異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第三章

奪われた神力

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「そう、対となる指輪はもう一つある…そして、ここにある“秘宝”とは呪いの魔道具の事だ」

私達が入ってきた扉とは反対側の壁が開いており、そこから現れたであろう何者かが、倒れているヴェリウスのそばでほの暗い影を落とす。

「ククク…ッ しかしまさか神の力を手に入れる事ができるとは、私にも運が向いてきたものだ」

そう呟いたのは、バイリン国の王太子がそっくりそのまま年を取ったような男であった。

男の足元はその言葉と共にパキリパキリと氷っていく。床に倒れているヴェリウスを巻き込んで。

「っヴェリウス!!!!」

駆け寄ろうとしてロードに止められる。
何で!? とロードを見上げれば、眉間にシワを寄せて唇を噛みしめ、ヴェリウスを見ていた。

「ヴェリウスの胴に巻き付けられた黒い鎖を見ろ…っ 呪いの魔道具だ」

ロードの言葉に、ヴェリウスの話しが甦る。
“神の力を奪い只人にする呪いの魔道具”

「最悪な事に、呪った相手の力を自身の力とする呪いまでかけていやがる」

鋭い眼光で男を睨んでいるロード。男はニヤリと笑ってとその口を開いた。



ヴェリウスの力を奪った男は、まだ結界を張っている私達の姿を視認出来ていたのだ。

ロードは私を背に隠し、雷を纏う。
警戒するよにバチッバチッと音を立て、髪の毛まで静電気で逆立ってきている。

「神が残り2人か…こちらの分が悪いが……」
「キャア!!」

トモコの悲鳴にハッとして振り向けば、いつの間にか自由になっていた王太子の足元に倒れ伏し、トモコの首にはヴェリウスと同じような黒い鎖が巻き付いていた。

「っトモコォォ!!!!」

ヴェリウスに続きトモコまで力を奪われたのだと理解する。

王太子はヴェリウスの力を奪った男に同じような不気味な笑みを浮かべると、

「父上、助かりました」

と言ったのだ。
やはり目の前にいる男が、バイリン国の国王…“フェン”だった。

「これで2対1。分が悪いのはそちらだな」

ニタリと笑い、ロードを見据えるその瞳はほの暗いさを湛えている。

「2対1だと…」

眉を潜めるロードは、私の事を数に入れていない事に疑問を感じているようだ。
そういえば、力を無意識に駄々もれさせていると言われてからもれないように気を付けているのだが、それで力を感じ取れないとか? もしくは見た目で判断されたか?

ヴェリウスとトモコの身体をそばに転移させながら様子を伺っていると、今度は王太子が喋りだした。

「もしかしてそこのエルフを頭数に入れているのか? ククッ神の力を手に入れた私達と、ただのエルフでは力の差は歴然だろう。頭数にも入らんだろうが」

トモコの力を手に入れて調子に乗っているのか、さっきまで怯えていたのが嘘のように、尊大な態度で見下してきている。

「…テメェら、神の力を手に入れたからってすぐに扱えると思ったら大間違いだぜぇ…それは人間にゃ過ぎたる力だ。身を滅ぼすのがオチだろうよ」

スーパーサ○ヤ人ロードがバチバチ音をたてながら威嚇する。時折雷が床や壁をえぐり、焦がしている様子を見て、今ロードに近付いた人間は感電死間違いないだろうと思う。

私はといえば、そばに転移させたヴェリウスとトモコに巻き付いている黒い鎖を見ている。
やはりこれも黒いラップが巻き付いているようだ。

勿論ペリペリと剥がしていくと、鎖は黒色から銀色へと変化し、剥がしたラップはフワリと消えていった。


「ぅう…」

しばらくして意識を取り戻したのか、トモコもヴェリウスもうっすらと目を開けた。
が、奪われた力は元には戻らないのか、ヴェリウスの大きさは未だに中型犬程で、あれほど艷めいていた毛並みは萎れてしまっているし、オーラにも輝きがない。トモコも、キラキラしていたオーラがなくなっている。

起き上がった1人と1匹からは、ジャラリと鎖が滑り落ちたが、力を奪った者達は、それにも気付かず薄ら笑いを浮かべてロードに注目していた。
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