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番外編

それぞれの思惑

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“調味料の”視点


「そ、それで、オレ達が“魔法の”の世界に行く方法って…」

“動物の”の突拍子もない話に、恐る恐る聞き返したのは正直、“魔法の”の子供よりも何よりも、“魔法の”が番った奴の方が気になったからだ。

ずっとずっと、それこそ“魔法の”が番った奴よりもずーっと昔から、オレと“魔法の”は酒を飲み交わす仲だったし、同じ創造主だ。オレの方が“魔法の”の事はよく知ってる。

だから、もし“魔法の”の世界に転生でなく行けるなら、“魔法の”のつがいとやらに会って勝負を申し込んでやる!!



『まず、僕達が創った“人間の器”を“魔法の”の世界に持っていくんだ』

はあぁぁぁ!!!?

「何言ってんだ!? 魂が世界を跨げば、世界から拒否される!! 消滅しちまうんだぞ!!」

馬鹿な事を言う“動物の”の話に、さっきまでの勝負する気持ちは消え失せ、コイツを止める事で頭がいっぱいになった。

『誰が魂を送り込むって言った? 僕は“人間の器”って言ったよね』
「“器”でも同じ事だろ!?」
『僕達創造主の結界で守っているなら消滅する事はないさ。何しろ僕達は“創造主”。世界よりも力を持っているからね』

“動物の”はそう言って、何か企んでいるような笑みを浮かべると、『せいぜい“魔法の”の好みそうな“器”を創るんだね』と嵐のように去っていった。
あまりの事だったので、暫く呆然と去っていった方角を見つめていたのは仕方ない事だろう。


「……あ。おい!! “魔法の”の好みってどんなのだっけ!?」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



雅視点


「━━…へっっくち!!」

青々とした緑の広がる森の中、響いたくしゃみにヴェリウスが驚き、駆け足でやって来る。

『ミヤビ様、体調を崩されたのですか!?』

心配そうに足元をぐるぐる周り、見上げてくるその顔が、相変わらず可愛らしい。

「違うよ。くしゃみが出ただけ。誰か噂でもしてんのかなぁ?」
『ウワサ、ですか?』
「うん。日本では、噂されるとくしゃみが出るって言われててね…と、ヴェリウス。そこの薬草も摘んでくれるかな」
『あ、はい!!』

最近庭の片隅に創った薬草園で育った薬草を、ヴェリウスと共に摘んでいる最中である。

この薬草園で育てているのは、アロエやヨモギに似たもので、火傷やら傷やらの外傷に効くものから、腹痛などの内側に効くものまで様々だ。

勿論売るわけではない。完全なる趣味での栽培(勝手に育つ)だ。

『ところでミヤビ様、この摘んだ薬草はどうするのですか?』
「そりゃあ軟膏や錠剤にするんだよ」

へへっと笑えば、ヴェリウスは尻尾をたらし、困った顔をしてじっと見てくる。

「え、何? どうしたの?」
『……ミヤビ様が創られた離れの倉庫には、現在大量の化粧品や薬が転がっています』

確かに10年以上趣味で創り続けているからか、もう何が何処にあるのかって位、倉庫はぐちゃぐちゃだ。
亜空間に繋がっているからいくらでも入るし、まぁいいかと思ってついつい創っちゃうんだよね。

『いくら容量に制限はないとはいえ、10年以上溜めておりますので、そろそろ整理されてみてはいかがでしょうか』

ヴェリウスのこの言葉に発起され、10数年ぶりに倉庫から大量の薬や化粧品類を珍獣村の広場に並べる事となった。

勿論願えば整理整頓も完璧に、広場へ一瞬で並べられるわけだが、10数年で創った薬類の数は凄まじく、広々とした広場はあっという間に埋まってしまったのだ。

「おおっなんと壮観な!!」
「これが全て神王様の手づから創られたもの…素晴らしいッ」
「これ一つ一つが神級の宝ですよね…」

そんな事をしていれば、珍獣達が集まってくるのは当たり前である。

『これは……処分するにも困るものをよくもまぁこれだけ創られて…』

ヴェリウスは呆れたようにこの光景を見て呟く。

「うーん…やっぱり売っちゃおうか」
『なりません!! このようなものを売ってしまえば、世界は大混乱に陥ります!!』

怒られた。

「じゃあどうする? 私としては、折角創ったモノだし破棄するのは嫌だなぁ」
『破棄などとんでもありません!!』

ヴェリウスは瞳をカッと見開いて叫ぶと、う~ん…と悩み出す。

「では、浮島で売るというのはどうでしょうか」

ニコニコ顔でそう提案したのは、珍獣族(※そんな種族はありません)の長老だった。

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