異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第三章

浮島の住人募集

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結局、ランタンさんのメロン(メーロン)水風船を再度創ってあげたくても、トモコが居るので創れないまま時間は過ぎ、落ち着いた所で今までどん引きしていた魔神の少年がキョロキョロしている事に気付いた。

『どうした? ジュリアス』

同じタイミングでヴェリウスも気付いたらしく、声をかける。

「いや、竜王と暗黒騎士とちっせぇのが居ねぇなぁって」

未だにマカロンを竜王だと勘違いしているのか、ドラゴンが好きなのか、マカロンが居ない事が残念そうだ。

暗黒騎士ロードは違うが、他は天空神殿に行っているぞ』

え? それは初耳なんだけど。てっきりショコラとマカロンのドラゴンコンビで修行してるのかと思ってた。

「“天空神殿”かぁ!! 羨ましいぜぇ!」

あの味が忘れられないとビュッフェパーティーを思い出したのか、ヨダレを垂らしている魔神の少年にヴェリウスも呆れ気味だ。

『今はまだ、天空神殿の守護・管理を任せられるのはこの森の魔獣達だけだからな。交代でここと上を行き来しておるわ』
「へぇ。あんなすげぇ場所に出入りできるだけでも羨ましい!」

そういえば、魔神の少年は魔法(神法?)に造詣が深いとヴェリウスが言っていたな。天空神殿は力を駆使して創ったものだからそういった意味でも興味深いのだろう。

「天空神殿は今や神族の憧れですもの。ジュリーちゃんが羨ましがる気持ちも分かるわぁ~」

“魅了”の力がやっと解けたランタンさんがミルクティーを飲みながら、頬を赤く染めてうっとりと空を見上げる。

ウチは狭いので、外でガーデンパーティーのように机と椅子を出し、皆で軽食やお菓子をつまみつつお茶を飲んでいるのだ。

「あんな巨大でかつ繊細な浮島を創造するなんて流石オレの神王様!! やっぱりすげぇよ!!」
「ジュリーちゃん、みーちゃんは私のみーちゃんだからね!! ジュリーちゃんのじゃないから!!」

魔神の少年の言葉に反応したトモコが、私の腕に抱きついて反論した。
何だこのハーレムみたいな状況は…。

「あ、天空神殿の第一浮島では今住人を募集中だから」

トモコが腕に抱きついたまま思い出したように魔神の少年にそう言えば、つり上がっていた彼の瞳が煌めいた。

「マジかよ!? だったらオレ浮島に住みてぇ!!」

やはり少年マンガに出て来る主人公のようなノリを持つ子だな。
天空神殿で会った時も思った事をまた感じながら、トモコと魔神の少年の様子を観察した。

「残念でした~。募集している住人は神族ではなく人間ですぅ」
「はぁぁ!? 人間を浮島に住まわすのかよ!!?」

信じられないというようにトモコを見る魔神の少年は、視線をランタンさんやヴェリウスに移す。

「おいっ お前らいいのかよ!? あの素晴らしい場所に人間を入れるなんて…っ」

あり得ないとランタンさん達に詰め寄るが、ランタンさんはチラリとこちらを見てすぐに魔神の少年を見下ろした。

「そんな事言われても、神王様が許可を出されているんですもの。仕方ないでしょう」
『我らも出来るだけ住まわす人間を見極めるつもりではいるのだ』
「!!? 神王様が……」

すがるような目をして私を見てくる魔神の少年に何となく頷いてみる。すると彼は、目を見開きしばし思索するとはっとしたように口を開いた。

「オレっ オレの選んだ人間も浮島に住まわせてくれますか!?」

魔神の少年の提案にトモコとヴェリウスを見れば、トモコがマネージャーのごとく話し出した。

「う~ん…それについては、“候補”にはしてもいいけど最終判断はみーちゃんがするから。後、本当に浮島に住みたいって思う人じゃないとダメだから」
「ちょっと待ちなさいよ!! それならアタクシだって候補にしたい人間の1人や2人いますのよ!?」

コイツらきっと、自分が推した人間が住み始めたら、様子を見るという理由で天空神殿に入り浸る気だ。

ヴェリウスを見れば、苦い顔でランタンさんと魔神の少年を見ていた。

「ヴェリウス?」
『……こやつらですらこうなのです。他の神族が候補を出してくるのも時間の問題でしょう』

確かに、理由なんて無くてもヴェリウスに言えばランタンさんや魔神の少年はいつでも天空神殿に行けるというのに候補を出そうとするのだ。神族の憧れの地となった天空神殿の第一浮島に候補を住まわせるというのは、ある種のステータスのように感じるのかもしれない。

「とりあえず、“候補”としては受け付けるけど、悪意や偏見もない身分に拘らない人にしてね。後、さっきも言ったように本当に住みたい人じゃないとダメだよ」

勝手に話を進めているトモコだが、まぁトモコなら人選は間違いないかと自由にさせる。しかしそこへヴェリウスが入っていった。

『トモコよ、少し待たぬか』
「ヴェリーさん?」

ヴェリウスの待ったが入り、首を傾げるトモコは端から見れば魅了がなくても十分魅力的だ。見た目だけは。
そんな事を思いながら熱いストレートティーを飲み込んで、スコーンを口に含み、少し咳き込む。
スコーンは好きだが、口の中の水分を持っていかれるので始めの一口は咳き込んでしまう事があるのだ。注意しよう。


『浮島の住民の条件だが、“神王様への信仰心が強い者”というのも追加させてもらおう』
「あ、そうだね! それは必要だわっ」


それ、必要か?

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