異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第四章

ジュリアスの災難とエルフの決意

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『ジュリアス、お主の神域のそばにある山の一つだが、ロードが吹き飛ばしたぞ』

言ったァァァァ!!!!
ヴェリウスがあっさりバラしちゃったよ!? ヴェリーさん軽すぎない? 魔神の少年ポカーンとしてるけど!?

「…は?」

ほら理解出来てない。世間話みたいに軽く言うから分かってないんだよ。

「おう、悪ぃな。怒りに任せてつい」

師匠も師匠なら弟子も弟子だった!!
他人の土地吹き飛ばしておいて「悪ぃな」で済まそうとするか!?

「あ、いや、え?」

魔神の少年はあまりにも軽い謝罪だから戸惑っている。
しかも段々瞳が潤んできているじゃないか。

「みーちゃん、つがいがやっちゃった事はみーちゃんが責任持って元に戻さなきゃ」
「えぇ!?」
「だってロードさんはみーちゃんの旦那さんでしょ~。旦那さんのやっちゃった事の尻拭いは奥様の役目でしょ」

めちゃくちゃな事を言うトモコに開いた口が塞がらない。

そして何故か、私が山を元の状態に戻す事を約束させられたのだった。

「良かったねジュリちゃん。みーちゃんが元通りにしてくれるって」
『良かったなジュリアス』
「あ、ああ??」

魔神の少年は理解出来ないまま皆に納得させられていたが、それで良かったのだろうか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



エルフ視点


100年前、バイリン国の王弟に捕まった私は呪いの魔道具をこの身に付けられ魔力を奪われたあげく、汚された。
当然助けがくる事はなく、このまま朽ち果てるのかと、それならば早く死んでしまいたいとこの100年ずっと思い続けてきた。
しかし、そんな闇の中から私を救いだしてくれたのは…他の誰でもない、神々であった。

あの地獄のような場所から連れて来られたこの場所は、正反対の天国のような所だった。
手の届きそうな空は何処までも広がり、足元を見れば水鏡に空が写し出されまるで自身が空を飛んでいるような感覚に陥る。
そして繊細な装飾を施された建築物の数々は、高価な美術品のように美しく並び、目を楽しませる。

私はその建物の一つに連れて来られたのだが、何とも立派すぎて恐縮してしまう。

「お目覚めになられましたか」

豪奢なベッドから降り、呆然と窓の外を眺めていると鈴の鳴るような可憐な声が後ろからかけられた。

「貴女は…」

昨日ここに連れてこられて、私が意識を失う前までお世話をして下さっていた女性だと気付き居ずまいを正す。

「お身体の調子はいかがでしょうか」
「は、はい。昨日頂いた薬のおかげで傷も無くなり楽になりました。有り難うございます」

美しい女性を前に緊張しながらそう答えれば、ホッとした表情で良かったと呟かれてドキリとした。

「我が君からは、ゆるりとお休み下さいとの伝言です。どうか無理はなさらぬよう…」
「何と…私のような者にそのようなお心遣いをいただけるなど…っ」

神々は何と慈悲深いのか…っ
感動していれば、女性はどこから出したのか、机に真っ白なテーブルクロスを敷き、テキパキと食器やカトラリーを並べていった。完璧なテーブルセッティングだった。

一度扉の外へ出ると、すぐ料理を乗せたワゴンと共にやって来て、私に席につくよう促したのだ。

戸惑いながらも案内されるがまま席へつくと、湯気の出ている温かなスープを目の前に置かれた。
温かい食事など100年ぶりで、口を開けたまま呆けていれば「どうぞ御召し上がりください」と声がかかりつい女性を見上げてしまった。

「あの…本当に頂いてもいいのでしょうか?」
「勿論でございます」

給仕までしてくれる女性に恐縮しながら、恐る恐る口に含めば、じわりと広がる優しい味と温かさに涙がこぼれる。

「ああ…とても美味しいです…」
「それはようございました」

優しく微笑まれ、何故だかとても恥ずかしくて顔が熱くなってしまった。

「まだ沢山ございますので、お好きなだけ御召し上がりください」
「あ、りがとう、ございますっ」

あふれる涙は依然として止まらない上、美しい女性の前で泣いてしまって恥ずかしくて堪らないが、何故だか心はふんわりと温かくなったのだ。


死んでしまいたいとこぼした私を叱咤し、生きる意味を与えて下さった神々には感謝してもしつくせないが、これから私はあの方々の為に在ろうと、そう強く思ったのだった。
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