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第五章

寛大な心で

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『話は終わったか。ならばこの新鮮な肉を食すぞ! なにしろミヤビ様は今栄養を沢山摂らねばならんからな!!』

作ったばかりのイヤーカフをシャラリと揺らし、庭にもの○け姫に出てくるおっ○こ主様のようなデカさの猪っぽい動物を転がして尻尾を振ってるヴェリウス。

森の主(らしき動物)を生で食せとすすめてくる彼女に顔が引きつった。

ちなみに、「おっと○主様ァァァ!!」と叫んだら、ヴェリウスにもロードにも首を傾げられたので恥ずかしくなって無かった事にした。

「あのなぁ…妊婦に生肉は厳禁だ。栄養管理は俺がやるからヴェリウスは遠くで見守っててくれや」

血抜きしねぇといけねぇからコイツの調理は後日だな。と言いながら軽々とおっと○主様を運ぶロードに軽く引く。
お前は孫悟○か。

『むむ…生肉程美味いものはないと言うのに…』

残念そうなヴェリウスだったがご機嫌なのは変わらずで、尻尾をパタパタさせたまま私のそばに来てお腹に鼻先をくっつけてくるのだ。

しかし、

「おい、俺のミヤビにくっつくんじゃねぇ」

と戻ってきたロードに追い払われる。
素直に離れるが、ロードがご飯を作りに台所へ行けばまた近づいてくる。それを台所から見つけたロードがまた牽制し、また離れてを繰り返すので、何をしているのかとヴェリウスに問えば、

『人族は…今は鬼神ですが、アレらの本能はつがいが身籠ると蜜月時のように囲い込もうとするのです。
これは獣も似たようなものですが、子供を産む前後が一番無防備であり、守らねばならぬ時期だからです。
なので例え親であってもつがいに近づく者には容赦出来なくなるのです』

だから穏やかな口調でも少しピリピリしてるのかと納得する。

『私は人型ではないのでまだマシですが、これが人型ならば例え女性であっても殺されるやもしれません』

子供は、まぁ私と同じような反応で追い払われるでしょうか。と続けるヴェリウスに、やっぱり人族って怖いと改めて思う。

「おい、テメェいい加減にしろよ」

ロードの声が少しきつくなった事で、舌打ちしたヴェリウスは、『…心配ですが、暫くは天空神殿と私の神域に居りますので、何かあればすぐにご連絡をお願いします』と言い残して転移してしまったのだ。

「晩御飯位食べて行けばいいのに…」
「ふざけんな。身籠ったつがいを俺以外のそばに近付けるなんてとんでもねぇ事だぞ。オメェは俺の子を孕んだ事を自覚しろ」

いつもより多めのおかずをダイニングテーブルに並べてそう注意してくるロードに、さっきまでの感動したようなしおらしい態度は微塵も感じない。

「囲い込みって、目に見えて妊娠が分かってからとかじゃないの?」
「あ゛? んなもん身籠ったって分かったらすぐに決まってんだろ」

どうやら夫側が自覚した瞬間から囲い込みは始まるらしいと知る。

「そうなんだ…何か急だね。
ロードは仕事もあるし、帰って来れない日も多いでしょ? 私は王宮じゃなくて深淵の森ここに居た方がいいの?」

最近はロードの執務室の隣にある寝室に寝泊まりしてたけど。と言えば、

「仕事はあるがオメェが身籠ったからな。泊まり込みでってのは無しだな。確かに深淵の森が一番安全ではあるから…ミヤビはここで大人しくしていてもらう」

俺と会うまでの2年はここで誰にも会わずに暮らしてたんだから簡単だろ。と言われ、何も言い返せなかった。

「あ、でも急に王宮に来なくなったら心配されるから「それなら俺が説明しとくからオメェは心配いらねぇよ。服屋もトモコに任せりゃ大丈夫だ」」

言葉を被せてきたロードの目は、驚くほど真剣で、これは出歩いたら本気でヤバイだろうなと思わせるものであった。

「言っとくが、俺ぁまだマシな方だぞ」
「え? 何が」
「オメェは神王だから守りも固ぇ。だから許せる範囲も広くなるが、他の人族ならつがいが身籠ったら家からは絶対ぇ出さねぇからな」
「ん? それまさに今の状況でしょ?」
「全然違ぇ。俺ぁまでなら許してやるって言ってんだ」

ほんのちょっとの差だったァァ!!
ちっさ!! 守りが固いって言いながら差が分からない程ちっさ!!

「オメェ俺の寛大さが分かってねぇだろ」
「全く分からないし全っ然寛大じゃないから」
「バカ!! これすげぇ事だからな!? でも庭だけだぞっ森には入るなよ!? 魔獣の村もダメだからな!!」
「どこが寛大!? 全くもって寛大のかの字もないわ!!」


こうして、私はこの世界に来た時と同じように引きこもる事となったのだ。


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ロード視点


つがいが身籠ったと発覚してから一週間、ミヤビは大人しく深淵の森で過ごしているようだ。

世界会議も無事に終わり、ルマンド王国に滞在していた最後の一組を見送ったのが昨日であった。

落ち着いた所で、神々にはヴェリウスが、ルーテル宰相と陛下、ついでにカルロ、レンメイ、リンにもミヤビが身籠った事を報告した。
カルロ達はミヤビが精霊だと思い込んでいるから大した騒ぎにはならなかったが、ルーテル宰相はミヤビが神王だと知った時と同じ位驚いていた。

神王様の赤子は次期神王として生まれるのか、それとも鬼神として生まれるのかと聞かれ、神王はミヤビ一人だから鬼神だろうと答えたが、何せこればかりは史上初なわけだから俺にもどうなるか分からない。本当ならガキが出来るかどうかも定かではなかったのだ。

陛下は陛下で、ミヤビが神王なのか神なのか分からなくなっているようだったが、混乱しながらもおめでとうと祝ってくれた。その後の「でも仕事はしてくれたら嬉しいんだけど…あぁっごめんなさい!!」という言葉さえなけりゃ良かったんだがな。

生まれてくるガキは男でも女でもいいが、ミヤビに似て欲しい。

最近はこんな事ばかり考えてニヤニヤしているが、レンメイからは気持ち悪いと罵られ、カルロからは苦笑いされて以来顔には出さないように気を付けている。


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次回、いよいよ創造主達が再登場!!
お楽しみに!!
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