れられないの!? それとも新たな恋とかしちゃったりしてるの!?
ヤバイ。よだれが出てきた。

「ッ……申し訳ありません。あの方の居場所を知ったからと、私はどの面下げて会いに行けましょうか……」

何したのーーーーー!?
貴方達の過去にそんな切なげな表情をする何があったと!!!? 

盛り上がってきた妄想にテンションもマックスだ。
しかし、


「ガット!! お前そんな所で何サボってんだよッ」


私の妄想はルビー色をした髪の精霊が現れた為に中断されたのだ。
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