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第五章

ヴェリウスの宣言

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「ーー…いや、何この状況」

ロードの膝の上に乗せられ(そこまではいつも通りだが)、見える景色は機密文書らしい書類の束。
背中はロード、正面は机に挟まれ動く事もままならない。

しかもさっきから頭髪や耳、うなじをすんすんと匂われるという変態行為付きだ。

「あ~良い匂いだなぁ。可愛いなぁ。食っちまいてぇ!!」
「ロードサン…止めてもらえマスカ」

この変態ゴリラから距離を取ろうにも、腰に腕が回されてガッチリ固定されている為不可能である。

『つがいと離れ過ぎていた事による反動ですね』

冷静にそう言うのはヴェリウスで、呆れ顔をこちらに向けており助ける気はなさそうだ。

「全然帰って来なかったロードが、いきなり帰って来たと思ったら王宮に連れ去られてこの状況…戸惑いしかない」
『諦めて下さい。世界会議が終わるまではこれが続くでしょう』
「世界会議って一週間後に始まるやつだよね!? 一週間もこのままなの!?」
『正確には10日間です。ミヤビ様』
「10日!?」

10日も理解不能な書類を見続け、匂いを嗅がれ、執務室に入ってきたロードの部下にぎょっとされるという羞恥に耐えねばならんのか!?

「嫌だーー! 何が嫌ってロードの部下のぎょっとした後のあの憐れんだような、それでいて羨ましそうな目が恥ずかしいんだよ!!」
『……』

憐れんだような目で無言を返されがっくり項垂れる。

「早く来い!! 世界会議!!」

全く楽しみでもないのに、私にそう叫ばせる世界会議はきっちり一週間後にやって来たのだ。


◇◇◇


前々日から当日にかけて次々と豪奢な馬車が王宮の前に停車し、次々とこれまた豪華な装飾品を身に付けた恰幅の良い紳士や、ドレスを着たご婦人方が降りてくる。
ザ・王様!! という人もいれば、わりとシンプルな装いの人も居て、見ている方からすれば世界中の服が見られて楽しかったりする。

ちなみに私はロードの執務室に閉じ込められており、ロードは騎士として仕事をしている為ここには居ない。
それなら深淵の森に帰ってもいいだろうに、それはダメらしい。理不尽だ。

『ミヤビ様、会議が始まる時間まではお側に居りますのでご機嫌をお直し下さい』

クゥーンと足元にすり寄ってくるヴェリウスを抱き締める。

「この一週間家にお風呂入る程度しか帰ってないよ…寝る時もこの執務室に隣接してる仮眠室でだし」
『ロードはそれだけミヤビ様を離したくはないのでしょう。蜜月休暇を満足にもらえない場合、仕事場につがいを連れ込む者もいるようですが、それは雇い主の責任ですので連れ込んだ人族を非難する者はおりません。ご安心下さい』

つがいを連れ込んだ人族を非難する者はいなくても、つがいは迷惑だろう。

「…ヴェリウスは会議で教会の取り潰しについてを王様達に伝えるんだよね?」
『はい。しかしそれだけではありません。各国の教会でも背信者は居りますのでその者らの引き渡し、もしくは処罰と今後の対策等を言及していきます』

一切取り逃がす気はありません。と目を据わらせて言うものだから変な汗をかいた。
宜しく頼むね。と軽く頭を撫でて何とか話題を変え、お茶を飲みつつ会話をしているとあっという間に時間が経つ。
昼食を終えた後、ヴェリウスが会議に行ってしまってからが暇で、ロードの執務室のソファでゴロリ横になってボーッと過ごしていたのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ヴェリウス視点


私はミヤビ様との楽しい昼食をとった後、世界会議に参加する為移動した。

私が会議室に現れると、ルマンド国の者以外がざわめき、慌てて頭を垂れる。
ルマンド国王は人間達のいう上座という方へ私を案内し、そこに設置されていた他よりも大きな椅子…ソファへと座るよう案内したのだ。
悪くはないが、ミヤビ様の用意してくださった“人をダメにするエアソファ”というもののほうが、包み込むような座り心地で断然良い。そこで昼寝をするのが至極の一時であり、私のお気に入りの一つだ。


『さて、各国の王よ。私がここに顕現したのは神王様のご意志を伝える為である。心して聞くが良い』

頭を垂れる王達の前で宣言すれば、奴等は動揺し、室内にどよめきが起きたのである。
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