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第三章
他国からみたルマンド王国
しおりを挟む「…そっちの姉ちゃんは一般人でも、アンタは違うだろ」
やはりトモコを貴族だと思っているようだが、ちょっと私に失礼ではないか? そりゃ確かに平凡な顔した一般人だが、もうちょっとオブラートにさぁ…。
「私達は本当に貴族じゃないよ。ただの冒険者」
トモコが証拠とばかりに、昨日手に入れた赤色のドッグタグを見せると、Gランクというのがまた怪しさを倍増させたようで、訝しげな表情をされた。「金持ちの道楽?」とつぶやかれ警戒されている。
確かにお供と魔獣を連れた美人の女性が、豪華なお弁当を持ってシェフだなんだと言っていれば、貴族じゃないにしてもお金持ちの家の変わったお嬢さんだと考えてしまうだろう。
更に道楽で冒険者登して獣人の国に遊びに来た時ににゃんこヤンキーを見つけてお持ち帰りしてやろうと思っているのでは…という疑心暗鬼に囚われているのではないだろうか。
ならばここは話を進める為に、彼の想像に近い人物を演じた方が良いのではないかという結論に達した。
「実は、お嬢様は人族のとある商家のご令嬢なのです。私がこう言うのも何なんですが、大変変わった方でして…今回もお嬢様の我が儘でこちらの国を訪れたわけなのです。あ、騒ぎたてられるとお嬢様のご実家にご迷惑がかかるので、その事は黙っていていただけますか?」
突然の芝居にトモコとヴェリウスがギョッとしていたが、途中から私の意図に気付いてフォローに入ってきた。
「みーちゃんそれは内緒って言ったでしょ。お父様にバレたらまた怒られちゃうよ」
『怒られるのはいつもの事だろうが』
割りとノリの良い1人と1匹に感謝しつつ続ける。
「そんなわけで、貴方の力になれるかもしれません。…空腹で倒れた理由と、人族の貴族に怯える理由、良かったら聞かせていただけませんか? ついでに名前も」
さっさと吐露してくれないかとズバリ理由を聞いてみた。
「…やっぱりただの冒険者じゃなかったんだな…」
信じたにゃんこヤンキーににっこり微笑むと、ポツリポツリと語りだしたのだ。
「ーー…オレの名前は、リン。見ての通り猫の獣人だ」
と、シマシマの栗色の尻尾をゆったりと揺らす。
「私はミヤビです。お嬢様はトモコお嬢様とお呼びください。魔獣はヴェリーです」
ヴェリウスという名に名字があるとは聞いた事がないので、名を縛られないように本名は教えなかった。
怖いよね。本名言っただけで奴隷扱いの名縛りって。(※未だに真名を知られると奴隷にされると思っています)
「わかった」
ペコリと頭を軽く下げたにゃんこヤンキーは案外育ちが良いのかもしれない。
「アンタらは、この国の獣人族が人族の国へ出稼ぎに出てる事を知ってるか?」
「…そういえば、ルマンド王国では獣人族を見かけましたね。そんなに多くはなかったですけど」
にゃんこヤンキー改め、リンにそう返事をすると意外そうな顔をされた。
「アンタらルマンド王国の出身かよ…てっきり隣の“グリッドアーデン”から来たのかと思ってたよ」
“グリッドアーデン”というのはどうやらこの国に隣接している人族の国の名前のようだ。
隣といっても砂漠を越えた所のようだが。
「ルマンド王国の奴ならお人好しも頷けるな」
ルマンド王国は国民性がお人好しなのだろうか? 確かにギルドではそんな感じだったが。
「あそこの騎士団の師団長は、皆強くて格好良くて優しいって有名だし、差別もないから王様が人族でも色んな種族が混在して暮らしてるって聞いた事がある。神獣様と人族の神様の加護もあるから皆安心して暮らせるらしいって」
は? 師団長…強くて格好良くて優しい? 神獣様の加護?? 人族の神の加護も?
えええぇぇぇェェェ!!!?
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