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第四章

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「14万ジット…もう少し増やしたいところだなぁ」

深淵の森にある家の私室のベッドの上に白金貨や金貨を広げニヤニヤしながら考える。

ヴェアを狩るべきか…いやいや、それでは芸がない。他にも買い取ってくれるものはあるはずだ、と。

『ーー…ロードよ、御主明日は休みであったな』

階下から聞こえたヴェリウスの声にあわてて金貨達をかき集め、亜空間へと収納すると聞き耳を立てた。
どうやらロードが仕事から帰宅したらしい。

「おぅ。久々の休みだからな。ミヤビと『ならば鬼神の力をコントロールする訓練を行うぞ』げっ」
『げっではない。貴様は感情によって力がブレすぎるからな。しっかり鍛えねばならん』
「いや、でも久々の『黙れ。ミヤビ様のおそばに在りたいのであれば力の制御は必須だ。分かったな』」

有無を言わせぬヴェリウスの言葉に渋々頷くロードは子供のようだ。

暫くすると階段を上がってくる音がし、ベッドから立ち上がると自室の扉を開けた。
案の定ロードの姿を確認して声を掛ける。

「お帰りなさい」
「ミヤビ! 今帰ったぜ!!」

私の姿を認めて駆け寄ってくると、直ぐ様抱き上げられすり寄られた。

「知ってるよ。ロードとヴェリウスの声が聞こえてたから」

いつものように頭を撫でて言えば、ロードは少し落ち込んだように眉を寄せた。

「明日は久々の休みだってのによぉ~…一緒に過ごしてやれなくてすまねぇ…」
「いいよ。訓練するんでしょ? 頑張ってね」

本気で落ち込んでいるロードを慰めていてふと思った事を質問してみた。

「ねぇねぇ、力の制御ってどんな訓練するの?」


◇◇◇


『さて、今の御主は鬼神になったばかりで力のコントロールが出来てはおらぬ。以前は出来ておった狩りが出来なくなったのはその為だ』
「神力が漏れちまってるから動物が寄って来ねぇのか…」
『その通り。動物は敏感だからな。神力を少しでも感じると絶対に姿を現さぬ。よって、今日の訓練は“狩り”だ』

少し離れた所でヴェリウスとロードの訓練を見学する。
昨日無理を言って訓練に同行させてもらったのである。
とはいえ場所は深淵の森なのだが。森の中でもウチからは結構離れた場所に来ているのは、今ヴェリウス達が言ったようにウチの周りには動物があまり寄り付かないからだ。
呼べば来るけどね。

「そういやぁ最近はミヤビの好物の“ヤコウ鳥”を狩れてねぇからなぁ。今日の晩飯はヤコウ鳥にしてやるから期待してろよ!!」
「やったーー!! ヤコウ鳥美味しいんだよね~」

素直にロードの言葉に喜んでいると、突如天啓が降りてきたのだ。

『ミヤビ様、それでは我々は奴が狩りを終えるまで家に戻っていましょう』
「あ、そうだね。邪魔してもいけないし、ヴェリウスをブラッシングしながら待とうかなぁ」
『はい!!』

嬉しそうに尻尾を振る我が家のペットに微笑んで、それを悔しそうに見ているロードに「ヤコウ鳥が狩れたら見せてね」といって家に転移した。
家に帰るとさっそくヴェリウスをブラッシングしながら、ヤコウ鳥を待つ。

『ミヤビ様、随分とご機嫌ですね』
「ん~? そうかな?」

縁側で日光浴をしながらのブラッシングは至福だ。
この世界の太陽は、光もきつくないので日光浴が可能なのだ。

『普段は興味を示さない訓練について来たり、狩りに目を輝かせたりと、どうもいつものミヤビ様とは様子が違う気が…』
「そんな事ないよ~。元々訓練に興味がないわけではなかったし、狩りというか、ヤコウ鳥は美味しくて好きだし?」

ヴェリウスがブラッシングと太陽の暖かな光にうっとりしながらも怪しんでくるので余裕があるように取り繕って答えた。

マズイ。今から私がやろうとしている事がバレたら、延々と説教される事が目に見えている。

慌てて挙動不審にならないように慎重になっていれば、リラックスモードになっている為か、これ以上聞かれる事はなかった。



夕方になり、やっと帰って来たロードはヤコウ鳥と思わしき巨大な鳥を3匹手にぶら下げて帰って来たのだ。
因みにヤコウ鳥は2メートルを超す巨体だ。

「お帰りなさい!!」
「ミヤビぃ~、ヤコウ鳥狩って来たぜ~!」

胸をはるロードに、偉い偉いと誉めながら心の中でほくそ笑む。

私はロードの足元に置いてあるヤコウ鳥を見ると、その姿をそっくりそのままコピーし、解体して亜空間に入れるよう願ったのだ。

そう。ロードが狩ってきたヤコウ鳥の死体のコピーをギルドへ売ろうと考えたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ズボラ世界の貨幣は下記をご参考下さい。


1ジット=1円玉と同サイズの銅貨
10ジット=10円玉と同サイズの銅貨
50ジット=50円玉と同サイズの銀貨
100ジット=100円玉と同サイズの銀貨
500ジット=500円玉と同サイズの銀貨
1000ジット=1円玉と同サイズの金貨
5000ジット=50円玉と同サイズの金貨
10000ジット=1円玉と同サイズの白金貨

※それぞれの価値は地球と変わりません
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