128 / 587
第三章
諜報部隊が必要です!! ~ ロードside ~
しおりを挟むロード視点です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「フォルプロームに諜報部隊を送り込む事を提案する」
俺の一言にざわつく室内。
「ロード、貴方の言いたい事は分かりますが、現在のルマンド王国に諜報部隊へ人手を割く余裕はありません」
レンメイの言葉に宰相が重々しく頷き、カルロは仕方ない事だという表情で動かない。
「諜報部隊は少数で編成する。フォルプロームは幸い獣人の国だ。ルマンドの騎士団には獣人が多いからな。しかも獣人の機敏さと体力は諜報に向いている」
「だから諜報部隊に割く人手はないと…復興の最中なのですよ」
「だからこそ諜報部隊は必要だ。生活に余裕が出りゃあおかしな事を考える奴も出てくる。今回のバイリン国とフォルプローム国がいい例だろう」
「まだ確定はしていないでしょう」
「その為の諜報部隊だろうが」
レンメイは王都の守りが手薄になる事を懸念しているのか、なかなか頷かない。宰相は難しい顔で俺達の話を聞いているだけだ。カルロはやはり動く様子はねぇ。
チラリと陛下を見れば、困った顔をして少し考えるフリをした後、
「諜報部隊を編成する」
と言い放った。
「陛下!?」
反対するレンメイに、宰相が渋々「陛下の決定は絶対です」と一蹴して俺を見た。
「しかし、我が国の騎士団に諜報部隊に人員を割く余裕がないのも事実。人数は少人数とし、第3部隊からのみ人手を出す事とする。宜しいですか? 陛下」
宰相の言葉に、妥協案とばかりに頷く陛下に苛立ちを感じながらも、まぁ提案を受け入れてくれただけでも良しとするかと納得した。
話も終わり会議室を出ると、後ろから声をかけられ振り向いた。
「カルロ」
「よくやるねぇ。諜報部隊なんて」
他人事みてぇに言ってくるカルロにイラッとする。
「はっ 会議中ずっと黙っていた野郎に、んな事言われたくねぇんだよ」
「心外だな。俺はずっと何か良い解決策がないか考えていただけだ。結局見つからなかったけどな」
「ぶっ飛ばすぞテメェ」
「ハハッ」
爽やかに笑うこいつの顔を殴りたくてたまらねぇ。
「トモコはテメェみてぇな野郎が苦手だろうなぁ」
「意地の悪い事を言わないでくれ」
困ったように笑っているが、どっちの意地が悪ぃんだか。
「あー…クソッ 竜人も諜報部隊にゃ必要だってのに、レンメイの様子じゃ協力はしてくれそうにねぇなぁ」
「竜人は彼の部隊にしか居ないからねぇ」
会議が終わった後、不機嫌な様子で足早に部屋を出て行ったレンメイを思い出す。
「…魔族は魔法が得意だったよな…」
「ムリムリ。魔族が魔法を使えるなんて大昔の話だ。今の魔族じゃ、生活魔法を使うにも苦労するさ。ロードの考えているように“幻覚魔法”なんて使えない」
俺の考えを先読みしたらしいカルロはそう言って困ったように笑うが、目の奥は笑っていなかった。
「…まぁいい。バイリン国がフォルプローム国と結託しているなら、多少の獣人も居るだろうしな」
「そっちに人員を割く事は難しいが、出来るだけ協力はする。何でも言ってくれ」
「そうしてもらわにゃ困る。早速だが、オメェバイリン国かフォルプローム国にツテはあるか?」
そんな話をしながら王宮の長い廊下を歩いていると、子供の楽しげな声がしてきて2人で足を止めた。
「今日は貴族の令息や令嬢を集めて、王妃様が茶会を開いているらしい」
「ああ、王妃様はまだガキだったな」
「陛下には早くお世継ぎを作っていただきたいが、相手が子供ではなぁ…なかなか」
「ままならねぇもんだよな」
陛下のお世継ぎは当分先になりそうだなと笑っていると…
「あっ精霊様だ!!」
「本当だわっ 精霊様ー!!」
「お空飛びたい!!」
等と騒がしい声が聞こえてきた。
精霊だぁ? この王宮でガキ共が精霊なんて騒ぐ奴は1人しかいねぇ!!
俺はカルロを置き去りにして、足早にガキ共の所へ向かったのだ。
24
お気に入りに追加
2,573
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※毎週、月、水、金曜日更新
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる