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番外編
神王様の薬2
しおりを挟むロビン視点
「!? ぐふぅ…ッ」
おじさんの口に突っ込んだママのお薬を、おじさんは反射的に飲み干したの。
出血が多いから、ママが趣味で作ったお薬でも、飲まないよりは飲んだ方が良いんじゃないかなって、そう思ったからあげたのよ。
痛みも少しは引くかもしれないし。
後は止血してあげなきゃ!!
リュックからハンカチを出しながら、パパに止血のやり方を聞いていて良かったって考えながらおじさんを見たの。
「げほッ…………は? 痛みが…」
お薬を飲み干したおじさんは、しばらくゲホゴホとむせていたけど、その内動きが止まって目を見開き、起き上がってお腹の傷を押さえたり叩いたりしているものだから、慌てて止めさせようとしたわ。
「おじさん?」
近づくと、おじさんは勢いよく顔を上げて私を見てきたの。
「なん…ッ これは、一体……っ俺に、何を飲ませたんだ!?」
「え? 何って、傷に効果のあるお薬よ?」
前のめりに聞いてくるおじさんに、毒だと勘違いさせてしまったのかしら? と首をかしげながらこたえる。
「傷に効果って…ッ いや、確かに傷は塞がったが」
納得できない顔をして、もう一度お腹の傷を叩き、ベロンと服を捲るので、レディの前ではしたないわと軽蔑の眼差しを送っていると、おじさんは「…………消えてる」と呟き固まったの。
「なに…「傷が!! 消えてる!!!!」」
わたしの言葉を遮って大声をあげるおじさんにびっくりしたわ。なんなの突然。
「おい!! さっきの薬ってのは、本当は何なんだよ!?」
「何って、だから傷に効くお薬よ? でも素人が趣味で作ったものだから、効いて良かったわ」
ママの作ったものでもどうやら効果があったみたい。「素人!?」「趣味!?」ってうるさいけど、元気になって良かったわ。
「ところでおじさん。何であんな大怪我おってたの?」
「何でって、そりゃ“深淵の森”の動物にやられたに決まってるだろ」
このおじさんはどうやら森に狩りに来て怪我をしたみたい。
「さすが“深淵の森”だよ。魔物でもない動物があんなにヤベェなんて……ていうか、さっきからおじさんって言ってるけど、俺はまだ18だから。おじさんじゃないから」
「え!? おじさんお兄さんだったの!?」
無精髭っていうの? パパみたいに生えてるし、おじさんだと思ってた!!
「失礼なガキだなぁ。まぁ助かったから一応礼は言っとくよ。ありがとな」
「ガキ!? レディに向かってガキ!? 失礼なのはおじ…あなたよ!!」
「お前も俺におじさんって言ってたろうが」
ああ言えばこう言う!! なんてデリカシーの無い人なの!! ルーベンスおじい様を見習うべきだわ!!
「そんな事より、お前みたいなガキがこんな危険な場所に居たら危ないだろ。いくらあんなすごい薬を持ってるからって…」
大人とはぐれたのか? って心配してくれてるけど、この森の可愛い動物達にやられる程弱いあなたの方が心配よ。
「はぐれてはないわ。わたしはこの森に住んでいるもの」
「はぁ!? この森は神域で、人が住める場所じゃないからな!?」
しんいき…? しんいきって何かしら?
「住んでるもの。ここの奥に村だってあるわ」
「村!? ……いや、“焔の鳥”は、この森で精霊様達に魔法を教わったって噂だからな…精霊様の村があったって不思議じゃないはず……」
おじさん…お兄さんはなにやらぶつぶつ言っているけど、声が小さくて聞こえないわ。
「もしかしてお前…いや、貴女様は精霊様でしょうかッ?」
「わたしはただの人間よ」
この人何言ってるのかしら。どう考えてもわたしはただの人間だわ。確かに精霊のお友達は沢山いるけれど。
「そ、そうだよな。なわけないか……はぁ~…あんなすごい薬を持ってるからてっきり…だよな……」
人の顔を見て残念そうにため息吐くなんて失礼ね!
それにしても、このお兄さん精霊を探してるの? この森で?
「なぁに? お兄さん精霊をさがしているの?」
「あ~…探してるっていうか…俺、あの“焔の鳥”みたいに強くなりたくてこの森に入ったんだよ」
「ほむらのとり?? 何、その鳥? そんなに強い鳥がこの森に居るの??」
「お前“焔の鳥”を知らないのか!!!?」
信じられないというように見てくるお兄さんに、少し恥ずかしくなりながら教えてもらったのよ。
そのほむらのとりっていう鳥の事を。
“焔の鳥”は伝説とまで言われている冒険者パーティーで、メンバー全員のランクもパーティーランクもSSランクなのだとか。
SSランクなんて、焔の鳥が現れるまではこの世界にたった2人(うち1人生死不明)しか居なかったらしいんだけど、実力をしめして一気にSSランクに登り詰めたそうよ。
元々有名なパーティーだったらしいんだけど、深淵の森に出入りするようになってから腕が上がったんだって。
噂では、深淵の森の精霊様に気に入られて修行をつけてもらったからだとか。
そんな精霊いたかしら? と首を捻るけど全然心当たりかないわ。
お兄さんは、そんな“焔の鳥”に憧れてこの森に入って死にかけてたらしいの。
「な~んだ。ほむらのとりって、強い鳥の事じゃなかったのね」
「なんだって何だよ。焔の鳥の中でも、特に格好良いのが魔法使いのアフィラート様なんだぜ!! すげぇ威力の攻撃魔法使って魔物を倒すんだ!!」
焔の鳥の事を話すお兄さんの目は、少年のようにキラキラしていたわ。
見た目はおじさんだけど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
皆様、覚えていますでしょうか? “焔の鳥”!! 雅さんがお金を貯める為に深淵の森で案内役のバイト(?)をした際案内したあの冒険者パーティーです!!
彼らが10年後、伝説の冒険者になりましたよ~!!
焔の鳥 :
今やSSランクの伝説のパーティー。10年前狩りを解禁された深淵の森に、実験的に送り込まれたおっさんばかりのパーティー。雅に出会って魔法の使い方を教えてもらった運が良いのか悪いのかわからないパーティー。
オーズ・ブランク :
48歳。人族と獣人の混血。生まれも育ちもルマンド王国。“焔の鳥”のリーダーで白熊マッチョ系スイーツ男子で純情乙女なイケオジ。
ヒューズ・パーソン :
48歳の人族。オーズとは謂幼馴染。“焔の鳥”では後衛M字ハゲのおっさん。
アフィラート・ノーズ :
138歳の魔族。黒髪無精髭の目付きが悪いおっさん。
後衛。解体と料理得意とする。雅の魔法の教え子。
ベンジャミン・ベック :
29歳。竜人と人族の混血で竜人の血の方が強い。微妙に老けている。
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