異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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番外編

じい様と孫に迫る不穏な影!?

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ディーク視点


駆け寄るオレに、ルーベンスじい様は無表情のまま頭を撫でて、お菓子とお茶を用意してくれたんだ。

苦い顔をした父さんは、「いつでもパパの所に戻ってきていいからな!」と言いながら部屋から出ていったんだけど、ルーベンスじい様は気にせず淡々とお茶を注いでいた。


王都で一番人気のあるお菓子だと出してくれたのは、プチシューが色んな色のチョコレートでコーティングされた、いかにもセレブのお嬢様が好みそうなものだった。

この間トモコがやっていた、異世界ものの乙女ゲームに出てきた、お茶会のお菓子みたい…


なんだっけ。アフタヌーンティーとかいってたな。
「…それで、今日はどうしたのかね」じい様にそう問われたので本題を思い出し、亜空間に仕舞っておいた“ブタ”とウチのアロエを取り出した。

「あのさ、この間“聖雷の森”に行ってきたんだけど…」
「“聖雷の森”に? あそこは確か第3師団ちょ…ンンッ いや、神の加護で守られている聖域だが」
「うん。そこにね、母さんが“ブタ”狩りに行くって言い出して、無理矢理連れていかれたんだよね…」

思い出すだけで嫌になるあの泉までの道のり…。
目が母さんみたいに死んでいたのだろうか、ルーベンスじい様は憐れむような瞳でオレを見て、また頭を撫でてくれる。

「ミヤビ殿の思いつきは健在のようだな」

「母さんだしね」なんて返しながら、本題に入る。

「それでね、この“ブタ”を見てほしいんだけど」

こっちが“聖雷の森”のブタで、こっちがウチのアロエね。と机の上に置き、じい様を見る。

「…ふむ。全く同じものに見えるが?」
「だよね。聖域とウチの庭に同じものがあるとかおかしくない? そもそも“ブタ”は幻って言われる位貴重なものらしいし、“聖雷の森”にしか生えないって言われてるんだよ?」

疑問に思っていた事をルーベンスじい様に早口で喋ると、「成る程…見た目は似ているかもしれないが、性能が違うのではないのかね」なんて言われるものだから、あっと声が出てしまった。

そうか。確かに見た目はよく似ていても、全く違う植物なんてよくある。もうちょっと考えればよかった…。

恥ずかしくなって、ルーベンスじい様にアロエとブタを手渡すと、「くれるのかね?」と言って困ったように微笑むので、もういらないから! と押し付けたのだ。

「“ブタ”は確か、ギルドで売ると高額で買い取ってくれるはずだが良いのかね?」
「いいよ。どうせウチからほとんど出ないし、欲しいものは誕生日に買ってもらえるから」
「ふむ…ならばお礼に、今度好きな所へ連れていってあげよう」

じい様の提案に、本当!? と身を乗り出した。
確かにオレは出不精だし、外へ出たいとはあまり思わないけど、ルーベンスじい様と一緒ならロビンみたいな騒ぎにはならないだろう。きっとオレが好む場所に連れていってくれるはずだ。
大体、オレが出不精になったのは、ショッピングやピクニックだと父さんに騙されて外に連れ出され、結局剣や体術の稽古だった事が何度もあったからなんだから。
実際この間の“聖雷の森”もそうだったしね。

「ああ。楽しみにしていると良い」
「うん!  ありがとうっ ルーベンスじい様!!」

じい様と出掛ける約束をしたオレは、一日中ずーっと、どこに連れていってくれるんだろうって、ワクワクしてて、父さんが涙目になっていた事なんて全く気づかなかったんだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



“動物の”創造主視点


『━━…そんなにショックなの? もう10年だよ。君が引きこもってから』

“調味料の”の空間に、久々にお見舞い(?)に行くと、もう10年経つというのにこのバカは未だに布団にくるまってウジウジしていた。面白すぎるんだけど。

『君さ、“魔法の”の産んだ子供に興味ないの?』

創造主が子供産んだんだよ? 創ったんじゃなくて産んだんだよ? 興味ないなんて嘘だよね? バカだよね?

布団を頭からかぶって震えている“調味料の”に、ワンブレスで言えば、“調味料の”は子供や“魔法の”という単語に過剰に反応して飛び上がるんだ。バカだねぇと、口の端が上がるのを止められない。

『ねぇ、“魔法の”の子供を見に行かない?』
「!? い、行けるわけねぇだろ!?」

ボクの一言に飛び起きた“調味料の”は、表情の読めない…ていうか、顔がない調味料の蓋をこっちに近づけた。

「オレ達創造主は、他の創造主の世界には降り立つ事はできねぇんだぞ!! それともお前、“魔法の”みたいにする気かよ!?」
『そんな事わかってるし、なんてするわけないだろ』
「じゃあ…っ」

冗談だったのか? と安堵したようにまた布団を被る“調味料の”に、ニヤリと笑う。“調味料の”から見れば、ボクは魂の状態だからわからないだろうけどね。

『あるんだよ』
「は?」
『ボク達が他の創造主の世界へ降りる方法が、以外にね』




そう、ボクは見つけたのさ。その方法を。


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