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第四章
珍獣の村、どうなった?
しおりを挟むエルフを天空神殿に連れて来てそのお世話を珍獣3人娘に任せると、早速お風呂に連れて行かれたようだ。
エルフ、お風呂入ってなさそうだもんね…と思いながら見送り、天空神殿での自身の部屋に戻ればロードがすでにスタンバっていた。
「ロードさん、何をされているのデスカ?」
「ミヤビと一緒に過ごす為の布団を敷いたんだが何かおかしいか?」
「過ごすって何!? 布団は寝る為にある物で、過ごす為の物じゃないからね!? 大体部屋の真ん中にそんな大きな布団を一組だけ敷くっておかしいよね!?」
「おかしくねぇよ。俺達まだ“蜜月中”だぜ。むしろ布団のねぇ所に居るのがおかしいんだろうがよ」
ロードはそうハッキリ答えてから、私の手を取り自身の方へ引き寄せた。
この大きな人に軽くでも引っ張られると、自分の身体が綿にでもなったかのようにふわりと浮かび、簡単に腕の中に閉じ込められるのだ。
「ミヤビ」
ちゅっと音をたてながら髪や額、こめかみや鼻の頭等に次々とキスを落とすロードに抵抗は無駄だと諦めた。
大人しくなった私を布団の上に組み敷くと、上機嫌に微笑んで優しく唇を啄んでくる。
嫌ではない…むしろ好きな口付けにうっとりとしてしまう。
「ん…ロード、もう眠い…」
心地良くて眠くなってきた為、呟けば「そりゃないぜ」と身体をまさぐってくるのでくすぐったくて笑ってしまった。
「ミヤビ、もうちょい付き合え」
と良い声で囁いてくるロードは、色気があってゾクリと肌が粟立った。
『ーー…近いうちにバイリン国はフォルプローム国に侵略されるだろう』
「…だろうな」
『お主はそれで良いのか? このままでは戦争が起きるやも知れぬぞ』
「それを阻止する為に、フォルプロームに諜報部隊を送ったんだぜぇ。何とかなんだろ」
『フンッまぁ我らには関係のない事だが、ミヤビ様を悲しませるような事はするでないぞ』
「ったりめぇだ。つがいを悲しませるような事ぁしねぇよ」
月に煌々と照らされた日本庭園をヴェリウスと眺めながら酒を傾けていたロードは、疲れて眠ってしまった自身のつがいのいる部屋を優しい瞳で見つめ、立ち上がると真上にある大きな月に向かってぐぐっと腕を伸ばし、「さてと、もうひと踏ん張りしますかね~」と言いながらその部屋に向かおうとした。
『馬鹿者。ミヤビ様に無茶をさせるでない!!』
と声を張り上げたヴェリウスは、ロードを足蹴にして庭に落とし、ミヤビの眠る部屋へと入り込み障子をピシャリと閉めたのだった。
「え、ちょっ、おい! テメェふざけんなよ!? 開けろっそこは俺とミヤビの寝室だろうが!!」
ミヤビとの営みはミヤビが眠ってしまった事で終わってしまい、トイレに行く為に廊下へ出た所で庭を散歩していたヴェリウスとばったり出会って飲み比べに発展したのが運の尽きだった。
ロードはそのまま部屋を追い出され、しばらく部屋の前でガタガタしていたが、結局隣の部屋で泣き寝入りする事になったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん…ふわふわ…」
隣で寝ているはずのロードがいやに毛深く柔らかくなっている事に気付き、目が覚めた。
『おはようございます。ミヤビ様』
降ってきた声に驚いてパッチリ目を開く。
「ヴェリウス?」
どうやら私は、ヴェリウスの首もとに顔を埋めて眠っていたらしい。
「もふもふして気持ち良い…幸せ」
すりすりと頬をふわふわの毛にそわせ目を閉じれば、
『ミヤビ様、朝ですよ』
とクスクス笑われながら起こされたのだ。
最近は硬い筋肉に包まれての起床だったので、ここは天国かと思ってしまった。
朝の支度をするのが面倒だったので、力を使って一瞬で支度すればヴェリウスに呆れた目で見られた。
「ミヤビぃ!! テメェ浮気かコラァッ」
部屋を出た途端抱きしめられて、そんな言葉を投げ掛けられた。
「ロード、何言ってるの?」
「オメェが幸せそうな顔して部屋から出てくるからだろうが!!」
何を言ってるんだこの男は。
「そういえば、今日はヴェリウスに起こされたよ。ロードってばいつの間にか部屋から出てたんだね。熟睡してて全然気付かなかったよ」
ヘラヘラ笑っていれば、トモコがバタバタと廊下を走ってきた。
「みーちゃんおっはよー!! 今日は北の国に行くんだよね~?」
今日!?
そうなの!? とヴェリウスを見ればくぅ~んと鳴いて首を傾げる。
「トモコ、さすがに昨日の今日は無理がない? エルフだってまだ休ませてあげた方がいいと思うけど」
「え~? じゃあ今日は村を見に行く? そろそろ1週間経つし」
チラリとロードを見れば、複雑そうな表情をしている。
やはり何も言わずに村を作り出した事に思うところがあるらしい。
「そうだね。ロードは…「行くに決まってんだろ」あ、うん」
という事で、村作りの様子を見に行く事になりました。
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