244 / 587
第四章
結局こうなる!?
しおりを挟む契約が成立して上機嫌に部屋を出ていったルーベンスさんを見送りはたと気づく。
私、まだ釈放されてなくね?
呆然と扉を見ていると、ノックの音がしてギィと錆び付いたような軋み音をたてながら開く。
そちらへ注意を向けながらも頭の中は大混乱中である。
ルーベンスさん!! 何も解決してないから!! このままじゃ犯罪者として投獄されるから!!
「お嬢さん、お父上とは話が済んだようだけど…君のお父上は何故か足早にどこかへ行ってしまったんだ…どういう話をしたのか、詳しく教えてもらえないかな?」
先程取り調べをしていたお兄さんが入ってきて困ったように眉を下げる。
ルーベンスさん、せめてどこに行くかは言っておいて下さい。
「こんな事言うのもあれなんだけどね、君は大きな罪を犯してしまっていて、ご家族の立場も危ういんだ。この国の宰相閣下といえど今回の事で責任をとって宰相を辞めなければならなくなるかもしれない」
優しい口調で言っている事は恐ろしいお兄さんに顔が引きつり、あばばばばと変な震えがきた。
「そ、それってつがいも役職に就いていたら辞めないといけない…とか?」
このまま黙っていたら、ロードも師団長を辞めないといけないのか…? と思い至りお兄さんに聞いてみたら「お嬢さんのやってしまった事はそれ程重大な事なんだよ」と肯定された。
「……」
いやいや、ルーベンスさんと契約したしそんな事にはならないだろう。きっとルーベンスさんが上手くやってくれるはず…多分。現在進行形で放っておかれてる状態だけど。
そんな事を思い沈黙していたら、シーンとした空間の中にバタバタと慌ただしい足音が耳に届いた。
もしかしたらルーベンスさんが手を回してくれたのかもしれないと期待して顔を上げると、ガンガンと粗いノックで扉が揺れた。
「そんなに慌ててどうしたんだ?」
ノックと同時に入ってきた騎士にお兄さんは落ち着いて対応する。反対に慌てている様子の騎士は、全力で走って来たのか肩で息をしながら言ったのだ。
「こちらにっ師団長がいらっしゃる!! 直接、取り調べをされると…っ」
「師団長が? お嬢さんラッキーだよ!! 師団長のつがいは精霊様だから減刑を交渉してくれるかもしれない!!」
お兄さんが大慌ての騎士の話を聞き、嬉しそうにこちらを見て言った。
「…お嬢さん? 何しているのかな?」
二人が話している内にそーっと扉から出ようとしていた私は、恐怖を感じるような笑顔のお兄さんに肩を掴まれ、先程座っていた席へ戻されたのだ。
「何で逃げようとしたのかな?」
やはり笑顔で問いかけてくるお兄さんの後退した頭を死んだ目で見つめていると、さすがの温厚なお兄さんも顔が引きつってきたのだ。
「お嬢さん…君の視線の先がとっても気になるんだけど」
「そうですか?」
「頭を見てるよね?」
「いえ、毛根が死滅してしまったんだなぁ。などとは思ってませんから」
「完全に思ってるよね。人の傷口に塩を塗りこむ勢いで抉ってきてるよね」
と、現実逃避にくだらないやり取りをしていれば部屋の外が騒がしくなり始め、奴が遂にやって来たのだと知れた。
ギィィ~…
やけに響く扉を開く音に俯いて冷や汗を流す。
「師団長!!」
向かいに座っていたお兄さんが立ち上がり扉の方へ移動した気配がする。
「ご苦労だった。お前達は部屋から出ていてくれ」
低く太い声が私の耳に届く。
予想通りの男の登場に益々冷や汗が流れる。
「「ハッ」」
この部屋に居たお兄さんと慌てん坊の騎士が最敬礼をして部屋を出ていく。
ギィィ…バタンッと音をたてて扉が閉まった所で、部屋の中に残った男が口を開いた。
「さて…」
溜め息と一緒に吐かれた呟きに身体がビクリと震える。
「どういう事か説明してもらおうか」
向かいに座った男の椅子がギシリと軋む。
取調室の椅子が随分小さく見えるのは、男の身体が大きすぎるからだろう。
「ミヤビ」
私の名前を呼んだその人は…そう、ロードである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新年、明けましておめでとうございます。
今年もズボライフ共々宜しくお願い致します!!
最後までお付き合いいただければ幸いです。
22
お気に入りに追加
2,533
あなたにおすすめの小説
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる