298 / 587
第五章
大司教
しおりを挟む〈神王創世記 一章の一節より〉
初めに神王は天と地を創造された。
地は形無く黒が拡がり、神王の御力がただ水の面を覆っていた。
神王は「光を」と言われた。すると白が在った。
神王はその白を見て良しとされた。神王はその白と映る黒を光と闇とし、分けられた。第一日である。
神王はまた言われた。「水の上に大空を」。すると水の上に大空が在った。
神王は大空とその下の水とを分けられた。第二日であるーー…
ルマンド王国の王宮内にある図書室にて比較的薄い聖書を手に取り読んでいたが、あくびをしながら閉じた。地球のキリスト教の聖書っぽいなと思いながら。
今まで教会や神々、神王についてすらあまり知らなかったが、先日のフォルプローム国とバイリン国の事件で教会の関与が疑われた為にどういうものかを調べにやって来たのだ。
しかし、ダメだこれ。
まず聖書の創世記一章からして本が分厚い。そもそも本に使われている羊皮紙が0.5ミリ位ありそうだからだろう。
私が知るコピー用紙の厚さが0.08ミリ位で厚めのポストカードでも0.24ミリ程度である事からも、この羊皮紙の厚さがわかるだろう。
にしても何をこんなに書く事があるんだと言いたい。そして誰が神王が世界を創った所を見ていたのか、もしくは見てきたかのように伝えたのかを知りたい。多分こうやって創ったんだろうと妄想したのなら、その妄想力と発想力が天才すぎると称賛したい位だ。
聖書の厚さに読む気も失せ、ぼーっと天井を見つめる。
きらびやか過ぎる図書室に落ち着く事も出来ず早々に出る事にした。
聖書を元在った場所へと転移させ足早に図書室を後にしたのだ。
しかし図書室の歴史と仰々しさを感じる分厚い本と、梯子を見れただけでも得した気分にさせられる。
ああいう某魔法学校の図書室みたいな雰囲気に憧れてたんだよね。
そんな他愛もない事で気分を上げながら歩いていれば、前方から白いインパネスコートのようなローマ法王が着てそうな服装をしたおじいちゃんが歩いて来たのだ。その後ろには神父が着るような服装だが、黒ではなくグレーを纏った人が2人歩いている。
おじいちゃんは私を見つけると瞳を瞬き、ニッコリと微笑んだ。しかしその後ろのお付きの人達は顔を険しくさせると、
「貴様、大司教様を前に無礼だぞ!!」
と叫んできた。
無礼もなにも、この人達との距離はまだ5メートルは離れているし私は廊下の端を歩いているだけだ。一体どの辺が無礼だと言うのか。
「無礼なのは君達の方だろう。彼女は端を歩いているじゃないか」
おじいちゃんがそう言って後ろのお付きの人達を嗜めると彼らは、しかしやですがと言い募る。
面倒そうなのでロードの執務室へと転移したが、あれは多分教会関係者ではないだろうか。
「ミヤビ、会いに来てくれたのか!!」
むむ…と考えていれば、ぎゅうっと筋肉の檻へ閉じ込められたのだ。
「さっき教会関係者っぽい人と遭遇して、面倒そうだったから転移したんだけど…」
「教会関係者だぁ? あ~…そういや大司教が宰相と面会するみてぇな事言ってたか?」
私に聞かれても知らないが、成る程。ルーベンスさんのお客様だったのか。
「じゃあ、今日はルーベンスさんに会いに行かない方が良いね」
「お前なぁ、普通旦那の前で他の男に会いに行く話をするか?」
酷いと嘆きながら抱き潰してくるものだから結界を強化した。
「やましいことが無いから言えるんだよ。分かってるでしょ」
「そりゃわかってるけどよぉ。たまには俺も構ってくれねぇと」
「毎日構ってるでしょうが」
ブーブー言ってくるロードに、猫がするようにすり寄れば相好を崩しぎゅうぎゅうと抱き締めてきたのだ。
暫くされるがままになっていると、ガンガン叩きつけるようなノックが響いた。
驚いてそちらを見れば、ロードの返事と共に乱暴に開け放たれた扉と共に飛び込んで来たのは知らない騎士で、肩で息をしている所を見るとかなり急いで来たらしい事が分かる。
「何があった?」
私が知らないだけで、部下だったのかロードは躊躇う事もなく話をしている。
「ッ大司教様が、精霊様に是非御会いしたいと…!」
「断れ」
「しかし師団長ッ大司教様ですよ!?」
「テメェはたかが大司教と精霊様、どっちが偉いと思ってんだ」
ロードの威圧に部下らしき騎士は、そ、それは…っとどもっているではないか。
「もしそれでも無礼な要求を続けるようなら、精霊様どころか神獣様までもが教会へは今後一切近付かないだろうと伝えておけ」
冷たく言い放ったロードは、もう話すことはないと言わんばかりに部下を追い出し扉を閉めたのだ。
11
お気に入りに追加
2,533
あなたにおすすめの小説
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!
美月一乃
恋愛
前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ!
でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら
偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!
瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。
「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」
と思いながら
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
幼女公爵令嬢、魔王城に連行される
けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。
「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。
しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。
これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。
パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!
八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。
補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。
しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。
そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。
「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」
ルーナの旅は始まったばかり!
第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる