426 / 587
番外編
神王様の薬3
しおりを挟むロビン視点
「━━…で、アフィラート様はこの世界でもトップクラスの魔法使いってわけだ! 」
さっきからずっと“焔の鳥”と“アフィラートさま”とかいう冒険者の事を語っているものだから、いい加減飽きてきたんだけど。
要するにこのお兄さんは、“アフィラートさま”のような“魔法使い”になりたいのね。
でも、話を聞いていると…火の魔法も水の魔法も、子供でも使えるようなレベルのものばかりだわ。“アフィラートさま”って本当に凄い魔法使いなのかしら??
「“焔の鳥”は深淵の森で、ヤコウ鳥やヴェア、珍しい薬草を採取して一気に名を上げていったんだ! だから、俺もあの人達と同じようにここでヤコウ鳥やヴェアを狩って、名とランクを上げるつもりだ!」
お兄さんは天を仰ぎながらそう言ってわたしを見ると、
「なぁ、お前はこの森に住んでるんだろ? ヤコウ鳥が居る場所、知らないか?」
「ヤコウ鳥ならよく狩りに行くから知ってるけど…」
でもこの辺りに居る可愛い動物に大怪我を負わされるんでしょう。ヤコウ鳥だと確実に殺されてしまうわ。
「知ってるのか!?」
なのにお兄さんは瞳を輝かせながら、わたしに場所を教えてほしいってお願いしてくるの。
さっきまで死にそうだったというのに、この人忘れてるのかしら?
「勿論場所を教えてくれるだけで大丈夫だから。ヤコウ鳥は凶暴で強い魔物だから、子供を連れていくわけにはいかないしな」
「子供じゃなくて立派なレディだって言ってるでしょう!!」
それに、ヤコウ鳥は魔物じゃなくて普通の動物よ!! と訴えたのに、お兄さんはハハッと白い歯を見せて笑い、ヤコウ鳥はAランクの魔物だって言うのよ。Aランクが何かはわからないけれど、魔物と動物の差なんて見ればわかるじゃない。
魔法を扱える動物の事を魔物っていうんだって、小さい頃にヴェリウスから習ったわ。
「ヤコウ鳥狩ってきたら、助けてくれたお礼に肉を分けてやるよ」
なんて、レディの頭を撫でてくるものだから呆れたわ。
「もう、しょうがないわね! 場所を教えてあげるわ」
ため息を吐いて言えば、お兄さんは嬉しそうに「本当か!!」と喜んだの。
「ただし、わたしも一緒に行くわ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
売れに売れた薬達はあっという間に完売して、あんなにあった在庫が綺麗に片付き、離れの棚にある分だけとなった。
「いや~思ったより人気だったね~」
ヘラヘラ笑っていれば、浮島全員という脅威の人数をさばいていて、さすがにぐったりしていたお手伝いの珍獣達から、力のこもった答えが返ってきた。
「当然です。神王様手ずからお創りになったもの」
「常であればお金などで交換できるようなものではありません」
「神々の褒章でお与えになるものです」
等々、たくさんのご意見をいただいた。
なんだかスミマセン。
「これこれ、お前達。神王様が困惑されているではないか」
一番年を取っているというのに、疲れを感じさせない飄々とした様で現れた長老は、すかさず私をフォローしてくれる。さすがベテラン執事様である。
「長、神々のご様子はいかがでしたか?」
「問題はないから安心しなさい」
長老は薬を買った神々の様子を見に行っていたらしい。私の薬が原因で神同士の争いになってはいけないからだとかなんとか。テキトーに創っている薬でそれはないだろうと思うのだが、ヴェリウスや長老達はそこは慎重に進めたいとかで、事前に色々していたそうだ。
「それより神王様、ロビン様が人間に神王印の薬をご使用になり、一緒に狩りに向かったと報告がございましたが、いかがなされますか?」
長老からにっこりと報告された内容に首を傾げた私は、こう答えたのだ。
「え? 何か問題あるの?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロビン視点
「やっぱり駄目だ。危険すぎる」
「わたしがいないとヤコウ鳥の居場所はわからないまま、ずーーっと森をさ迷うのよ」
駄目だというお兄さんに、一緒に行かないなら場所は教えないと言って悩ませ、結局ついていくお許しをもらえたが、それでもさっきからぐずぐず言ってくるお兄さんに、いい加減ムカついてきたわ。
「でも……」
「でもじゃない!! わたしはこの森に住んでるのよ? お兄さんより危険は少ないし、ヤコウ鳥だって狩ったことあるって言ってるでしょ!!」
「そんなわけあるか!! ヤコウ鳥はAランクの魔物だぞっ子供が狩りに行けるわけない!!」
ヤコウ鳥はディークだって簡単に狩れる動物よ。なのに、お兄さんは危ない、危ないってわたしを帰そうとしてくるものだから、彼から逃げるように走ってヤコウ鳥の居る場所までやってきたの。
「ま、待てって!!」
お兄さんは息を上げて追ってきたわ。
ヤコウ鳥の巣の近くまで来たから走るのを止めたのだけど、
「お前ッ 危険な森で大人から離れる奴があるか!!」
なんて怒鳴ってくるのよ。折角案内してあげたっていうのに、酷い話だわ。
「うるさいわね。案内してあげたんだから感謝しなさいよね!」
「うるさいとは何だッ 俺はお前を心配してだな…、は…? 案内って……」
お兄さんが叫ぶものだから、気付かれたみたい。
木々の上部が激しく揺れて、バサバサという大きな音と共に葉っぱや折れた枝が降ってきたの。
「来たわよ」
「来たってなにが……ッ」
強い風が土埃を巻き上げる。
ゲギャアァァァア!!!!
耳に刺さるような声をあげてわたし達の目の前に現れたのは、3メートル以上の巨体と、綺麗な羽を大きく広げるヤコウ鳥だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヤコウ鳥: 雅の大好物。美味しくて有名な巨大鳥。稀少な鳥でルマンド王国では深淵の森にのみ生息。2メートル以上あり凶暴。昔雅がこの鳥をコピーしてギルドに売った事で逮捕されるという珍事件をおこした。
ヴェア: 熊に似た動物。凶暴。14万ジットで買い取ってもらえる。
23
お気に入りに追加
2,573
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる