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第三章

動きが速すぎて常人では追いきれません!

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刃と刃が重なった瞬間、ギィィィンッという金属音に遅れて、ボコっと国王の足元が沈む。まるで国王の周りだけに何倍もの重力がかかったようだった。しかもそこから風圧が波紋のように発生して私達を襲う。 
周りに結界を張って事なきを得たが、何も無ければ風圧に飛ばされて壁に激突し即死だろう。ちなみにエルフも私のそばに転移させて結界で守っているので安心してほしい。

更に、沈んだ足元から亀裂が生まれ、それが何本も枝分かれして伸びてくる。
それを見た時、床が崩れるかもしれないと思ったのは私だけではないはずだ。

ギリギリと音をたてて交わっていた刃が、突然地面から生えた巨大な氷の棘に阻まれ離れる。
そう、バイリン国王が氷魔法を使ってロードを攻撃したのだ。
それをとっさに避けて足蹴にし、その反動を使って空中を一回転しながらこちらへと戻ってきたロードは、ドンッという重い音をたてて目の前に着地した。

あ、床が抜ける。と思ってしまったが仕方ない事だろう。

ロードは汗ひとつかいておらず、息も乱していないようだ。
それはバイリン国王も同じようで、ボロボロと崩れていく巨大な氷の棘をジャリっと踏み鳴らしながら一歩一歩近付いて来る。その表情には余裕の笑みが浮かんでいた。

「ククッやはり神とは、人間と比べ物にならない程力があるらしい」

3メートル程間を空けて歩みを止め、何が可笑しいのか笑い声を上げながら喋り始めたバイリン国王は、ロードを興味深そうに見ている。
そんなバイリン国王を、やはり無表情で見据え無言を貫くのは相当腹に据えかねているのだろう。

しかし、氷と雷はあまり相性がよくないかもしれない。純水は雷を通しにくいというし、氷は…しかも魔法で出した氷は、不純物がほとんど含まれないのだ。
そう考えると、魔法対決はしない方がいいかもしれない。

「次は私の番かな」

不敵な笑みを浮かべたバイリン国王がそう言葉を発し、氷の剣をフェンシングの突きをするようにロードに放ったのだ。
ロードはそれを双剣で受け止めると軌道を変え、上体が崩れた所に自身の剣を振り下ろす。
しかし、氷の盾を使って防いだバイリン国王がニヤリと笑ってロードの足元に斬りかかった。

双剣だった事が功を奏したのか、一方の剣でそれを防ぐともう一方を振り下ろす。しかし氷に弾かれ、砕かれた氷の欠片がキラキラと宙を舞った。

はっきり言おう。常人では目で追えない速さで動く2人をこれ以上解説するのは無理である。シュンッと消えてシュンッと現れて、ガキンッドンッ的な事を繰り返すドラゴンボー○的戦闘は、一般人から見れば何をしているのか全くわからないのだ。
だれかスロー再生出来るカメラを下さい。

そうこうしている内に部屋はもうぐちゃぐちゃでどんどん破壊されているわけで、なんなら天井には穴が開いて空が見えている。

「いや~風通しが良くなったね~」
「そうだね~」

等とトモコと話してると、ヴェリウスが「ガウッガウッ!!!!」と何事かと言わんばかりに吠えているのでそっちに注意を向ければ、バカ息子…王太子が私に向かって何かを投げつけてきていたのだ。
は私の首に巻き付き、トモコが「みーちゃん!!」と悲鳴を上げた。

「ミヤビ!!!?」

トモコの悲鳴に気付き駆け付けたロードが叫んだ。

そう、私の首には首輪が付けられており、それを気持ち悪い笑みを浮かべた王太子が見下ろしていたのだ。
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