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第三章
ラップのような結界
しおりを挟むジャラ…
トモコの風魔法を使用しても、こちらに聞こえてきたのは鎖が引きずられるような音だけだった。
しかし、それも微かにだけで後は物音一つしないのだ。
「風魔法で音を集約させても微かな音しかしないって、死にかけの何かが居るとしか思えないんだけど……」
私の言葉に「寝こけてんのかもしれねぇぞ」と返してくるロード。ヴェリウスはずっと難しい顔をしていて、トモコは今にも扉を開けそうだ。
「こうしていても仕方ないし、扉を開けようか」
「だね!! 開けるよ~!!」
言った途端にトモコが食い気味で返事をし、扉に手をかけた。
「扉を破壊するか?」
『ならば私がやろう。お主らは退いていろ』
ロードもヴェリウスもやる気満々だ。いつの間にか攻撃態勢を取っている。
「ちょっと待って。何で皆そんなに本気で攻撃しようとしてるの?」
神力を使うまでもなく、ロードなら拳で破壊出来そうな木の扉なのだ。それをヴェリウスもロードも神力を使って破壊しようとしている。まさに、小さな虫を全力で潰そうとする獅子のようだ。
「何言ってるのみーちゃん。この扉、結構強力な結界が張られてるよ。多分張った何かは精霊レベルの力を持ってる」
『しかも内側から張られているようなのです…』
何だって!?
結界が張られてるなぁとは気付いていたよ? でもラップみたいな薄さだし、すぐに破れそうだし?
「ミヤビの力は規格外だからなぁ…そう思うのも無理はねぇだろうなぁ」
ロードが苦笑いしつつ頭を撫でてくる。「さすがみーちゃん。ラップかぁ~」とトモコは笑い、ヴェリウスはうんうんと頷いていた。
「という事は、中に居るのは少なくとも精霊と同レベルの力を持った何かだよね…」
「そうなるな」
だからさっきからヴェリウスの顔が険しかったのかと納得する。
「内側から入って来れないような結界を張ってるわけだから…引き籠り系か」
「みーちゃん、今“引き籠り仲間”って思ったでしょ」
何故バレた!?
「ミヤビは最近よく外出してんだろ。引き籠りじゃねぇなぁ」
ククッとロードに笑われ、ショックを受ける。
「2年も引き籠り続けてたのに…アウトドア派が多いおかげで引きずり出されるハメに…だれかインドア派はいないのか」
求むインドア。仲間募集。
「変な仲間作ろうとすんな。ただでさえオメェは体力がねぇのによぉ。もっと体力つけて、せめて朝まで意識飛ばさねぇようにしねぇとなぁ」
このエロゴリラ、逮捕してもらえませんかーーー!!!!
『ふむ…もしかしたらこの力はエルフのものかもしれぬ』
ゴリラが話を下ネタに持っていこうとしていると、ヴェリウスが突然そう言い出しぎょっとした。
「エルフ?! やっぱりエルフが扉の向こうにいるの!?」
『はい。その可能性が高いかと』
その言葉に期待が増し、心なしかドキドキしてきた。
トモコの瞳もより輝きを増している。
「それなら、エルフが驚かさないよう私が結界を破るよ」
張ってある結界を指で触ると。やはり、手触りもピンと張られたラップのようだ。
そのまま少し力をいれただけでプツッと破れた。
指を上下に動かすと、縦に裂けていく。
「うわぁ~。指一本で強力な結界破っちゃった~」
信じられないという顔をした2人と1匹は、そのまま私の動向に注目しだし、いたたまれない気持ちになるのであった。
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