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第五章

囚われの神王様

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「ところで、精霊様はもうお目覚めですか?」

眠り薬を盛られたはずですが? と白ローブの少年が首を傾げる。

「あー…まぁ人間とは違うから?」
「…そうですか」

訝しげに見られたが、彼は一体ここへ何をしに戻って来たのだろうか。

「僕…私は、ただの監視員ですからお気になさらず」

えー気にするでしょ。ただでさえ監禁されているのに、少年とはいえ男の子と二人きりなんてロードにバレたら…この子が殺される。

少し離れた場所に座った少年は本…聖書なのだろうか、それを懐から取り出して読み始めた。どうやらもうお喋りする気はないようだ。

ロードが私の位置を調べていなければいいが…。あの人最近暇があれば私の居場所を調べてるんだよね。


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ロード視点

イアンの話が終わり益々深刻な表情になった宰相は、失神寸前の陛下に至急大司教を拘束しましょうと提案している。陛下は白目を剥き息も絶え絶えだ。
病気や怪我をしているわけでもない元気な人間が死にそうになっているのを初めて見た。

「ちょっと待って!! いや、待て! いくら証拠や証言があるとはいえ、大司教を…しかもあのコフトル大司教を拘束するのは無理がある!!」

人間同士のいざこざなら、確かに大司教の中でも最も権威のある者を拘束するのは難しいだろう。時間をかけて手を回していくしかないのが現状だ。しかし、今回は神王を冒涜した背信者の拘束なのだ。問題はないだろう。
宰相もそう考えたのか、はっきりと

「背信者の拘束です。教会側も納得するでしょう」

と返したのだ。
もし仮に、拒否するようであればルマンド王国は現教会を排除し新たな教会を作ると宣言なさって下さい。とまで口にしたのだから、これにはイアンも驚いていた。
だが、宰相の言葉は大袈裟ではない。この男が神々と最も深交のある人間なのだ。今一番危機感を持っているのだろう。

「陛下、宰相の言う通りにしろ。じゃねぇとこの国は…人類は滅びると思え」

ヒェェェ!! と情けなく叫ぶ陛下にそう言い残して執務室を出る。拳を握りしめて怒りを収めようとするが、司祭の…今は大司教になったらしい男の顔を思い出しイライラするのだ。

「ミヤビに手ぇ出しやがったらただじゃおかねぇっ」

頭に血が上り廊下の壁に穴を開けちまってから少し冷静になった。

ペンダントにしている結婚指輪に手をやり、心を落ち着かせようとミヤビの居る場所を調べる。
まだ天空神殿か深淵の森だろうと、俺の可愛いつがいの事を考えていると、近くに反応があったので眉間に皺が寄った。

「ここは……王都の、教会だと!?」


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ヴェリウス視点


神王様自らがお出になる前に終わらせねばと、神々に念話で事情を伝える。その際に神王様は穏便な解決を願われていると伝えていた時であった。

私の精霊から、ミヤビ様が王都の教会に捕らわれたとの情報が入ったのだ。

『どうやら穏便な解決など奴等は望んでおらぬようだ…』

自分でもこれまで出した事のないような低い声が出たと自覚している。
念話でもわかる程に皆が殺気だち、場所は何処だと確認してくるのだ。皆が神王様の所へ駆け付けようとしている。

恐らくルマンド王国の王都は…いや、国自体が消滅するだろう。そうだ、もう一度人間の居ない世界を創り直す方が良いのかもしれん。

そんな事を思いながら、私は神々に神王様の居わす場所を伝えたのだ。


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「さぁ、人族の神、そして神獣よ。早く来るが良い。貴様らの大切な精霊は我が手中に在るのだから。そして我の糧となるのだ!!」

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