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第三章

エルフってこの世界に居たの!?

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「ふむ…数十年待つ、というのが一番無理のないやり方なのは確かだ。しかし、脳ミソまで筋肉で出来ているロヴィンゴッドウェル第3師団長がそんな提案をするとは…驚いたな」

あ、ルーベンスさんがロードに喧嘩を売った。しかし脳筋の自覚はあるのか、ロードは対して気にしていないようだ。それでいいのか?

「ルーベンスさん、そこを何とか1年以内に1000人集められる方法を絞り出してもらえませんかね?」

揉み手で下手に出てみると、ルーベンスさんは顎に手を当てふむ…と考え込んでしまった。

無言の中、魔力自動車は天空神殿に向かって走っている。
ロードは私の手を握り、指輪をしている指を愛しそうに撫でており、考える気は更々ないらしい。

「…確か、北の国に住んでいる見目麗しい種族が居ると聞いた事がある」

何ですって!? 隠れ住む…深い事情がありそうな種族ですね?

「その美しさから、様々な者に狩られ奴隷に身を落とす者も多かったと聞く。まぁその話も100年程前に噂で聞いただけなのでな…嘘か誠かは定かではないが」
「その種族の名は分かりますか?」
「確か……“エルフ族”といったか」

エルフ族!? ファンタジーのド定番の、あのエルフ!?
あまりの事に、おおっと声を発すれば「エルフ族を知っているのかね?」と問われたので聞いた事はあると答えた。

「見た目は人族に近く、肌は色白で背は高く痩せ型、整った顔が多く、一番の特徴は尖った長い耳というあの種族ですよね?」
「あのかどうかは知らないが、確かにエルフ族の特徴は尖った耳らしいな。見た事がないので何とも言えないがね」

ルーベンスさんの話に出てくる種族は、やはりファンタジーにはかかせないあのエルフのようだ。多分。

「俺ぁ“エルフ族”なんて種族聞いた事ねぇけどなぁ」
「当たり前だ。ルマンド王国の王族のみ見る事の出来る文献にすら、詳しい記載のない幻の種族なのだ。君が知らないのも無理はない」

それ、なんでルーベンスさんが知ってるの?
と思ったが、ロードもそう思ったようで訝しげにルーベンスさんを見ている。

「先々代の王とは幼馴染なものでね。子供の頃は奴と色々な所に忍び込んだものだよ」

懐かしそうに目を細め、ニヤリと笑ったルーベンスさんはまるで悪ガキのようで、こんな顔もするのかと驚いた。

「魔族は寿命が長ぇらしいからなぁ…先々代の王と交流があってもおかしくはねぇが…」

悪戯っ子のような表情をしたルーベンスさんに戸惑いが隠せないらしいロードは、どうも歯切れが悪い。

「とはいえ、その文献ではミヤビ殿の言った尖った耳と美しい外見の事以外には触れていなかったがね。私がエルフ族の噂を聞いたのは、大人になってからだよ」
「幻の種族なのに、噂が出回ったんですか?」

頷き話を続けるので黙って耳を傾ける。

「エルフ族とはっきり種族名を言っていたわけではないが、ある国の王族が、耳の尖った美しい見目の者を奴隷にしている…という噂が出回っていたのは確かだ」
「ある国とは?」
「竜人の国“バイリン”。今丁度君が追っている案件の要注意国だ」
「!?」

え? 何その案件。もしかしてリン(獣人族、フォルプローム国第3王子)の件と関係ある国の事?? 

ルーベンスさんの言葉に驚いているロードの様子にただならぬものを感じた私は、2人の会話を邪魔しないように耳を傾けた。

「100年も前の話だ。気にする程の事でもないだろうがね」
「……竜人族の寿命も、魔族と同じ…いや、もっと長いと聞く。一概に無関係とは言えねぇだろうが」

すいません。エルフの奴隷と竜人の国とリンの国が結びつかないんですけど…2人の会話の意味がよくわかりません。

「例えエルフ族を奴隷にしていた王族が健在であっても、今回の案件と繋がりがあるとは思えないが? 」

全然繋がりません。おっさん達の会話に入っていけません。

「どんな事でも構わねぇ。バイリンの王族について知っている事があるなら情報を寄越せ」
「それが人に物を頼む態度かね」

いや、今浮島の街を案内中だから。しかもルーベンスさんに相談してたの私。その話は王宮しごとばでしてもらえますかーー!? 

しかし、オッサン共に私の心の声は聞こえなかったのか、その話はメインロードの終わりまで続いたのだった。
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