異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第五章

俺の世界が変わった日 ~ ロード視点 ~

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ロード視点


ミヤビに自分の貧しかった過去を話したが、こんなつまんねぇ話を本当なら聞かせたくなかったってのが本音だ。
だって格好悪ぃだろ。大人達に暴力をふるわれて手も足も出なかったガキの頃の話なんてよぉ。
愛するつがいの前では格好良くありてぇんだよ。男ってのはそんなもんだろ。
それに、俺の過去の話で優しいミヤビの心を曇らせたくはない。

ああ…やっぱり辛そうな顔をさせちまった。でもな、俺ぁオメェに出会ってから幸せな事しかねぇんだ。だからんな顔しなくていい。
そんな事を思いながらミヤビを抱き寄せる。

ミヤビの良い匂いと柔らかな身体を堪能しながらふと昔言われた事を思い出した。


ーー…ロードよ、つがいは良いぞ。どんなに辛く苦しい事があっても、つがいの顔を見ればそんなもん飛んでいっちまうー…いつかお前にもそんな存在が現れるだろうよーー…

あれはいつだっただろうか……

そうだ、確か俺が14の頃だ。
あの頃騎士見習いから騎士になって、親父の養子になったんだ。

親父との出会いは12の時。
当時の第3師団長をしていたあの人に拾われて騎士見習いとして入隊した俺は、鬼のようにしごかれて最年少で騎士となった。
親父は伯爵位で、騎士でもない庶民を養子にする事を周りに反対されていたらしく、やっとお前を息子に出来ると嬉しそうに笑っていたっけか。親父には俺より10も上の息子がすでにいたってのに物好きだと当時は思っていた。

トントン拍子で伯爵家に迎えられ、親父の本当の息子との仲も悪くはなかった。人族だけあって家族仲は比較的良く特に不満もなかった。教会で暮らしていた時とは比べ物にならねぇ位穏やかな生活だったさ。けど、俺だけがこの家族の中で異物なんだという思いは抜けきらなかったんだ。
せめてつがいでも現れりゃ違うんだろうとは思っていたが、残念な事に俺には10年経っても20年経ってもつがいは現れなかった。

35も過ぎた頃にゃ俺はずっと独りなんだろうと諦めてたね。本当の“家族”なんて俺にゃあ手に入れられねぇもんなんだってよ。
まぁ、親父が師団長を引退して俺が後釜に入ってからは忙しくて、現れやしねぇつがいなんぞより仕事が大事だなんてバカな事考えてたが、あの時にも親父は“つがいに出会えば世界が変わる”なんて言ってやがって、変わるかよ。バカじゃねぇのって思ってた。

第4師団長だった俺の親友にすら既に子供も居て、しかもそいつが俺に憧れて騎士になっていて、酒盛りん時に幸せそうにその事を語るもんだから、それを見ていたら正直羨ましくて妬ましかったりもしたのも事実だ。んな事認められずに悶々としてたけどな。

そんな日々の中でも、魔素の枯渇は酷くなる一方で…親友は息子と嫁を残して呆気なく逝っちまった。
そん時ぁさすがに、神々は何で助けてくれねぇんだ。神王様は何でこの世界を捨てちまったんだって恨みもしたさ。
教会はクズ共の集まりだし。神王なんてクソくれぇだって。
今考えると逆恨みもいい所だけどな。しかもその神王様が俺のつがいだったなんて思いもしなかったけど。
実際はクソなんてとんでもねぇ。可憐な一輪の花だよ。いや、花よりもっと綺麗で可愛くて甘くてふわふわな俺だけの天使ちゃんだったんだけどな。


話は逸れたが、親友が病気にかかっちまった時から、俺ぁ何か良い方法はねぇかって必死に探した。
それこそ世界中駆けずり回ったが、結局そんな都合の良い方法は見つからねぇ。親友も死んじまった。それでも親父達がいつ病で倒れるかも分からねぇってんで、どんな情報でも希望があればそこへ飛んで行った。
そうしてある日、深淵の森の事を知ったんだ。

木々が生い茂っているだの魔物が出没しただのと俄には信じがたい情報がもたらされたあの日。

森に入った俺は、ミヤビと出会った。

親父の言う通り、世界が一変した日だった。
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