上 下
119 / 587
第三章

ロードのステータス

しおりを挟む


「リン、つったか?」
「は、はい!!」

憧れの師団長様に声をかけられ、更に名前を呼ばれたリンは顔を真っ赤にして、キラキラした瞳でロードを見ている。

「手続きが終わったら、聞いておきてぇ話があるから執務室まで来てくれるか」
「話…ですか?」

少し不安そうな表情をするが、入り口の私達に気付き納得したのか「分かりました」と返事をしていた。

「悪ぃが後でコイツを俺の執務室に案内してやってくれ」

とレッサーパンダのスイ君に声をかけると、他の2人にもそれぞれに声をかけてたから入り口へと帰って来たロードは、理想の上司そのものであった。

「ミヤビぃ、アイツの手続きが終わるまで暇だからお茶にでもしようぜぇ」

ちゃんと仕事しろ。

「さっきまで仕事の出来る上司っぽい感じだったのに、みーちゃんの前ではただのエロいダメなおっさんだね~」
「ミヤビの前では俺ぁ1人の男なんだよ。エロい事考えんのも当然だろ」

トモコにダメなおっさん呼ばわりされた事に否定せず、エロい事も認めた目の前のゴリラは、私を当然のように抱き上げて自身の執務室へと移動したのだ。
その際にぎょっとした顔でこちらを見ていた3人の騎士と、驚愕な表情で顎が外れそうになっていたリンが視界の端にうつったが見なかった事にした。


◇◇◇

「それで、ミヤビが見たっつってたあのガキの“ステータス”ってのは結局どんな内容だったんだ?」

執務室に戻ると、ロードがさっそく切り出してきた例の王子様騒動であるが、ヴェリーちゃんが違う方に食いついた。

『その“ステータス”というのは一体何でしょうか?』
「あ~…トモコに教わった魔法でね、ステータスオープンって念じるとターゲットの情報が数値化されて見えるっていうものなんだけど…それをリンで試したら……」
『成る程、リンの情報に見逃せない事柄があったのですね』
「その通りデス」

ヴェリーちゃんは理解が早いので助かります。

『それで、リンの情報とは?』
「「……」」

私とトモコは顔を見合わせて目配せし合う。
どうする? 言っちゃう? 言わなきゃダメでしょ。というような感じにだ。

「…実は、リンはーー…」



「はぁ!? フォルプローム国の第3王子だぁ!?」

ロードが案の定、開いた口が塞がらないとばかりに私を見下ろしてきた。
勿論後ろから抱き込まれ、彼の腕の中に居る状態なので顔は見えない。声からそうだろうなと想像するだけなのだが、間違ってはいないだろう。

「いや~びっくりだよねぇ。アハハ」
『「……」』

乾いた笑いを披露するトモコに、ヴェリウスは半目になっている。きっとロードもだろう。

「オメェ、身元は確かだって自信満々に言ってたよなぁ」
「身元は確かでしょ! 王子様だよ!!」
「そうだな。王子だな」

冷気が…後ろから冷気が漂ってきています!!

『食糧難で養子に出された年齢が3歳となると、リンは自身がフォルプロームの王子だと覚えていない可能性が高いでしょう』
「確かに、自分の事は完全に田舎から出てきた村人って思ってそうだったし」

嘘を吐いている感じでもなかった。

「養子に出されたとはいえ、他国の王族がウチの騎士団に入ったとなるとなぁ…」
「元王族だよ。養子に出されてるんだからもう王子じゃないって」

急にリンの騎士団入りを渋りだしたのでフォローする。

「大体ここでリンを保護してもらえないなら、もう天空神殿に連れていって私がリンを直々に保護するしかないよ?」
「入団は許可する。保護は俺が責任を持ってするから任せろ」

ちょろいな。師団長。

『まぁ王子といっても名ばかりだろう。当分はお主の所で面倒をみてやると良い』

ヴェリウスにまでそう言われれば否とは言えないロードは、「わかったよ」と渋々返事をして私を抱き締めた。

『そんな事よりミヤビ様、ロードのステータスとやらを確認していただけませんか?』
「良いけど、どうしたの? 突然」

ヴェリウスの突然の言葉に聞き返せば、

『ミヤビ様と気持ちが通じただけで、何やら奴の力が上がっているようなのです。一旦確認していただければ、今の訓練を効率の良いように改める事も出来ますので』
「え!? みーちゃんとうとうロードさんとドッキングしちゃったの!?」

ドッキングいうな。してないからな。

「残念ながら最後まではシてねぇが、惜しいところまではいったんだよ」

ロードよ!! 余計な事をトモコに話すんじゃない!!

「なんだ~。みーちゃん、ロードさんが下手だったの?」

もっとオブラートに包めないかなぁ!? 明け透けすぎて耳を引きちぎりたくなるわ!!

「そんな事よりロードのステータスだよ!! はいっ ステータスオープン!!」

恥ずかしくて言えなかった“ステータスオープン”の言葉を口に出すほどヤケになっていたのだ。



名前: ロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェル
年齢: 41
種族: 半鬼神
LV: 100(MAX)
HP: 100(MAX)
MP(GP):80
装備: 神王の創った綿の服(効果: 防御力∞)
      神王の創ったのブーツ(効果: 脚力向上∞)
      双剣(攻撃力45)  ▽

スキル:  気配察知
         騎竜
         空間魔法(アイテムボックスレベル5)
         悪鬼の睨み
         鬼才料理
         念話
         悪鬼の筋力
         怒りの雷撃
         ミヤビラブ
         etc.

称号: 神王のつがい
      鬼才の料理人
      主夫
      暗黒騎士
      etc.

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...