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第三章
神王に付けられた首輪
しおりを挟む「一番弱そうだが、ここに居るんだ。貴様も神だろう?」
ニヤニヤとそんな事を言う王太子に、2人と1匹の殺気が膨れ上がった。
「ククッその首輪は力を奪うだけじゃない。隷属の呪いも付与されている。貴様らの仲間は既に我らの手中というわけだ!!」
殺気をぶつける2人と1匹にそう言い放つと今度は私を見た後トモコを見て、
「まぁ、その首輪はそっちの女神に付ければ良かったと後悔しているがなぁ」
などとのたまいやがったのだ。
平凡な見た目で悪ぅございましたね!!
って、あれ…? この首輪本当に呪い発動してる??
付けられてるけど力が奪われた感じもしないし、命令を聞かないとっていう思いも一切沸かないんだが。
ただの首輪です。
そういえば、あのラップが巻かれていた鎖を触っても平気だったし、皆が言う禍々しい力も感じなかったからなぁ…。
ていうか、この首輪にもラップが巻かれているから、肌に張りつく感じは不快ではある。
「、…さねぇ」
そんな事を思っている私の横で、ロードが何やら呟いている。
え? 何、何て言った?
「テメェら…、さねぇ…っ絶対ぇ許さねぇ…っ」
鬼が、スーパー○イヤゴリラが…怒りで進化しようとしている!?
ロードの周りはバチバチと静電気の火花が散り、地面がバキバキと割れて亀裂が入っている。
ロードの真っ黒な角は更に成長してねじり巻きされたようにうねり、もう見た目がタロットカードに出てくるような悪魔である。黒い息を吐きそうだ。
王太子はその見た目に「ヒッ」と声を上げ後退りしたが、何とか奮起し、私に言った。
「その男神を止めろ!!」
無理じゃない? そんな無茶振りされても、例え操られていたって無理だと断ったに違いない。
だって、王太子のその言葉を聞いたロードの顔…この世のものとは思えない位怖いんですけど。
「どうした!? 何故言う事を聞かない!?」
全く動かない私に焦れた王太子は叫んでくるが、空気を読んでここは操られてますというていを装った方がいいのだろうか?
「みーちゃん?」
段々怪しみ出しているのか、トモコが恐る恐る顔を覗き込んできた。
「…わ、ワタシニアンナオニガトメラレルワケナイダロ」
操られた風で喋ってみたがどうだろうか。
「みーちゃん……」
速攻でバレた。
「いや、だってコレただの首輪だし。ムリムリ。私そういう趣味ないんで。ラップを巻かれた首輪とかいらないんで」
バレたので空気を読む必要も無くなった為、ラップをペリペリ剥がしてから首輪を普通に取れば、ぎょっとした顔の王太子と目が合った。
「お返しします」
と首輪を渡そうとすれば、ぷるぷると震え出したので不思議に思いトモコを見る。
「みーちゃん、そこは首輪を普通に返すんじゃなくて叩きつけるシーンだったんじゃない?」
声を潜めてそうアドバイスしてきたので、成る程と納得する。隣でヴェリウスが「きゅ~ん」と残念そうに鳴いているが、気にしない。
「こんなもんいらへんわ!!」
take2である。何故下手くそな関西弁なのかというと、何となくだ。
首輪を王太子に投げ返すと、王太子は余計に身体を震わせ、バッと顔を上げた。
「何故だ!? 神をも只人にする呪いの魔道具が…っ何故効かない!?」
相当動揺しているようで、恐怖に顔が歪んでいる。
しかし私は王太子に注目している暇など無かったのだ。
そう、あの悪魔…ゴホンッ スーパーサイ○ゴリラであるロードが私の下手くそな芝居に気付かず暗黒騎士の鎧を纏ってしまったのである。
黒い稲妻が落ち、竜巻が起こり、どう考えても悪魔の誕生のようなそれにバイリン親子は2人して固まった。
黒い稲妻と竜巻で天井も壁も崩壊し、残ったのは今にも崩れそうな床のみである。
城の頂上に近い場所から見る景色はとても良い。遠くに山が見えるが、あれは魔神の少年が住んでいるそばにある山だろうか。
と、現実逃避したい程の光景が今目の前で繰り広げられている。
兜からはねじり巻きされた真っ黒な角がのぞき、コフー…コフー…と黒い(気がする)息が吐かれる。瞳は兜の中から鈍く光り、直視しただけで心臓が止まりそうだ。
トモコも私もあばばばばと互いに抱き合い震えている位だ。
「みーちゃん!! アレ止めないとこの国が滅びる!!」
「ワタシニアンナアクマガトメラレルワケナイダロ」
「もうその芝居しなくていいから止めてェェ!?」
「ムリムリムリムリ!!!!」
トモコの無茶振りにブンブン首を横に振っていれば、勇者が現れた。
「っ何という力…しかし私も息子も神の力を手に入れたのだ。2神と1神ならこちらの方が有利なのは間違いない…何を呆けているのだ!! 私の補助をしないか!!」
「は…はいっ」
そう、バイリン国王と王太子であった。
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