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第四章
チラシを配ろう!
しおりを挟む待てど暮らせどお客様は来ない。
たま~~~に通る人達は仕事に向かうおっさんや散歩しているおじいちゃんだけ。
婦人服を主に置いている私達のお店には見向きもしないのだ。
いや、建物自体にはギョッとしてジロジロ見ていくのだが。
「う~ん…こりゃ大通りでチラシとか配らないとダメかなぁ」
「昨日王宮のメイドさん達にはチラシ配ったけどね~」
「そうね。といっても休憩室の机の上に置いてきただけだけど…」
カウンターに二人突っ伏して会話をし始めて3時間。
お腹が空いた。
「誰も来ないし、お昼にしよっか」
「だね~気配察知の魔法展開しとけば三階で食べてても対応出来るし」
等と会話していると、何かが引っ掛かり天井を見上げしばし考える。
「……あぁ!!」
「何!? みーちゃんっ」と私の上げた声にビクリとしたトモコが振り返った。
「私達は間違いを犯してしまったのだ」
「え? 何? どういう事…」
探偵のように語りだした私に、ゴクリと喉を鳴らして恐る恐る聞いてくるトモコ。
そんな彼女に、「それは…」と語りだした。
「王宮のメイドさんは貴族なんだよ」
「あ!!」
そう、王宮で働くメイドさんは身元の確かな貴族の娘さんが多いと聞く。
「厳密には下級貴族らしいけど、貴族って基本オートクチュールだから…」
「そりゃ来ないよ~」
トモコと二人顔を見合せ溜め息を吐いた。
大通りでチラシ配りしようか。と目で会話して 。
ちなみにこのチラシ、トモコが木の皮を削って和紙を作り、それに絵と文字を書いたものを私がコピーした代物だ。
昼食を食べ終わった私達は、休憩に入ったトリミーさんを第1号のお客様に迎え、あれもこれも素敵~!! と少女に戻った彼女を接客して、ブラウス2枚とスカート1枚を購入して頂き一旦店を閉めた。
これから大通りにチラシ配りに行く為だ。
「トリミーさん喜んでくれてたね~」
「試着した時も反応良かったし、古着の匂いも気になってたみたいだからね」
とお店に鍵をかけ、札をクローズにすると二人で大通りに向かって歩き出す。
大通りまでは歩いて20分。大通りから中央通りまでは歩いて2時間とかなりかかる。
その為乗り合い馬車が出ているが、それも大通りまで出ないとないのだ。20分歩く事など当たり前なこの世界の人は気にならないだろうが、ほぼ車や電車等で慣れている私達には遠いと感じる距離である。
「こんな路地裏で治安が悪くないのはさすがだよね~。普通なら犯罪が起こってもおかしくなさそうな人気のない場所だし」
「人口が少ないっていう理由もあるし、何よりこの路地裏、いかにもファンタジーで可愛いからじゃない?」
レンガや木材で出来た家は可愛らしいし、それぞれの家の庭には花や植物が植えられている。
路地裏とはいえ高層の建物も無いので日当たりが良いのもある。更に人口が少ないから家も少ないので道幅も広々している。大通り程ではないが、馬車が一台余裕で通れるだろう。
ご近所さんにもチラシをポスティング(扉にチラシを挟む)しつつ大通りまで出ると、王都の入り口門に近いからか賑わいを見せている。まぁ中央通りの方が人でごった返しているのだが。
最近はバイリン国からの移民も増えているのだとか。
「賑わってるね~。路地裏の静けさが嘘みたい」
トモコは眩しそうに大通りを行き交う人々を眺めて目を細めている。
馬車や馬、旅人風の人々の姿も目立つ。
この辺りは宿屋や飯屋、武器屋に薬屋が多く立ち並ぶ。冒険者ギルドや商業ギルドもこの辺りにあるのだ。
中央通りに近付くほど地元密着型のお店が増えてくる。
そして城に近付く程貴族向けのお店が多いのだ。
「ん~とりあえず冒険者ギルドに行って、受付のお姉さんにチラシ渡して、さらにおっさん達に奥さんに渡すように頼んでこようかなぁ」
「みーちゃんがギルドに行ってる間、私はこの辺で女の人にチラシ配っとくね~」
「頼むね。あ、問題にならないように一応そこらの騎士捕まえて許可取ってから配るんだよ?」
そんな会話をした後、私はギルドに向かったのだが…このチラシが後々問題になるとは思いもよらなかったのだ。私もトモコも。
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