異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第四章

え? 王様?

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「あの……彼らは何故倒れているのでしょうか?」

今まで気を失っていたデリキャットさんの疑問ももっともである。
ショコラとジュリアス君の殺気にあてられた3人は、未だ目覚める事もなく地面に直接寝かされている。
あんな綺麗な髪が起きたら土だらけなのだろう。なんならアリとか団子虫とか絡まってるかもしれない。

「奴らはあろう事か、神王様に向かって矢を放ったんだ」

まだ怒っているらしいジュリアス君がそう言って寝ている3人を睨む。が、ちょっと言わせていただきたい。
あれは私に向かって攻撃したわけではない。私達全員に向かって警告する為の矢を放ったのだ。

「何という愚かな事を…っ」

昔の少女マンガのショックを受けた時のような顔をして、おののいているデリキャットさんは、またもやぶっ倒れそうな蒼白な顔色をしている。

「このデリキャット、愚かなエルフ族の罪をこの身に全て受け腹をかっさばきます!! 申し訳ございませんでした!!」

土下座の上、頭を地面に擦り付けているデリキャットさんはどこぞの侍のような事を言い出した。

「貴方一人の命だけで許せる程軽い罪じゃないですよ~。エルフ族は全滅です~」

ショコラちゃんんんん!? 全滅です~って可愛い顔して何言ってるの!?

「申し訳ございません!! どうかっどうか…っこの者達と私の命だけでお許しを…っ」

デリキャットさん…何気に寝てる人の命まで捧げたんだけど。

「こらこら、デリキャットさんをからかってないで寝ている3人を起こそうか」

ここは冗談という事にするしかないと、そんな声かけをしたのだがショコラもジュリアス君も納得いかないような顔をしている。

「エルフ族を浮島に住まわす事に成功したら、ご褒美にバーベキューパーティーしようと思ってたんだけどなぁ…」

ボソリと呟けば、「バーベキュー!?」と2人だけでなくトモコまでもが食い付いたのだ。

「ショコラはお肉がいーーーっぱい食べたいですぅ~!!」
「肉!? オレも!! コイツよりももっといーーーっぱい食いてぇ!!」
「豚汁とか焼おにぎりとかも作ろう!? ソーセージも!!」

などと騒ぐ3人に目もくれず引き続き土下座で額を地面に擦り付けたまま固まっているデリキャットさんは、クレーム処理のスペシャリストのような風格さえ漂っている。

「デリキャットさん、顔を上げて下さい。この子達はちょっと大人をからかう癖があるんです。神とは言え子供なので…だから気になさらなくていいんですよ」
「からかい…? あ、の…エルフ族は、お許しいただけるのでしょうか?」
「許すも何も、特に攻撃はされていませんし」

チワワのように潤んだ瞳で震えているデリキャットさんにそう笑いかければ、ホッとしたように微笑み返してくれた。

ショコラ達の頭はすでにバーベキュー一色で此方を気にしている様子はないので、私への忠誠心がバーベキューに負けた事を知る。

「さ、これからデリキャットさんにエルフ族を説得してもらわないといけませんから、立ち上がって額に張り付いた土を落として下さい」
「は、はいっ」

サッと立ち上がったデリキャットさんは額についている土を恥ずかしそうに落としている。
やはり男性だけあって中性的で
華奢でも180センチはあるので大きく感じる。

この世界は男女共に身長が高い上、身体もがっしりしているので私やトモコは小柄に見えるのだ。160センチはあるのに…。
ちなみに見た目10歳位のショコラの身長は150センチ近くあるが、この世界からすれば小柄だろう。

「ぅ…っ」

身長について考えを巡らせていると、寝ていた3人がどうやら目を覚ましたらしい。
バーベキュー一色だったショコラ達も警戒して私のそばへとやって来た。

「ぐ…っな、んだこれは…!? 身体が動かないっ」
「一体何が!?」
「クソッ」

身体を動かそうともがいているが、硬化させているので動けないでいる為恐怖が増しているようだ。
私達に気付いた3人は顔を真っ青にし、それでもキッと睨みつけてきた。

「まぁまぁ、そんなに警戒しないで。敵ではありませんから」

と声を掛けたが、

「どう考えても敵だろ!? この状況で寝惚けた事言ってんじゃねぇぞ!?」

とこの中ではリーダーっぽいエルフに返された。
こんなに美人なのにヤンキーみたいな喋り方で驚きである。

「っ何という口の利き方をしているのだ!! この愚か者共!!」

そんなヤンキーエルフに激怒したのは、他でもない。いつも穏やかでニコニコしているチワワエルフのデリキャットさんだった。

「!? あ、あなたは…っ」
「その銀髪…っ」
「まさか、王様!?」



え? 王様??
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