上 下
226 / 587
第四章

精霊疑惑再び

しおりを挟む


『うむ。ならば力の継承を認めよう』

ヴェリウスの一言にギョッとしているアルフォンス君。おじいちゃん神はニコニコと笑って、「はて? 飯はまだかいなぁ」と言い出した。やはりボケてはいるようだ。

『ボケたりまともになったり、忙しい奴だ』
「ちょ、待てよ!!」

キムタク!?
アルフォンス君がかなり動揺しているが、どうやら引き継ぎは決定してしまった。

「オレはっ神とかんな偉いもんにゃなれねぇよ!? ただのエルフだし、それに、いつか世界中を旅してぇって思ってっし!!」
『ふむ。ならばなおさら神になった方がいいと思うが?』
「え?」

ヴェリウスとアルフォンス君の会話を聞きながらロードを見れば、興味がないのか私を愛しそうに見ていた。

「ロードサン、そんな慈愛溢れる瞳で見つめられましても…」
「慈愛じゃねぇ。欲情した目で見つめてる」
「それ余計ダメなやつだよね」

身体を触ってくるのでバシバシロードの手を叩いて攻防を繰り広げていれば、ヴェリウス達の話が聞こえてくる。

『エルフは今や幻の種族。御主が人間のまま旅をすればその珍しさから狩られるのがオチだろう。しかし、神ならばその心配はない』
「いやいや、神は旅なんてしねぇだろ!? あそこで下界を見下ろして守護やら加護やら与えてんじゃねぇのかよ!?」

アルフォンス君は天空神殿を指差してもっともな事を言っている。私も知り合いの神以外の行動はよく知らないが、アルフォンス君の言っている事と変わらないイメージを持っている。

『そんな神もいるが、旅をしている神もいる。皆それぞれ好き勝手に生きておるぞ。与えられた仕事はきちんとこなしているがな』
「マジかよ…」

ヴェリウスの話を聞いて心が神に傾いているアルフォンス君。チョロいな。

『その証拠に、神王様は北の国に他神を連れて旅に出られていたし、その前はバイリン国にも出向かれている。さらにルマンド王国にもな』

ヴェリウスがこっちを見てくるので首を傾げた。

「!? し…んおう、様かよ…」
『御主は分かっていたのだろう?』
「…確かに、アイツ…あの御方だけ、キラキラして視えたけど…っだからって“神王様”だなんて思いもしなかったっつーか、大体“神王様”は御隠れになってるって聞いてっし!」

アルフォンス君までこっちを見てきたので、ロードが私の姿を見せないように隠した。引き続きヤキモチを妬いているようだ。

「ロードはヤキモチ妬きだねぇ」
「ったりめぇだろうが。他の男にジロジロつがいを見せたがる奴ぁいねぇよ」

アルフォンス君は私に対して邪な思いは一切無いだろうに、ロードはそれでもダメらしい。やはりヤンキーはヤクザからしたら目に付くのだろうか。

『しかし、御主の目の前におわす御方は間違いなく神王様である。“視える”のだからすぐに分かるだろう』
「そりゃ今までキラキラしてる奴なんて見た事ねぇけど、突然そんな事言われても困るってのっ せ、精霊かなとは思ってたけどよ…」
『ほう、神王様を精霊などと勘違いしておったとはな…何処かの馬鹿と同じか』

そういえばロードも出会った時にそんな事言ってたっけ?

「せ、精霊はエルフよりも綺麗だって聞いてたから…キラキラして、綺麗だと思って…」

え? アルフォンス君、今エルフより綺麗って言った?

「……あのガキ…っっ 今すぐ消す」

ロードの顔が悪鬼化してるんですけどォォォ!?

「ろろろろ、ロードさぁん!? あれは多分神王の力がキラキラしてたから綺麗って事だよ!? そんな悪鬼化する程の事じゃないよっ」

身体から黒いオーラを出し始めたロードに落ち着いてと繰り返すが一向にオーラは収まらない。むしろ床にドライアイスのように広がっていく事から、オーラではなく邪悪な暗黒闘気か何かだと察する。

「ヴェリウスーー!!」

止まらないロードの暴走に、ヴェリえもんを呼ぶ羽目になったが、アルフォンス君のエルフ神引き継ぎは、正気に戻ったおじいちゃん神が何の問題もなく終わらせたのである。
後日、新たなエルフ族の神の誕生に祝詞をあげさせられたのだが、またもやロードが悪鬼となり暴走してしまったのはご愛嬌だろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【ーー…エルフ族の引っ越しにに新たなエルフ族の神の誕生…随分と盛り沢山だねぇ…で、“例の人族の神”は“あの方”に対してどう接していたんだい? ルーベンス】
「……エルフ族の引っ越しを共にされておりましたが…」
【そう…引っ越しを……っ たかがエルフの引っ越しを、“あの方”にに手伝わせていたのかっ あの“人族の神”は! 僕のっ 僕の“あの方”に…!!】
「……」
【ルーベンス!! お前は引き続き“人族の神”を監視しろ!! くれぐれも神獣にバレないようにな!!】
「……はっ」
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...