異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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番外編

双子の力

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「「ふぎゃあぁぁぁぁ」」

小さな恐竜のように、シンクロ泣きしている我が家の双子。
1人が機嫌を損ねると、もう1人もつられてしまうのは双子ならではなのだろうか。

その泣き声に共鳴するように、双子の居る部屋の中ではパチッパチッと小さな火花が散っている。


「どうした~?」

ベビーベッドに寝かされている双子を、デレデレ顔のロードが抱き上げあやせば、双子はふぎゃ、ふぎゃと暫く泣いてからまん丸の瞳をロードに向けるのだ。

「飯か? オムツか?」と、火花を気にする様子もなく口にしながら双子を抱えてこちらへ連れてきたロードは、やはりデレデレ顔のまま「ミヤビぃ」と私の名を呼んだ。

ロード似の女の子の方を渡されて、腕の中に抱き込むと漸く泣き止んだのでホッとする。

「オムツも交換したばかりだし、ミルクもあげたばかりだからなぁ~…もしかしたら、ロードが二人をずっと観察してるから嫌になったんじゃない?」

久々のお休みの今日、ロードはお昼寝していた双子をずーっと眺め、緩みきった顔をしているのだ。現在進行形で。

「え!? パパの事嫌いになったのか!?」

やっと泣き止んだ双子に、慌てたように顔を近づけるロード。案の定また泣き出してしまった子供達に、やっぱり…と嘆息してから注意する。

「もう。ただでさえその無精髭を嫌がられてるんだから、顔を近付けないの」

ロードはたまに、我が子のあまりの可愛さに我慢できなくなり、無精髭を生やしたまま赤ちゃんの柔肌に頬擦りするのだ。
双子からしたら、髭はチクチクするのだろう。結果、頬擦りの度に物凄い勢いで泣き出す図がしばしば見受けられるようになった。

「お前達のママは俺の髭が大好きだぞ~」

と訳の分からない事を言いながら双子に頬擦りをし、さらに泣かせているロードは懲りない男である。

「ロード。赤ちゃんの内は力のコントロールが出来ないんだから、わざと泣かせるのは止めてよ? 感情の起伏が激しい時に力が暴走する可能性もあるってヴェリウスに言われたでしょ。その証拠に、この子達が泣くと小さな火花が散るんだから」
「大丈夫だろ。ここはミヤビの結界も張ってあるし、“外”に影響は出ねぇよ」

私似の男の子を抱っこしたまま隣にドカリと座って、肩を抱き寄せてくるロードを胡乱な目で見る。

「そんな事言うけど、お義父さんの所に連れて行った時に暴走したらどうするの。深淵の森ここで小さい火花なら、“外”だと雷が降ってくるよ!?」
「ミヤビが居るのにそんな事起きねぇよ。俺だってコイツらの力を抑える位は出来るしよぉ」

私の神域である深淵の森からはまだ出していない為、泣いたら火花程度で済んでいるが、神域の外で泣き出すとどうなるか分からないのだ。雷の雨で、最悪国単位が消滅するかもしれない。
なのに楽観的なロードはそう言って私にキスをすると、私にまで頬擦りしてきたのだ。
見た目より柔らかい髭だが、やはり無精髭。チクチクする。

「ほら見てみろ。ママは泣かないし、パパの髭が好きだって言ってるぞ~。いや、パパの髭だけでなく全部好きだって言ってるな」

そんな事は一言も言っていない。

ロードは幸せそうに双子を見ながら、妄言を吐いてあやしている。

しかし、何故“パパママ” 呼びなのだろう。正直ロードの口からパパママと言われると気持ち悪さしかない。
たまに赤ちゃん言葉で双子と会話? しているのも気持ち悪い。そんな姿をトモコとヴェリウスが見て、「気持ち悪っ!!」と口走っていたのは記憶に新しいのだ。



「やっぱりこの子達は“鬼神”の力を継いだのかな」

漸く落ち着いて、私達の腕の中で眠りについた双子を見ながら、未だ定かではない事を呟く。

「まず間違いなく“鬼神”の能力は継いでんな。もしかしたら、他にも特殊な力があるかもしれねぇが、んなに気にしなくても大丈夫だろ」
「…分裂して出てきた時から、この子達の力に関しては不安しかないよ…」
「人間として育てる訳じゃねぇし、俺もミヤビもそばに居るからな」

心配すんなと頭を撫でてくるロードはしかし、後3ヶ月したらお義父さんの所へ双子を連れていく事を計画を立てていたのだ。

後1年は神域から連れ出すべきではなかったと後悔するのは、その3ヶ月後である事は、知るよしもなかったのである。
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