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第五章
騎士様、ヤンキーと遭遇する
しおりを挟むあの後ツアー客の3人と別れ、ロードに連れられてバーに戻った事でリンとも別れて、私は退屈な時間を過ごしていた。
「あーあ、トリミーさんはいいなぁ。旦那さんとエルフ街ぶらぶらして、その後はロマンチックに夜のデートだもんなぁ。コリーちゃんの所も、家族でテーマパークの浮島だし、ウチとは大違いだな~」
飲んだくれの旦那を見ながら呟けば、嬉しそうに世界中のお酒を飲んでいたロードが「あ゛ぁ゛?」と睨んでくる。
「私のつがいは一人楽しそうに飲んだくれて、妻を放置だもんなぁ。別にいいよ。飲みたきゃ一人で飲んでくれればさぁ。でも私は解放してほしいよね。遊びに行きたいよね」
「んだよ。バーでデートもたまにゃ良いだろ? 大体浮島なんて何度も来て遊んでんだから、バーで大人のデートとしゃれこもうや」
「一日遊んだ後のバーなら良いけどね!! 何で午前中からずーーーっとお酒に付き合わないといけないのっ」
お昼ご飯も食べれないでしょ!! と文句を垂れると、私の前に出ていたおつまみを見て眉尻を下げ、
「そうだよな。しっかり栄養摂らねぇといけねぇ時期だしな!!」
悪かったと頭を撫でてくるので、急にどうしたのかと胡乱な目を向けたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リン視点
酔っ払った師団長と天然ミヤビの恐ろしい計画を聞いた後、精神的にダメージを負った俺は、バスにも乗らずふらふらとエルフ街と呼ばれる規格外の街を歩いていた。
あのとんでもない夫婦から負ったダメージは、常識はずれのこの街でさらに蓄積され憔悴しきっていたのだが、これも仕事だと耐えている状態だったのだ。
そんな時、大通りを一本入った裏路地で出会った男…。
「何見てんだコラァ」
ガラの悪い男は、何故か路地裏の家の階段に屈んで(※ヤンキー座りしています)俺を睨み付けてきている。
何でそんな所で屈んでるんだとは思ったが、あまりにもガラが悪いので職質をかけたのだ。まぁ職業病みたいなもんだろうか。
「こんな所で何してる」
「アァ? 自分家でなにしてようがテメェにゃ関係ねぇだろうが」
自分の家? という事はこの男もエルフなのか? …確かに綺麗な顔はしているし耳も尖っているけど…。
「んだよ。文句あんのか」
鋭い目付きに、噂に聞くエルフとは全然違うとショックを受ける。
エルフってのは気が弱くて儚い人間だってじいちゃんから聞いてたのに…。
「んだコラァ」
男は立ち上がって、俺よりも背が高いようなのに何故か下から覗くように睨んでくる。それが不可解でならない。
「…エルフ族っていうのは、驚かすだけで気絶するような繊細な一族だって聞いてたんだが…」
「ハッ何時代の話だそれ」
つい口に出してしまった言葉を鼻で笑われ、「今時んなエルフいねぇよ」と失笑された。
「エルフ族ってなぁその容姿で狩られ、奴隷にされてきた一族だぜ。そんな羽虫みてぇな精神じゃ生き残っていけねぇんだよ」
成る程。だからこんな風にガラが悪くなったのか…。
「アル君見つけました~!!」
そんな話をしていたら、突然場に合わない可愛らしい声が聞こえて驚き周りを見る。が、他の人間の姿はなく戸惑う。
しかし目の前の男は端正な顔をくずし、「ぅげっお前のせいで見つかったじゃねぇか!!」と俺に怒鳴ってきた。
「何の話だよ?」
「力のコントロールの修行中だったんだよ!! くっそッ」
よく分からないが、何か邪魔してしまったらしい。
「コントロールがヘタクソなのですぐ見つけられますね~」
タッチと言いながら男の腕に触れたのは子供の手で、よく見ると小さな少女がいつの間にかそばにいたのだ。
いつの間に近くに来ていたのかとゾッとする。
「あら? そちらはどなたで…あ、主様のご友人のリンさんですね~」
「あ、確かミヤビの…」
ミヤビの護衛とか言って、よくそばにいる子供だと思い出す。
「ショコラです~」
「あ、ああ…」
改めて自己紹介されて戸惑っていると、男が
「トモコはまだ見つかってねぇんだろ!? トモコに負けたのかよ!!」
と唸り出したので唖然と見てしまう。
何なんだよ一体…。
「トモコ様はとっくに見つけましたよ~」
「ちょっとショコたん!! それ言わない約束!!」
突然姿を現したトモコに吃驚して叫びそうになるが、何とか耐えきり顔を取り繕った。
「よし!! トモコに負けたら終わりだかんなっ エルフなめんな!!」
「アル君ちょっと失礼じゃない!? 同僚とは言っても一応私のが先輩だからね~?」
「お前のどこが先輩だよ。お前生まれて3年なんだろ。幼児じゃねぇか。オレのが年上なんだから敬え」
「生まれて3年って言っても前世じゃ30超えてました~~トモコなめんな!!」
俺の前で言い合いしているトモコと男は、どうやら知り合いらしい。
「また始まっちゃいました~。ショコラは主様の元へ行きたいのに、いつまでこの2人に付き合わないといけないのでしょうか~」
「俺は何で巻き込まれてるんだろうか…」
「リンさんは巻き込まれ体質ですから仕方ありません」
不満を呟いている少女に、はっきり巻き込まれ体質だと宣言された…薄々は気付いてたけど、他人にこんなにはっきり言われるとは思わなかったよ。
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