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第三章
現れたのは…?
しおりを挟むエルフは魔力のコントロールが上手い一族らしい。
ヴェリウスによれば、植物の成長を促す魔法というのは相当の魔力コントロールを必要とするのだとか。
イメージするなら、魔力を精製してより澄んだものを量を調整して植物に与えるという事らしく、まず普通の人間は魔力を精製する作業ですら、魔法の勉強を何十年としている者でも難しいそうだ。
という事は、魔法の使える者が少ない今はそんな事を出来る人間は居ないも同然という事か。
『もう少しすれば、あのエルフも大昔のエルフと同じように植物の成長を促す魔法が使えるようになるやもしれませんね』
魔素が世界に満ちたからか、後10年もすれば大昔のように魔法が使える人間が増えるだろうという話だが、エルフもその頃には昔のように“緑の民”と呼ばれるようになっているかもしれない。
「そうだね」と頷きながら、頭を切り替える。
本来の目的であるエルフ奪還だが、私達は未だバイリン国の王宮の中に居るわけで、これでは目的を遂げたとは言えないのだ。
「さぁ、エルフを北の国へ連れて行「貴様ら…っ何者だ!! 何故呪いが解けている!?」」
私の言葉を遮り、怒鳴り声を上げたのは勿論ここにエルフを捕らえていた張本人様であった。
どんなでっぷりしたオッサンだろうと声の上がった方へ顔を向けると、意外や意外。
背の高い、細マッチョなイケメン青年であった。
「あれ? 思ってた人と違うんだけど」
「奇遇だね~。私もイメージは、小太りメタボで短足おチビなオッサンだと思ってたよ~」
さすが心友。同じ事を考えていたらしいトモコと共にその細マッチョなイケメンを凝視してしまう。
髪の色は青みがかった黒。短く切り揃えられており、男らしい爽やかさがある。眉はきりりとしており、瞳は群青で理知的だ。鼻筋は通っていて高い。
身長は190センチあるかないかの長身で、服装は生地を見るだけでも上等のものだと分かる。明らかに貴族位かそれ以上の立場であった。
エルフとは正反対の男らしいイケメンは、トモコとヴェリウスに向かって随分と警戒しているらしい。
敵意を剥き出しにして腰にぶら下げている剣に手をかけているのだ。
「私はもう呪いに縛られてはおりません。いつまでも貴方のオモチャではないのです」
「!?」
エルフは今にも剣を抜きそうなイケメンに向かってはっきりと言い放ち、魔法を行使しようとしている。
止めなさい。貴方の魔法はムキムキになるアレでしょう。とは思ったが、何だか腐の香りが漂っているので様子を見る事にする。
しかし、今のエルフの発言であのイケメンがエルフを監禁していた者だと断定出来た。
「あの強力な呪いが解ける筈はないっ先祖が遺してくれた魔道具なのだぞ!? 貴様ら、何をしたというのだ!!」
イケメンは動揺しすぎて冷静な判断が出来なかったのか、トモコとヴェリウスに怒鳴り散らすと帯刀していた剣を抜いたのだ。
その行動が不味かった。
攻撃の意思ありと見なしたヴェリウスが牙を剥いたのだ。
パキパキッと氷が軋む音をたて、イケメンの両足を覆っていく。
「な!?」
動きを封じられたイケメンは必死にもがき、剣を氷に覆われた足に突き立てている。
アイスピックじゃないんだからさぁ、とトモコが呟いた時、イケメンは状況を把握したのだろうか、真っ青になった顔を恐怖に染めてトモコとヴェリウスを見て震えたのだ。
『貴様がバイリンの国王か』
ヴェリウスの問いに、声も無く首を横に振るイケメンは、どうやらバイリン国の国王ではなかったようだ。
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