異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第五章

ドナドナ

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12歳の誕生日を迎える少し前、父親から魔法の適性検査を受けるように言われて教会へと行ったお嬢様は、そこで“聖魔法”の適性があると確認されたそうだ。
急に“聖女”だと言われて戸惑っていたというのに、さらに“聖女”は生涯教会から出られないと聞き恐怖したという。

父親である子爵には嫌だと伝えたようだが、名誉な事だと聞く耳もたず、教会側からはその日の内に聖女の従者となる者が派遣され自由を奪われ家に軟禁状態だったのだとか。
その時に私達の服屋に行けば小さな幸せが手に入るという噂を思い出したお嬢様は、誕生日パーティーのドレスを仕立てるという名目で家から出る事を許されたらしい。
勿論従者の監視付きでだ。

私達の服屋で仕立てれば、実は聖女ではなかった。とか、つがいが現れるなどという事が起きるかもしれないと思ったそうなのだ。
結局は仕立屋ではなかったし断られたのだが、とお嬢様は悲しそうに俯いた。

「“聖女”だぁ?」

そういえばロードは知らなかったなと振り返れば、カルロさんが事の次第を説明してくれていたので助かった。
さすが元王様。有能だ。

「ロードさん、そろそろ子爵達が様子を見に来るかも~」

トモコの声に反応したロードは、再度私に布(どうやら外套らしい)を被せると米俵のように抱えたのだ。

「ベルーナ嬢だったか? 悪ぃがあんたの処遇をどうこうする事ぁ出来ねぇ。だが、元の生活に戻れるようカルロが何とかすっからそう落ち込むんじゃねぇぞ」

後コイツに会った事は忘れてくれや。と言いながら移動するロードの後ろで、カルロさんがお嬢様に会場へ戻るようフォローしてくれている声が耳に届いた。

「う゛、ろ、ロードッこの抱え方、お腹が圧迫されて…ぐ、」
「少し我慢してくれ。オメェは今、この屋敷に入り込んだ不審者って事になってんだ」

何それ!?



実は私が勝手にヘルナンデス子爵邸へやって来て暫く経った後、ロードにそれが発覚したのだが、この男はあまりの事にここへ乗り込もうとしていたらしくそれを止めたのがルーベンスさんだったのだとか。
ロードがここへ乗り込んで私が彼のつがいであると知られるのはよくないとかで、不審者が侵入したとして屋敷に乗り込む事になったというのだ。

それもどうかと思うが、屋敷内にすぐ入るにはこれが一番だと自信満々の声で言うので何度かそんな経験があるのかと遠い目になったものだ。

そしてその不審者として捕獲された私は、俵担ぎされて英雄の凱旋のように皆が見守る中ドナドナされたわけである。

「さすが第3師団の師団長だ」「迅速な対応だった」「何とも荒々しい登場だったが」「わたくし入って来られた時どこの盗賊かと思いましたわ…」「…本当に、お顔が恐ろしい魔獣のようでしたわ」

途中そんな声が聞こえてきたがあえて何も言わずに通り過ぎたのだが、盗賊って…と内心爆笑であった。

外に数人の騎士を待機させていたらしいが、貴族の屋敷に例え捕物であっても騎士が踏み入る事は難しいらしく外での待機となったらしい。
何故ロードは入れたのかと言えば、王様からの許可と、精霊わたしがつがいであるという事が背景にあるのだと後々彼から教えてもらった。

しかし騎士達もカモフラージュの為に連れてこられたらしいので可哀想な事をしたと思ったが、ロードのそばに居れて嬉しいという感情が伝わってきたので同情も謝罪もしない事にする。





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