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番外編
ロビン10歳。勘違いする。
しおりを挟むロビン視点
“押し売り”の人達がどんどん増えていくの。
わたしの周りは剣や弓、槍なんかを持っているおじさん達で壁が作られてて身動きが取れないわ。
そんなに沢山買えないの!! そう叫んでも武器を下ろしてくれないから、財布を出してトモコにもらったコインを掴んだの。
そしたらおじさん達が騒ぎ出したから、
「わたし、これだけしかお金ないの!!」
とコインを高々と掲げてやったわ!!
それを見たおじさん達は、怒ったのか自分達の持っていた武器を振り上げて、突然斬りかかってきたの。
お金を持ってないって分かったから怒っているの? でもこの武器は買いたいって思ってるのよ。
なのにどうして大勢で攻撃してくるの?
もしかして、お金がないとここにある武器を触っちゃダメだったの?
浮島とは全然違う対応に、わたし、なんだかとっても怖くなったわ。
「…ぅ、パパ…ママぁ……」
おじさん達の目も、何か言ってる声も、全部怖くて。
わたしはパパとママの所に帰りたくなったの。
「ッ…ウチの子に、何してんだゴラァァァァ!!!!」
ゴンッゴンッゴンッ
突然斬りかかって来たおじさん達が、地面に伏したものだからビックリしちゃった!!
皆がカエルみたいに倒れてて、頭に大きなたんこぶが出来てるのよ。
「ロビン!!」
呆然とその光景を見ていたら、ママの声が聞こえて顔を上げたの!!
「ママぁ!!」
ママが駆け寄ってきてわたしを抱き締めてくれたから、ぽろぽろって涙が出ちゃったわ。
「あービックリした。ロビンに呼ばれたと思って転移したら騎士達に攻撃されてるんだもん」
『ロビン様、お怪我はありませんか?』
ママがわたしを抱き締めたまま、周りをキョロキョロと見渡していると、その横からひょっこりヴェリウスが顔を出したのよ!
「ヴェリウス!! うんっ大丈夫!! でも、“押し売り”って怖いのね」
「『“押し売り”??』」
涙を拭ってヴェリウスのもふもふに抱きつけば、ママとヴェリウスが声を揃えて首を傾げていたから、可笑しくなってふふふって笑っちゃった。
「ロビン!! 大丈夫か!?」
「パパ!!」
ヴェリウスの首に抱きついていたら、パパに抱っこされて目線が高くなったの。
「怪我は…ねぇようだな」
パパはほっとしたようにわたしを抱き締めて頬擦りしたわ。
「パパ! ジョリジョリチクチクして痛い!!」
パパのお髭が痛くてまた泣いちゃったものだから、パパってば倒れてるおじさん達に怒って踏みつけようとするから、ママに怒られていたのよ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
「━━…それにしても、何でコイツらが俺の娘に斬りかかってたんだ?」
私達に見つからないようにか、今まで気配を消していたロビンのそれが急に感じられるようになり、呼ばれている気がして急いで転移した先。
見つけたのは、娘が騎士団に攻撃されている姿だった。
ロードがそれを拳骨(かなり手加減している)で制し、ロビンに慌てて駆け寄ると“押し売り”が怖かったと言い出す始末。
よく分からないが無事で良かったとほっとしたのもつかの間、ロードが倒れている騎士達を眺めながら唸っていると、そこへカルロさんがやって来たのだ。
「ロード!! 魔物は倒したのかい!?」
魔族なので10年前と若さは変わらないが、顔つきはきりりとしてあのどこか軽薄そうな雰囲気は薄まり、長髪になった為か色気が増したカルロさんは、ロードに魔物がどうとか声を掛けている。
「あ゛? 魔物なんかいやしねぇよ。騒がしいからここに来てみりゃ、あろうことかコイツら…俺の娘に斬りかかってやがった!」
憤慨するロードに「はぁ?」と困惑した声を出すカルロさんは、こちらに気付いたのか目がパチリとあった。
「ミヤビ殿。ご無沙汰しております」
「あ、どうも。いつも主人がお世話になってます」
ペコリとお互い頭を下げあうと、ロードが「主人…」と呟きデレッとした顔をするのでスルーした。
「おや、もしかしてロビンちゃんかな?」
「え?」
「覚えてないかい? 君のお父上の友人のカルロおじさんだよ」
相変わらず女子供に優しく紳士なカルロさんは、ロビンの前で膝をつくと、アイドルも真っ青な微笑みでもって問いかけた。しかしロビンは覚えていないのか、首を傾げている。
無理もない。カルロさんにロビンを会わせたのは7年前だ。娘はまだ3歳だった。
「ごめんなさい。覚えてないの…」
「気にしないで。君はまだ小さかったから無理もない。しかし、大きくなったね」
もう立派なレディだ。と百戦錬磨のスマイルが炸裂する。
さすがカルロさん…子供にも容赦がない。
「カルロお兄さん、物語に出てくる王子様みたい」
我が娘の心を見事に掴んだらしい。頬をピンクに染めた娘を、ロードはまるで尺八の奏者のような顔をして見つめていた。
◇◇◇
「成る程、ロビンちゃんを魔物と勘違いした…と」
「は、ハイ!! 申し訳ありません!! まさかロード第3師団長のご息女だとは思いもせず!!」
「幼い見た目でとんでもない剣の使い手だったもので…ッ」
カルロさんが目覚めた騎士達に聞き取り調査をすると、どうやらロビンがやらかしていた事が発覚した。
子供にもかかわらず騎士を倒したとかで、さらに今日は貴族の子供が来るという申請もなく、人間ではありえない非常識な力を見せてしまったせいで人型の魔物だろうという結論に達したらしい。
「しかしあのとんでもない強さ…さすが第3師団長のお子様だ!!」
「確か奥様は“精霊様”であったか!!」
「精霊と師団長…そりゃ最強の子供が生まれるわけだ!!」
聞き取り調査が終わった騎士達は、理不尽なロードの暴力にも負けず笑い合っている。なんというポジティブさだ。
「ねぇママ、ママは“精霊様”なの??」
マズイ!! 子供達には私が神王だって言ってないんだよ!!
神々も珍獣も友達だとは言ってるけどさ!!
だって神王の子供だって蝶よ花よと育てて、我が儘放題みたいになったら困るでしょ?
「ん~? 私は普通の人間だねぇ。なんだか勘違いされてるみたい」
「そうだよね。ママが“精霊様”だなんてありえないものね。あ、もしかしてパパがいつも「精霊よりも神よりも、誰よりも、ミヤビの方が綺麗だ」って言ってるから勘違いされたのかなぁ?」
「あはは。そうかもね」
なんか複雑な気持ちだが、何とか誤魔化せたな。
「あーあ…せっかく“街”でお買い物出来ると思ったのに…」
元気なく呟いた娘に首を傾げる。
「ん? ロビンは王都で買い物がしたかったの?」
「そうだよ!! だってパパもママも全然連れて行ってくれないし…トモコが、“街”には可愛い“鉄アレイ”も、色んな形の“武器”も売ってるって言ってたから……」
うん。ウチの娘、とんでもない事口走ってるぞ。
「さっきも可愛い武器見つけたから買おうと思って…そしたらおじさん達に“押し売り”されたの」
「うん? もしかしてロビン、ここが“街”で、あのおじさん達は店員さんだと思ってるのかな?」
問えばロビンは、違うの? と私を見てくるので教えてあげたのだ。
「えーーーー!!!!? ここ、“お城の中”だったのォォ!!?」
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