異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第四章

やって来たのは…

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「ふぁ~…、よく寝た」

久しぶりの朝寝坊をして目を覚ませば、時計の針はとっくに11時を回っていた。
天気が良くないのか、カーテンの隙間からは昼前だというのに日もささず部屋の中は薄暗い。

「あ~寝すぎてぎゃくにまだ眠い」

11時を過ぎていてもなかなかベッドから起き上がれない。いや、起き上がる気がないのだ。
だって今日は久々のお休みなのだから。

まぁ久々といっても3日振りだが。
服屋は基本週休2日制で、地球でいう月曜日と金曜日に休む事にしている。
でも最近は、連休が欲しいなぁと思い始めてトモコとも相談している所だ。

「温泉でも入ってさっぱりするかなぁ」

お忘れだとは思うが、私の家には露天風呂があるのだ。
ほぼロード専用と化しているこの温泉だが、たまには入ろうかとベッドから起き上がった所で店舗のセ○ム(結界)が反応したのだ。

因みにこの結界は、悪意のある者が建物(店舗)に触れると反応し、珍獣達と私、そしてトモコにだけアラーム音が聞こえるようになっている。

そんなわけで珍獣村は今大騒ぎだ。
ジャンケン大会でな。

誰が駆け付けるかで問題になり、恒例のジャンケン大会なわけだが、そんな事している暇があるなら早く駆け付けて欲しいものだ。

せっかく温泉に入ったり、ゴロゴロしたりして過ごそうと思っていたのに…とうんざりしながらも一瞬で身だしなみを整えて店舗へと転移した。

魔法で一番便利なのは身支度が一瞬という所だな。と思いつつも店舗内を見回す。
特に異常はないようだ。

暫くするとトモコも転移扉を使って店に飛び込んできた。
確か今日も新神研修があるとか言っていたのにそっちは良いのだろうか?

「みーちゃん何があったの!?」

慌てて来たのだろう、若干髪が乱れているトモコは勢いよく聞いてくる。

「私もアラームが鳴って来たけど、店内に異常はないみたい」
「あ~そっか、結界が張ってあるから入って来れないんだよ」

話を聞いてホッとしたように外に目を向けたトモコが一点を見つめたままピタリと止まったのだ。

「トモコ?」





「なんで…っ」

ぽつ…ぽつぽつと雨粒が地面へと染み込んでは消える。
次第にぽつぽつがザーザーとなり、雨が本格的に降り出したのだと分かった。
一雨来そうな天気だとは思っていたが、やはりかと空を見上げる。

「僕が会えないのに…っ何でお前は毎日会ってるんだよ!! 何でお前は主様も、ミィも、僕から奪っていくんだ!!」

そう叫ぶ女性は雨に濡れ、震えていた。



彼女を見つけたのはついさっき。
トモコが一点を見つめて動かなくなったので、その方向…入り口を見れば、絶世の美女が立っていた。
トモコと張る美貌だと見惚れてしまう位綺麗な女性なのだ。

しかしその女性はそこから動く事も、入ってくる事も一向になく、こちらをじっと睨んでいたので首を傾げる。

「トモコ、知り合い??」

私の問い掛けに首を横に振るトモコは本当に知らないらしい。勿論私も会った事はない。

「あの~…どちらさまでしょうか」

言えば益々睨まれる。美人の睨みは本当に迫力があって怖い。

「みーちゃん、あの人悪意があるから店に入って来れないんだよ~」
「…思うんだけど、悪意がある人は店の存在に気付かないはずでしょ。あの人めっちゃこっち見てるけど…アラームが鳴ったって事は建物にも触れたって事だし」


と会話していた時、雨が降りだして冒頭のセリフである。

ぶっちゃけ訳が分からない。
会った事もない人から悪意をぶつけられているって…私は知らない間に何かしたのだろうか?

「人違いでは?」
「ッ…何、だそれ…っお前は!! 生まれたばかりの神だというのに調子にのって!! “ジュリアス様”はお前なんか足元にも及ばない偉い神なんだからな! なのに顎で使うような真似して…ッ」

どうやらジュリアス君の知り合いらしい。
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