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第五章
私をパーティーに連れてって
しおりを挟む「ーー…という事があってね」
久々に早く帰って来たロードと、ヴェリウス、ショコラにトモコと皆で食卓を囲んでいる時に今日あった貴族令嬢の話をしたのだ。
『その貴族、噛み殺しましょう』
「主様への暴言は許せません~」
ヴェリウスとショコラが恐ろしい事を言うのでまぁまぁと宥めていると、ロードが早速店に現れたのか…。と意味深に呟いた。
「え? ロードはお嬢様について何か知ってるの?」
「いんや。そのお嬢様の事は一切知らねぇが、ミヤビの店の噂が貴族共の耳に入ってるらしい事はカルロから聞いた」
何と、例の噂が貴族達の耳に届いているのだそうだ。しかし私の店は庶民向けである。勘違いした貴族が来ても今日のように帰って行くだろう。
「貴族が絡んでくるとロクな事ぁねぇからなぁ」
『昔から人間とは権力を持つと愚かな事しかせん』
ロードの言葉にヴェリウスが唸る。昔何かあったのだろうか?
ショコラは、主様のおそばでお守りしますから明日からはショコラもお店に連れて行って下さいと懇願してくる始末である。ショコラを連れて行くのは構わないが、もし今日のようにあんな態度で貴族がやって来たら、ショコラは迷わず斬り殺すかもしれない。それが怖いのだ。
「ヘルナンデス子爵といやぁ確か…前当主が豪商“ムーア家”の娘を妻に娶っているからな。金だけは腐る程あるんじゃねぇか?」
「そういえば、お嬢様もふっくらしていたし、ドレスも馬車も無駄に着飾ってたかも…」
裕福ならば当然かと納得する。
「そういやぁ、娘の12歳の誕生パーティーを王都の屋敷でやるから来いっつって招待状が来てたな…」
招待されてたァ!? てか12歳!? 15歳位の身長だったけど!?
そういえば、この世界は平均身長も高いし成長率も半端ないんだった!!
って違う。招待状って言ったよね? ロードにパーティーの招待状!
「そのパーティー、私も行っていいかな?」
「はぁ!?」
ロードのヤクザな表情が崩れ、困惑と驚愕と呆れが混ぜこぜになった顔に今の気持ちの全てが詰まっている事を悟り、なんと器用なと感心していると、
「私も行きたい!!」
とトモコまで言い出したものだから、ロードの顔はますます崩れる一方だ。
「ちょっと待て! それは駄目だっもしオメェらが一貴族のパーティーなんぞに出席してみろ。神や精霊のお気に入りだと勘違いされてその貴族が力を持つかもしれねぇんだぞっそんな事になりゃ最悪内乱が起きる!」
『ロードの言う通りです。神は人間に近付いてはならない存在。余計な火種になりかねませんよ』
ロードとヴェリウスの言い分に、確かにそうだと俯いたが良い事を思い付いた。
「あ、じゃあ人間としてそのパーティーに出席するよ」
◇◇◇
「ルーベンスさーん相談があるんですけど」
某青いタヌキ(猫)型のロボットのようなポジションになってしまったルマンド王国の宰相様はそう言いながら部屋に入ってきた私に盛大に顔をしかめたのだ。
「今度はどんな厄介事を持ってきたのかね」
嫌そうに、しかし諦めたような目をして聞いてくるルーベンスさんに口を開いたその時。
「ミィィヤァァビィィィ!!」
バターンッと扉が開いてロードが肩で息をしながら現れたのだ。
「オメェは、まだ諦めて、なかったのか!!」
ぜぇはぁと息も絶え絶えに叫ぶロードから目をそらす。
そう。昨夜人間としてパーティーに出ると宣言した後、ロードに散々反対されたのだ。しかし諦めきれずルーベンスさんに協力してもらおうとやって来たらこれだ。
「…ロヴィン…いや、第3師団長、人の部屋で騒々しい。一体何なのかね」
ロヴィンゴッドウェルでなくなったロードの呼び方に一瞬戸惑ったルーベンスさんだったが、後はいつも通り心から迷惑そうな事を隠しもせずはっきり言った。
「そうだっルーベンスさん、私ヒル…ヘルナンデス子爵のお嬢様の誕生日パーティーに出席したいんです!!「ミヤビ!!」」
「ヘルナンデス子爵?」
ルーベンスさんの眉間のシワが深くなる。ロードはバカな事言ってねぇで諦めろと言ってくるが、あのお嬢様の沈んだ様子が気になるのだから仕方ないのだ。
「何故そんなバカな事を言い出したのかは知らないが、そこの男が言う通り止めておいたほうが懸命ではないかね」
「ちょっと気になる事があるんです。だからパーティーに出席したい」
オメェ昨日はそんな事言ってなかったろうが!! と声を荒げているロードを無視してルーベンスさんを見れば、しばらく私の目を見てはぁ…と溜息を吐き、聞かせてみせろと言うのでいそいそとソファへ座ったのだ。
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