異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第五章

雅の我が儘

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「あ~あ…まさかこの世界に大豆が無いなんて…しかもお米も原種米だなんて…あんなにふっくらツヤツヤの炊きたて白米と、お味噌汁と、焼き魚にお醤油、さらに納豆という定番のご飯を皆が食べられないなんてっ」

前神王は一体何を考えてこの世界を作ったんだ!!

「ほらほら、そんなに興奮するんじゃねぇよ。前神王も何も、神王はオメェ一人しか居ねぇんだから自分の魂に問い掛けるしか方法はねぇだろ」

仕事の合間に帰って来たロードに膝の上に乗っけられて頭を撫でられながらそんな事を言われるが、魂に問い掛けるって何だ。後頭を撫でるのを止めてほしい。首がゴキゴキいってるから。

「ロードは良いの!? 味噌も醤油も無い世の中なんて、人族にとってはつがいの居ない世界、魔族にとっては魔法の無い事と一緒なんだよ!?」
「勿論ミヤビつがいが居ねぇ世界なんて考えられねぇが、そうは言っても大豆が無ぇんだから仕方ねぇだろ。深淵の森ここでは食えるんだから良いじゃねぇか」

さすがのロードも呆れているのかこの言い様である。

「だったらロードは、深淵の森でしか私に会えなくなるとしたらどうなの!? 嫌じゃないの!?」

良く考えれば深淵の森だけであっても会える事に変わりはないので全く問題ないのだが、この時の私は興奮していた為自分でも何を言っているのか分からなくなっていたのだ。
ロードはそんな話に困ったような顔をして、ここでしか会えないなら全て捨ててここでずっと暮らすけどよぉと言っていたが、そういう事ではない。

「美味しいご飯を皆に食べてもらいたいの! あんな食材を冒涜するような調理を続けるなんて許せない!! 私は、異世界ならではの美味しいご飯を食べ歩きしたいんだーー!!」
「それが本音か」

そう。大豆だけの問題ではない。
この世界、食材はあるのに調味料の種類がほとんどなく、ハーブ類ですら雑草扱いされているのだ。食べるのは肉や魚、キノコや果物、一部の野菜位で他は放置されているのが現状である。しかも調理法は焼き一択。スープもあるが、出汁をとるという認識はなく水を入れて塩を入れたらそこへ焼いた魚や肉を入れるだけという大雑把さなのだ。王宮の豪華な食事というのも塩や砂糖をふんだんに使っただけで、後は生花等で飾られているという微妙すぎるものだった。
だからチョコレートのお店が出来たと聞いた時は奇跡か!! と思ったが、甘過ぎる上にえぐみと苦味が消えておらず舌触りも荒くて、とても美味しいとは言えないもので消沈したものだ。

とにかくこの世界の食事は不味いとしか言い表せない。このままでは最初の犠牲者が出てしまう。

「最初の犠牲者だぁ? 誰の事言ってやがる」
「ルーベンスさんだよ!!」

晩餐会でのルーベンスさんの顔色は相当で、これからお弁当でも持って行ってあげようかと思っていた所なのだ。

『…ミヤビ様、それほどまでに憂いておいでならば、望むものを創ってはいかがですか?』

今までラグマットの上で眠っていたヴェリウスが、くぁ~っとアクビをしたかと思えばおもむろに立ち上がり言ったのだ。

「いや~他の植物に影響与えたりしても怖いでしょう?」
『何をおっしゃいますか。貴女様が望めば思い通りになるのですから、影響を与えぬよう願えば宜しいのです』

ぐぐっと身体をしならせてもう一度あくびをすると、ヴェリウスは少し出掛けてきますと言って外へ出ていったのだ。

成る程、ヴェリウスも何だか呆れて投げやりな感じではあったが、確かに無いものは創ってしまえば良いのか…。

「おい、ちょっと待て。その前にまずはどういったものをどいいう風に創るか、そして場所やその後の事を書き出して俺に見せろ。じゃねぇと後々大変な事になりそうだからな」

えー面倒。と顔に出せば、ヤクザな顔で睨まれた。
この男は本当につがいなのだろうか。

「…分かりましたよ。書き出せたら渡すから…」
「書き出す前に勝手に創るなよ」

信用ないなぁ…。

念押しされた私は、面倒な作業に肩を落としながらも犠牲者ルーベンスさんを出さない為に少し頑張る事にしたのだ。
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