311 / 587
第五章
チャンス到来!
しおりを挟む沸き起こる歓声と拍手に、この世界の人々の中で聖女の存在がいかに大きいものかを知る。
もしかしたら、聖女=精霊位の認識なのかもしれない。
よく見ればこのホールにカラフルな祭服を着ている人達が数人居るようだ。あれは教会関係者ではないだろうか。
キョロキョロしていると、トモコとカルロさんがこちらへとやって来たので声を掛ける。
「ダンスはどうだった?」
「足を踏む失敗はしなかったよ~でもヒップホップとは全然動きが違ったや~」
それはそうだろう。ヒップホップとワルツを一緒にしたらダメだ。
「なかなか斬新な踊りでね。素敵だったよ」
ニコニコ笑うカルロさんだが、斬新な踊りとは何だと聞くのが怖くなった。
「しかしベルーナ殿が“聖女”だったとはね…教会の権威がこれ以上増す事は避けたいんだが…」
カルロさんの呟きに、教会は力を持ち過ぎているのかもしれない現状に気付く。つまり、“聖女”という新たな“象徴”を手に入れた教会の“力”は更に増すわけで、“国”に口出ししてしてくる事も有り得るのだ。
もしかしたらすでにそんな状況なのかもしれないが。
「みーちゃんがパーティーに潜入する位気になってたのは、彼女が“聖女”だったからなのかもね」
「え?」
トモコの言葉に小首を傾げれば、だって“聖魔法”の適正があるだけでは聖女や聖人とは言わないんだよ。
神々と波長の合う人間が聖女だったり聖人って言われるの。もしくは巫女とかね。あの子はそういった意味では本物の“聖女”みたいだし、だからみーちゃんも気になっちゃったのかも。と続けるので愕然とした。
「私があの子に惹かれてたって事?」
「えー違うよ~。惹かれてたっていうか、例えは悪いけど…普段なら気にもならない道端の小石がたまに目に付く事があるでしょ? そんな感じ?」
それが私達からすれば聖女とか聖人かなぁ。と話すので口の端が引きつった。
例え女の子であっても、惹かれたとか言ってたらロードさんにお仕置きされちゃうよ~という言葉は聞かなかった事にする。
「神々からしたら聖女という存在はそんな程度なんだね」
人間は教会の象徴のように大々的にまつりあげる存在だというのに。と苦笑いしているカルロさんにトモコは、人間と神の感覚の差ってやつですね~とよく分からない言葉を掛けていた。
パーティーも終盤に迎えると、お嬢様も諦めているのか聖女と分かった途端にすり寄りだした大人達を笑顔で相手し始めている。まだ12歳になったばかりだというのに、貴族というのも大変だと他人事のように思っていれば、お嬢様がお付きの人と共に会場から離れたのだ。
「トモコ、カルロさん。お嬢様が会場から出たから追いかけてくるね」
そう言い置き私も会場から出た。チャンス到来である。
従者は例によって例のごとく、お店に来たあの失礼な態度の男だった。男もまたカラフルな祭服を着用している事から教会関係者である事が分かる。
「ベルーナ様、貴女は“聖女”様なのですよ。もう少し屹然とした態度でーー…」
なる程。彼は従者ではなくマネージャー的な役割の人なのかと、2人の会話に耳をすませているとお嬢様と目が合ったのだ。
おや? 認識阻害魔法をかけているはずだがと首を捻っていると、お嬢様も同じように首を傾げている。
「ベルーナ様、どうかされたのですか?」
従者…ではなく教会関係者の男が訝しげな顔でこちらを振り向く。しかし見えていないのか何もありませんがと眉をしかめたのだ。
「…何もないわよね…??」
成る程、認識阻害は効いているが違和感があると。これが“聖女”の力というやつなのだろうか。
「そんな事よりも、パーティーが終わり次第教会へと移動していただきますのでーー…」
自分の言いたい事だけ言って、お嬢様を置いて会場へ戻って行った男に呆れた目を送りつつもラッキーだと思う。
私は誰も居ない事を確認してから認識阻害魔法を解いたのだ。
11
お気に入りに追加
2,509
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
お金目的で王子様に近づいたら、いつの間にか外堀埋められて逃げられなくなっていた……
木野ダック
恋愛
いよいよ食卓が茹でジャガイモ一色で飾られることになった日の朝。貧乏伯爵令嬢ミラ・オーフェルは、決意する。
恋人を作ろう!と。
そして、お金を恵んでもらおう!と。
ターゲットは、おあつらえむきに中庭で読書を楽しむ王子様。
捨て身になった私は、無謀にも無縁の王子様に告白する。勿論、ダメ元。無理だろうなぁって思ったその返事は、まさかの快諾で……?
聞けば、王子にも事情があるみたい!
それならWINWINな関係で丁度良いよね……って思ってたはずなのに!
まさかの狙いは私だった⁉︎
ちょっと浅薄な貧乏令嬢と、狂愛一途な完璧王子の追いかけっこ恋愛譚。
※王子がストーカー気質なので、苦手な方はご注意いただければ幸いです。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる