363 / 587
第五章
やっと終わったと思ったら
しおりを挟むこれで彼等の罰は決まったし、大司教は…力を失って燃え尽きている。もう喚く力もないのだろう。
瘴気で拘束されているが無くても自分で立つ力も残っていないと思われる。
「ロードや、もうよいじゃろう。こやつを解放してやっておくれ」
「あ゛?」
いつものロードの態度に場がざわつく。
ロードを知る者達(騎士達)は、
「やっちまったぁ!! 師団長いつものクセで神王様にすら慇懃無礼!!」
「ヤバイっすよ!! 師団長神々に殺される!!」
「神々より先に神王様の手で罰を受けるわ!!」
「神王様ァァ!! 師団長の命ばかりはお許し下さァァい!!」
「いや、それよりあの禍々しい瘴気、師団長の仕業なの!? あの人闇属性の魔法使えんの!?」
等と騒いでおり、国王は真っ青になってあばばば言っている。王都の民に至っては、まるで恐ろしいものでも見たような顔でロードを見ていた。
「…お前、この混乱どうする気じゃ」
「あー…悪ぃ」
ついやっちまったと頭をかくロードに胡乱な目を向ける。
「分かったって。ちゃんとすっからそんな目で見んな」
ちゃんとするって何だ。
上の神々からも何やってんだというような威圧がロードにかかり、すっかり毒気(怒気)を抜かれたロードは、いつもの調子に戻りその状況に嘆息すると、私の前に跪いたのだ。
「神王様、奴の拘束を解き次第騎士団に引き渡す事をお許し下さい」
なかなか様になっているロードの姿に、はぁ~っとうっとりとしたような吐息が人々の間から漏れたが、どう考えても男の声(吐息)であったそれに心が騒いだ(腐った意味合いで)。
「良かろう」
「感謝致します」
ロードはそう言うと部下達に目配せして瘴気を解き、茫然自失の大司教を部下達に捕らえさせたのだ。
さすが師団長。鮮やかな采配である。
「うむ。神々も落ち着いたようじゃし、わしもウチに帰るとするかのぅ」
この一言にまたもや騒ぎだす人々。
「神王様の家!?」
「神王様ってどちらにお住まいなのかしら?」
「そりゃ天から来たんだから天上に住まわれてるんだろ」
「神々は各々に神域があって地上に住まわれているんでしょう? もしかしたら神王様も…」
等と私の住む場所が気になるようだ。その辺は個人情報なので教える事はできませんけどね。
等と心の中で返事をしてさっき創った階段へ移動する。ロードのエスコート付きで。
この事で第3師団長は一体神王とどんな関係だと後々問題になるのだが、この時の私は教会問題が解決した事で安心しきっており、そんな事は考えも及ばなかったのである。
階段前まで行くと神々が迎えに来ていたので、エスコートがロードから神々に変わる。
ロードは納得出来ない顔をしていたが、ヴェリウスに牽制され渋々下がったのでそのまま神々を引き連れて階段に足をかけた。するとエスカレーターのように階段が動きだし、「ではの」と挨拶すると、人々は驚愕の顔を咄嗟に引き締めて頭を垂れたのだ。
『…二度と同じ過ちを繰り返すでないぞ』
そう言い残したヴェリウスに、人間達の顔が引きつっていたとかいないとか、後にトモコから聞いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あーー疲れたぁ~。もう何もしたくない」
雅の器に戻って深淵の家のソファで伸びていると、ヴェリウスが寄って来てクゥンと鳴いた。
「ヴェリウスどうしたの? もしかして爺の器の方が良いとか? でもあれバキバキで大変なのよ」
『そうではありません。どちらの姿でも神王様には変わりありませんから』
「ん~? ならどうしたの」
寝転んだままヴェリウスの首から背中にかけてを撫で、フワサラの毛並みを堪能していると、教会の事ですが…と躊躇いながらも話し出した。
『ミヤビ様が人間達に教会の取り潰しという処罰を伝えられましたが、未だ教会は存在しており、いつ取り潰されるのかと…』
あ、忘れてた。
王都の教会はロードの雷で破壊されたからそのイメージが強過ぎて、私の中ではもう教会は無いものだと変換されていたわ。
「そ、そうだね。世界中の教会を取り潰すし? 急に消してしまうとびっくりされるだろうから、皆に伝わるまでは~…とか思ってまして?」
目を泳がせ変な汗をかいた私に訝しげな目を向けたヴェリウスは、分かりましたと頷くと、
『では、世界中の人間に今回の事を周知させます』
と言ってどこかへ行ってしまったのだ。
22
お気に入りに追加
2,539
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!
美月一乃
恋愛
前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ!
でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら
偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!
瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。
「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」
と思いながら
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる