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第四章
地下帝国? までの道程
しおりを挟む少し歩くと言われてから約1時間。何も無かった雪の平原にポツポツと50メートルから100メートル位の間隔で木々を目にするようになってきた。
外国あるあるのこの距離感は、異世界でも適応されたらしい。
「神王様、ここです!!」
不自然に盛り上った小山を指差し駆けていく魔神の少年を、元気だな~と思いながら見送り、身体は疲れていないが精神的に疲れた私はゆっくりと小山へ向かった。
雪に埋もれ僅かにのぞいている穴は高さ50センチ、幅は1メートルもない。入り口のほとんどが埋まっている状態であった。
「ねぇ、これ洞窟というか熊とかが冬眠する洞穴に見えるんだけど…」
「奇遇だねぇみーちゃん。私にもそう見えるよ」
「「……」」
二人顔を見合わせてどうする? と目と目で会話をしていると、ショコラが積もった雪に近付き拳を繰り出したのだ。
パンッ
乾いた音と共に雪が飛散して視界を真っ白に染め上げた。それも一瞬で、日に照らされた雪はキラキラと光を反射させ地面に落ちた。
「「え?」」
洞窟らしき入り口を覆い隠していた雪はすっかり消え果て、高さ150センチ、幅180センチ程の洞窟(?)の入り口が姿を現したのだ。
「主様~、邪魔な雪はショコラが退かしましたので入れますよ~」
熊が居そうな洞穴なのであまり入りたくないんだけど……等とは言えず、可愛いショコラの笑顔に頷く。
「みーちゃん、本当にここに入るの? 熊に襲われるか、コウモリに襲われるか、虫に遭遇するかのどれかだよ?」
さっきまで冒険だぁ!! とはしゃいでいたのにこの嫌そうな顔…洞窟というより洞穴に入るのを躊躇うのは分かるが、先程とはうってかわってテンションの下がっているトモコの腕を掴む。
「見て、あのショコラの笑顔。ここはもう入るしかないんだよ」
「ショコたん…何て誇らしそうなんだ…っ」
そう、ショコラは私達の役に立てたと嬉しそうにニコニコしているのだ。そんな彼女に洞穴へ入りたくないとは言えない。しかも魔神の少年までワクワクとした顔で洞穴に足を踏み入れこちらを見ている。
「行くしかないんだね~…」
虫類が苦手なトモコは虫除けの結界を自分に張り、引きつった表情でそう行って一歩を踏み出した。
私も勿論虫除けの結界を張り後に続く。
「明かりを灯します!」
暗い洞穴の中で魔神の少年はそう言って光の玉をいくつか前方に向かって投げる。
すると光の玉は洞穴の壁くっつき、洞穴を照らしだしたのだ。
「明るくなったね~…」
びくびくしながら中を覗き込むトモコは私の腕を離さない。
明るくなった洞穴には熊の姿は勿論、コウモリも虫すら居なかった。しかも5メートル程先で行き止まりになっておりそれ以上は進めないようだ。
「行き止まりになってるみたい…何か拍子抜けしちゃったね~」
洞穴を覗いていたトモコがそう言って胸を撫で下ろしている。
「いや、そうでもないぜ」
ニヤリと笑った魔神の少年は、そのまま穴の奥まで進むと「やっぱりな」と呟いた。そして…
「神王様! 階段を発見しました!!」
キラキラした瞳でそう告げたのだ。
◇◇◇
魔神の少年が出した光の玉に照らされながら、階段を一段一段下っていく。
洞穴の奥で見つけた地下へ降りる階段はどう考えても人工的に作られたもので、地下に人の反応があるという探索魔法に間違いはなかったようだ。
私達は魔神の少年を先頭に、ショコラ、私、デリキャットさん、トモコの順で一列に並び降りていく。
この階段は日本人の平均的な成人男性1.5人分位の幅しかないのだ。ロードが居ればきっと狭く感じた事だろう。
「何だか冒険って感じでワクワクするね!」
「おや? トモコ様はダンジョンには潜られた事がないのですか?」
トモコの言葉に反応したデリキャットさんがそう返すと、トモコは“ダンジョン”という言葉に食いついた。
「“ダンジョン”!? まだ行った事ないけど行きたいとは思ってる!! デリカットさんダンジョンがどこにあるか知ってるの!?」
デリカットではなくデリキャットだ。
違う人になるからその間違いは止めなさい。
「はい。昔はよく潜っていましたから。今はその場所にあるか分かりませんが、200年前は世界中にいくつか存在しました」
名前を間違えるという失礼さなのに、デリキャットさんは気にしていないように穏やかに微笑みながら丁寧に答えている。
「200年前かぁ~。やっぱりダンジョンも魔素の枯渇で減っちゃったのかなぁ…あ、でも魔素が満ちたからまた出来てるかもっ」
「そうですね」
トモコを優しい瞳で見ながら相槌をうつデリキャットさんはさすが200歳超えである。
エルフは一体いくつまで生きるのだろうか。
「神王様! もうすぐ地下に到着します!!」
先頭の魔神の少年から声がかかり前を向けば、確かに光の玉とは違う明かりが見えた。
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