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第四章
嵐の予感? 死んだ目と恋心?
しおりを挟む巨大芋虫をジュリアス君が食し、阿鼻叫喚だった部屋はアルフォンス君の登場により終息する。
「おい、客人に“モピットの幼虫”なんて出すんじゃねぇよ。いくらご馳走っつってもキメェだろうが!! このネエチャン達の叫び声がうるっせぇんだよ!」
口は悪いが意外と女心の分かるアルフォンス君は“モピットの幼虫”とかいう芋虫料理を下げてくれた。
「オメェらもエルフなめてっからこんな目に合うんだよっ嫌なら嫌って言えや!!」
「あ、ハイ。すいません」
「チッ」
謝ったら舌打ちされた。
「みーちゃん、この子みーちゃんの事好きなんじゃない?」
トモコがバカな事を言ってくるので元々死んでいる目がさらに死んだ。
今舌打ちされたの見たよね。
「みーちゃんって昔っから動物とヤンキーとおじいちゃんにモテてたし」
「動物は寄って来たけど、ヤンキーは従兄がシメてただけだし、おじいちゃんとは不思議と話があっただけだろうが」
「これは嵐の予感…」
ニヤニヤしているトモコを小突き、ソファに腰かける。
その間もアルフォンス君はヤンキー座りで睨みをきかせていた。
「お待たせ致しました」
一時間後、デリキャットさんが私達の居る部屋に直接やって来た。後ろにはギルフォードさんとキングデリキャットさんに遣えている2人も一緒だった。しかしドリーさんとテリーさんの姿は見えない。
「アルフォンス、お前はもう戻って大丈夫だよ」
コソッとキングデリキャットのナイトの1人がアルフォンス君に言えば、「自分、コイツらの監視役なんでここにいるっス」と言って頑なに部屋から出ていこうとはしなかった。
まだ怪しまれているようだ。
「アルフォンス、これから大事な話があるんだ。だから…」
「…わかったっス。…エルフなめられねぇように頼んマス」
アルフォンス君はそう言い残して部屋から出ていったのだ。
彼が出て部屋の扉が閉まった途端、私達のパーティー以外の全員が土下座した。
エルフは土下座の文化を持っているのだろうか。
そんな土下座をしているエルフの前にまずショコラが出て言い放った。
「移動する決意はしましたか~?」
いや、私から何の説明もしていないのにそれ言っちゃうの? ショコラちゃん。
「無論、神々からの要請であるならば我々が拒否する事など有り得ません」
デリキャットさんが何かを言おうと口を開いたが、横からギルフォードさんがハッキリした声で答えた為、鯉のように開いた口をパクパクとして諦めたのか一文字に結んだ。
ギルフォードさんの答えにショコラと、げてもの食いのジュリアス君は満足そうに頷きトモコは首を傾げた。
「あのさ、いくら神からの要請でも嫌なら断って良いと思う。それに、村の皆の要望は聞かなくていいの?」
トモコの言葉にうんうんと頷けば、デリキャットさんが
「申し訳ありません。これから皆の意見を聞こうと思っております。もうしばらくお待たせしてしまいますが宜しいでしょうか」
と聞いてきたので頷いた。
どうやら先程の答えはギルフォードさんが勝手に言った言葉のようだ。その証拠にデリキャットさんはギルフォードさんの膝を密かにつねっている。口もパクパクしていたしね。
ギルフォードさんは涙目だ。
「デリキャットさん、皆の意見を聞いたら教えてくれるかな」
「かしこまりました。それではもうしばらくお待ち下さい」
デリキャットさんが行きますよ、とギルフォードさん達3人を連れ部屋を出ると、私達はまたそれぞれの過ごしやすい場所に座る。
「主様~よろしいのですかぁ~?」
「うん。時間はたっぷりあるし、しばらくゆっくりしてようか」
柔らかなショコラの髪を撫で、デリキャットさん達が戻って来るのを待った。
一から十まで完全にデリキャットさんに任せてしまっているが、それはもう、キングデリキャットだった彼の宿命なのだと思って欲しい。決して面倒だからではない。
私達がそんな風にゆったりしている間に、ロードとヴェリウスがルーベンスさんの事を調査していたなんて、夢にも思っていなかったのだ。
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ヴェリウス視点
ミヤビ様達が北の国に旅立った後、ルーベンス・タッカード・ルーテルを見張らせておいた精霊と連絡をとった。
精霊達曰く動きはないようだが、私は奴を信用出来ずにいた。
ミヤビ様は何故か父のように思っているようだが、奴の言動や行動の端々に感じられる違和感がどうにも拭いきれぬのだ。
ミヤビ様をお守りする為にも、私がしっかりせねばなるまい。
ロードがやっと鬼神へと進化してくれたおかげで守りは堅固となったが安心は出来ぬからな。
引き続き精霊達にはルーベンス・タッカード・ルーテルを見張るように言いつけておいたが……私もミヤビ様と共に北の国へ行けば良かったと、旅立ったメンバーを思い返し後悔しながら影へと潜ったのだ。
今はただ、大切な御方を守る為に行動せねばとーー…
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