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第三章
元の世界
しおりを挟む早速見繕ってくる、と言って深淵の森から飛び出して行った魔神の少年を見送った後、しばらくしてヴェリウスとランタンさんに神々からの念話が入り出した。どうやら魔神の少年が他の神々に伝えたらしく、ものすごい反響があったようなのだ。
中には人間などに天空神殿は勿体無いという意見もあったそうだが、ヴェリウスが一喝して黙らせたので問題無いらしい。
『神王様のご意志に逆らう愚か者は神族にはおりません』
等と澄ました顔で言うが、居たよね? 居たから一喝したんだよね?
『神王様の命は絶対です。逆らう愚か者は神族ではありません』
あ、そう言って黙らせたのね…。
怖いんですけどォォォ!!!! 逆らえば神ではなくなるってことですよね!? 恐怖政治!? 絶対王制!? 独裁国家!? もう何にしても怖すぎる!!
「大丈夫。みーちゃんに逆らう奴らは皆、まな板に変えてやるから」
サムズアップが禍々しいぞトモコ。色んな意味でお前が一番危険だ。
「アタクシも候補を選らばなくては!! ジュリーちゃんや他の神には負けられないものっ」
神々への対応をした後、まな板のまま帰路についたランタンさんは、まだ魅了が効いていたのか、メーロン水風船を創ってほしいとは一言もなかったので放っておく事にした。次に会った時は男に戻っているかもしれない。
◇◇◇
早速翌日やって来たのは、やはり迅速に行動した魔神の少年だった。
何もない空間から取り出したのは顔位の大きさの鏡で、そこに映し出されている人の姿に魔法の鏡だと心の中で興奮した。まるでテレビの映像のように、ここではない別の場所、人を映し出していたからだ。
流石魔神だけあり、魔法(神法)に精通している。
「ーー…まず一人目はこの男だ。ララクシュという村に住む魔族で、親類も居らず、獣人達の村に独りで暮らしている。神王様や神々への信仰心はあつく、人も良いので騙されやすい。偏見もなく穏やかな気性の人物だ」
トモコとヴェリウスにプレゼンしている魔神の少年。何故か私は蚊帳の外である。
ロードも昨日から本当に帰って来ないし、ショコラとマカロンも帰って来ない。
リンの事はロードに任せたし、私が何かすると迷惑をかけそうなので出来ない。かといって何かしたいかというとゴロゴロしたいとしか思えないわけで…。
自分の部屋に戻りベッドへとダイブしたが、何だかつまらない。ゴロゴロとベッドの上を転がり、枕元に置いていた薄い本を手にとって開いた。勿論中身は18禁。
そういえば、かくれんぼしていた部屋の持ち主は薄い本を読んでくれただろうか? 楽しんでくれていたら良いのだけど。
等と思いつつパタンと本を閉じる。
腕と足を広げて大の字になり、白い天井を見る。
ここだけ見れば異世界とは思えないよなぁ…。
首だけ動かして部屋を見回し、窓の外を見た。
青い空と、生い茂る木々。回りに家など一切なく、車やバイクの走る音もしない。間違いなく異世界である。
久々に、1人でこの時間に部屋でゴロゴロしているせいか、うるさい声がしないせいか、元の世界を思い出していた。
母と姉は元気だろうか? 幸せに暮らしているだろうか?
ベッドに寝転んで目を閉じて、母と姉を思っていたら……いつの間にか私は別の場所に立っていた。
ベッドの上に居たはずの私は、外に立っていたのだ。
目の前にはキィ…キィ…と風で揺れる古いブランコ。右手には綺麗に塗り直されたばかりの滑り台。左手には錆び付いた鉄棒。そして住宅街。
そこは、元の世界の近所の公園だった。
◇◇◇
その頃のヴェリウスはーー…
『!!? 神王様の気配が…世界から消えた…っ』
王宮に居るロードはーー…
「っミヤビ…?」
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