301 / 587
第五章
友を慕ぶ ~ カルロ視点 ~
しおりを挟むカルロ視点
「カルロの良いところはいつも皆に気を配ってさりげなく何かをしてあげたりするその優しさだよな」
そう言ったのはあの男だった。
あれは各師団の師団長が集まる飲み会の席だったか。
私が無くなりそうになっていた酒に気付いて注文した時、向かいに座っていた“トーイ・ヒューバート・レブーク”…当時第4師団長だった男に突然言われたのだ。
トーイは無愛想で口の悪い横柄な態度のロードと正反対の、人当たりの良いいつもニコニコしていた男で、周りの雰囲気を明るくするような人柄だった。
なのにロードとトーイは何故か親友という関係を築いており、なんとも不思議だと思っていたものだ。
何だい突然? そう驚いて返した記憶がある。
彼は何と言っていたか…そう、確かー…
「突然じゃないけど? ずっとそう思ってたし、皆もそう思ってるから。だから女にモテモテでも妬まれて恨みをかったりもしないんだろうけどな~」
ニコニコと笑うトーイの言葉に追随してロードが、お前の周りの女共うるせぇからなんとかしろよと顔をしかめてきたんだったか。あの頃のロードはつがいもおらずピリピリしていたからな…今は別人のように穏やかだが。
「ロードは自分につがいが現れないからって人にあたるなよ。いつかお前にもつがいが現れるさ」
「ぁ゛あ゛? あたってねぇよ。つがいなんて邪魔くさそうなもんこっちから願い下げだっての」
「ばっかだなぁお前! つがいが現れりゃその考え、100%変わるからな!!」
「変わらねぇよ。バカバカしい」
何て言い合ってたが、トーイはその後私に「あいつにつがいが出来た時はロードが言ってた言葉全部つがいに暴露してやるんだ」と宣言していたな…生きていればミヤビ殿の前で暴露話して騒いでいたんだろうとつい口元に笑みを浮かべていれば、
「何思い出し笑いしてんだよ。エロい事でも考えてたのか? 色男」
と後ろから声を掛けられたのだ。
丁度思い出していた男の1人だった事に目を瞬き、ロードと名前を呼んだ。
「いや、君が昔トーイに言っていた言葉を思い出してね…確か“つがいなんて邪魔くさそうなもん願い下げだ”と言っていたなぁ、とね」
「だあぁぁぁ!!!? おま、それミヤビに言ってねぇよな!? 絶対ぇ言うなよ!? 頼むぞ!? お願いだからっ」
「ハハハ。今日がトーイの命日だからかな。彼が生前やりたがってた事を叶えてあげたいと思っているんだが、どうだろうか?」
「いやいやいや、トーイも死んじまってんだから余計な事はすんなって思ってるって。何しようとしてるか知らねぇが嫌な予感しかしねぇし!」
「トーイが言ってたよ。いつかロードにつがいが現れたら、絶対暴露話をそのつがいにしてやるって」
トーイのようにニコニコ笑いながら話せば、ロードは顔を真っ青にさせて叫ぶのだ。
成る程、トーイがからかう気満々だった理由が分かる気がした。これは面白い。
あのふてぶてしくも横柄で強面なロードが焦って下手に出てくるなんてね。
つがいが居るだけでこうも変わるものなのだと人族の七不思議の一つに色々考えさせられたのだ。
「そういえば、トーイの息子の…“アナシスタ“は元気にしているかい?」
確かトーイの息子は第3師団の副師団長としてロードを補佐していたが、ダンジョー公爵と共に反逆者として処罰されたと聞いている。つがいが病にかかりそれを助ける為に犯罪に手を染めたのだとか…。
「…ああ。冒険者として頑張っているよ」
ロードは自身を裏切った彼を、今でも見守っているらしい。
王都からは追放されてしまったが、ロードの知り合いのギルドで冒険者として一からやり直しているアナシスタのそばには、いつもつがいが寄り添っているとか。
とても優秀な騎士で、トーイの後継として期待されていたが残念でならない。
魔素が満ちるのがもう少し早ければ…皆がそう思っているが、口に出さないのはそれが自分勝手な考えだと理解しているからだ。
「そうかい。元気ならそれでいいんだ」
もしアナシスタが罪を犯さなければ、もしトーイが生きていたら、もし私が王として頑張れていたら…そんな考えが頭の中を駆け巡るが、私は頭を振りロードへと顔を向けた。
「今日は久し振りにレンメイも誘って飲みに行かないかい?」
「最近は全然飲みに行ってねぇしなぁ…ま、仕方ねぇから寂しい独身男共の飲みに付き合ってやるよ」
まったくコイツは…これはもう、ミヤビ殿に昔の暴露話をする事決定だな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ダンジョー公爵:
ルマンド王国、前王の兄で現王の叔父にあたる。最初の章の悪役。
現在犯罪奴隷として強制労働中。
アナシスタ・ベルノ・レブーク:
ロードの親友、トーイ・ヒューバート・レブーク第4師団長を父に持つ。両親共すでに亡くなっている。
つがいの病を治す為にダンジョー公爵側についた。
元第3師団副団長。
※忘れた方は最初の方を読みなおして下さるとより詳しく知る事が出来ます。
11
お気に入りに追加
2,516
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
幼女公爵令嬢、魔王城に連行される
けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。
「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。
しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。
これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる