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第三章
ルーベンスさんの不運な午後 part2
しおりを挟む「ミヤビ殿、だったかね」
「あ、名前覚えてくれてたんですね。ルーベンスさん」
透明人間から元通り姿を現してヘラリと笑う。
こういうミスターダンディーなお堅いおじ様は、大概女性の笑顔に弱いものだ。
「君も私の名を覚えてくれていたようだね」
ルーベンスさんはニコリともしないが、目の奥は穏やかなので笑顔攻撃は成功したようだ。
次はお茶攻撃。と、ティーセットをもう一組出してお茶をいれてあげる。
「ああ、ありがとう」
そう言いながら警戒もせずに一口、二口とカップを傾けるので、あら意外と思いながら見ていた。
「……悪くはないが…」
「ああ、お手頃価格の茶葉なもので。リプ○ンと○東紅茶は庶民に愛されいますから」
「そんな名前の紅茶は聞いた事がない」
私は好きな紅茶なのだが、微妙な顔をするので最高級の美味しい紅茶になぁれと願ってあげた。
「もう一口どうぞ。次は美味しいと思いますよ」
嫌そうな顔をされたが、渋々飲むルーベンスさんは人がいいと思う。
「……美味い!?」
この人、宰相のわりに表情豊かだよね。
「ーー…それで、今日はどうしたのかね?」
お茶を綺麗に飲み干してから一息つき、ルーベンスさんが切り出した。
「いやぁちょっとご相談がありまして~」
「私に相談…?」
眉をひそめるので、怪しまれているのだろう。
それはそうだ。一回会ってお茶しただけの関係だ。相談を持ちかける方がおかしいのだろう。
ただ、トモコもロードもヴェリウスも忙しい中、問題を丸投げ出来そうな人物はもうこの人しか思い付かないのだ。
「君は…ロヴィンゴッドウェル第3師団長のつがいではなかったかな?」
ロヴィンゴッドウェル? はて…? 聞いた事があるような無いような…?
「…ロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェルの事だ」
「ああ!! ロードの事かぁ~」
聞いた事あると思った。
「君はつがいの名前も知らんのか!?」
カッと目を見開いて怒ってくるので、ヘヘッと笑って誤魔化した。
仕方がないだろう。ロードをロヴィンゴッドウェルなんて呼ぶ者は私の周りにいないのだから。
「ロードは脳筋…私が相談したい事を解決出来そうにないので。それに今は仕事に忙殺されていて相手にしてもらえません」
「ああ…構ってもらえないからこちらに来たのか…」
私が拗ねてルーベンスさんの所に来たと思われたようだ。
「しかし私も一応宰相でね。仕事は山のようにあるのだが?」
「ルーベンスさんはそれでも余裕そうだし、私の相談内容は、ルーベンスさんにとっては優しい問題だと思うんです。だからご協力お願いします!!」
でないと私がゆっくり出来ないのだ。
必死の形相でお願いしたからか、優しい問題だと言ったからなのか、暫く考えを巡らせた後…
「…聞かせてもらおうか」
と真っ直ぐに目を見つめられたのだ。
「ーー…実は、街を創ったんですけど」
「は?」
「だから、街を創ったんですよ。で、今住人を募集しておりまして、神々から続々と候補者が「ちょっと待て!!」??」
急に話を遮られて驚いた。
「君の話はおかしい!! 何だっ街を作ったとは!?」
「街を創ったんですよ。空の上に」
指で上を指すが、ルーベンスさんは何故かうつむいてプルプル震えている。
いや、こっち見て。ちゃんと説明してるんだから。
「っ今すぐロヴィンゴッドウェルを呼べ!! お前のつがいがおかしな事を言い出したぞ!! となっ」
バンッと机を叩くと、扉ごしに護衛騎士へ叫び始めたルーベンスさん。
おかしいな? 何も変な事は言ってないよね?
「ハッ」と返事をした護衛騎士だが、確か1人しかいなかった。持ち場を離れる事は出来ないのでは? と思ったが、もしかしたら通信魔法でも使えるのかもしれないと一人納得した。
「呼ぶ必要はねぇ。もうここに居る」
聞こえてきた声に、安心感と共に何故か焦りにも似た気持ちが押し寄せてきた。
これは、マズイかもしれない。
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