217 / 587
第四章
え? 王様?
しおりを挟む「あの……彼らは何故倒れているのでしょうか?」
今まで気を失っていたデリキャットさんの疑問ももっともである。
ショコラとジュリアス君の殺気にあてられた3人は、未だ目覚める事もなく地面に直接寝かされている。
あんな綺麗な髪が起きたら土だらけなのだろう。なんならアリとか団子虫とか絡まってるかもしれない。
「奴らはあろう事か、神王様に向かって矢を放ったんだ」
まだ怒っているらしいジュリアス君がそう言って寝ている3人を睨む。が、ちょっと言わせていただきたい。
あれは私に向かって攻撃したわけではない。私達全員に向かって警告する為の矢を放ったのだ。
「何という愚かな事を…っ」
昔の少女マンガのショックを受けた時のような顔をして、おののいているデリキャットさんは、またもやぶっ倒れそうな蒼白な顔色をしている。
「このデリキャット、愚かなエルフ族の罪をこの身に全て受け腹をかっさばきます!! 申し訳ございませんでした!!」
土下座の上、頭を地面に擦り付けているデリキャットさんはどこぞの侍のような事を言い出した。
「貴方一人の命だけで許せる程軽い罪じゃないですよ~。エルフ族は全滅です~」
ショコラちゃんんんん!? 全滅です~って可愛い顔して何言ってるの!?
「申し訳ございません!! どうかっどうか…っこの者達と私の命だけでお許しを…っ」
デリキャットさん…何気に寝てる人の命まで捧げたんだけど。
「こらこら、デリキャットさんをからかってないで寝ている3人を起こそうか」
ここは冗談という事にするしかないと、そんな声かけをしたのだがショコラもジュリアス君も納得いかないような顔をしている。
「エルフ族を浮島に住まわす事に成功したら、ご褒美にバーベキューパーティーしようと思ってたんだけどなぁ…」
ボソリと呟けば、「バーベキュー!?」と2人だけでなくトモコまでもが食い付いたのだ。
「ショコラはお肉がいーーーっぱい食べたいですぅ~!!」
「肉!? オレも!! コイツよりももっといーーーっぱい食いてぇ!!」
「豚汁とか焼おにぎりとかも作ろう!? ソーセージも!!」
などと騒ぐ3人に目もくれず引き続き土下座で額を地面に擦り付けたまま固まっているデリキャットさんは、クレーム処理のスペシャリストのような風格さえ漂っている。
「デリキャットさん、顔を上げて下さい。この子達はちょっと大人をからかう癖があるんです。神とは言え子供なので…だから気になさらなくていいんですよ」
「からかい…? あ、の…エルフ族は、お許しいただけるのでしょうか?」
「許すも何も、特に攻撃はされていませんし」
チワワのように潤んだ瞳で震えているデリキャットさんにそう笑いかければ、ホッとしたように微笑み返してくれた。
ショコラ達の頭はすでにバーベキュー一色で此方を気にしている様子はないので、私への忠誠心がバーベキューに負けた事を知る。
「さ、これからデリキャットさんにエルフ族を説得してもらわないといけませんから、立ち上がって額に張り付いた土を落として下さい」
「は、はいっ」
サッと立ち上がったデリキャットさんは額についている土を恥ずかしそうに落としている。
やはり男性だけあって中性的で
華奢でも180センチはあるので大きく感じる。
この世界は男女共に身長が高い上、身体もがっしりしているので私やトモコは小柄に見えるのだ。160センチはあるのに…。
ちなみに見た目10歳位のショコラの身長は150センチ近くあるが、この世界からすれば小柄だろう。
「ぅ…っ」
身長について考えを巡らせていると、寝ていた3人がどうやら目を覚ましたらしい。
バーベキュー一色だったショコラ達も警戒して私のそばへとやって来た。
「ぐ…っな、んだこれは…!? 身体が動かないっ」
「一体何が!?」
「クソッ」
身体を動かそうともがいているが、硬化させているので動けないでいる為恐怖が増しているようだ。
私達に気付いた3人は顔を真っ青にし、それでもキッと睨みつけてきた。
「まぁまぁ、そんなに警戒しないで。敵ではありませんから」
と声を掛けたが、
「どう考えても敵だろ!? この状況で寝惚けた事言ってんじゃねぇぞ!?」
とこの中ではリーダーっぽいエルフに返された。
こんなに美人なのにヤンキーみたいな喋り方で驚きである。
「っ何という口の利き方をしているのだ!! この愚か者共!!」
そんなヤンキーエルフに激怒したのは、他でもない。いつも穏やかでニコニコしているチワワエルフのデリキャットさんだった。
「!? あ、あなたは…っ」
「その銀髪…っ」
「まさか、王様!?」
え? 王様??
22
人生初の作品です。皆様に楽しんで頂けるものを作っていきたいと思っています。宜しくお願い致します。
お気に入りに追加
2,575
あなたにおすすめの小説

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる