96 / 587
第三章
キノコ狩りって素人はやっちゃダメ
しおりを挟む大声で“これから商売仇になりますぜ!!”と叫んだようなものの私達はそれからすぐ店主に追い出され、けれど2人でテンションが上がっていたものだからウヒャヒャッと笑いが止まらず、周りからおかしな目で見られたのだった。
ちなにみ服屋の店主は私達を追い出す時に、「頑張りな!!」と激励してくれてウィンクをバチーン!! とかましてから外にポイッと追い出した。
今日はもう帰ってお酒でも飲み交わそうよという雰囲気になり、転移扉を出した所で突然ロードに捕獲されたのだ。
それに対してトモコがウヒャウヒャと笑いながら、
「こっちの世界の連れ込み宿がどんなだったかまた教えてね~」
と爆弾を落として扉を潜ったので、口が開いたまま塞がらない。
しかし、
「やばーい!! お土産買ってなかったー!!」
となに食わぬ顔で戻ってきたので頭を両拳でグリグリしてやった。
「ギャァァァ」と悲鳴を上げているが知らん! お前はさっきの女子力をどこに落としてきたんだ。今すぐ拾ってこい!!
「ミヤビ、許してやれって。オメェの言葉にテンションが上がってんだ。よほど嬉しかったんだろうよ」
等と私の腰を抱いたまま宥めてくるロード。
「そうだよみーちゃ~ん!! 許してぇっ お土産買いに行かせてーー!!」
半泣きのトモコとそれを見て苦笑いするしかないロードに、仕方ないと頭グリグリ攻撃を止める。するとホッとしたのか、トモコがロードの前に手を出して、「おみや代下さーい」とたかり始めた。
お前…本当にご飯屋さんの時のトモコと同一人物か!?
「…やるからデートの邪魔すんなよ」
と懐から革で出来た袋を取り出しているロードを見てぎょっとする。
「ハーイ!! ショコたん行きますぞーー!! あっみーちゃん扉そのままにしておいてね~」
「トモコ様ぁ、ショコラは主様をお守りしなくてはいけないのです~」
「ダイジョブ、ダイジョブ~。みーちゃんにはロードさんがついてるものぉ。ショコたんは私と一緒にヴェリーさん達のお土産買って帰ろう!」
そう話ながらショコラを引きずって行ったトモコを黙って見送ったのは、あまりの事に声が出なかったからだ。
「っし!! 邪魔者は消えたし、デートすんぞ」
ニッと笑って私を見下ろすロードに胡乱な目を向ける。
「邪魔者って…。しかも買収した…」
ボソリと呟けば、顔を耳元に近づけてくる。
「なぁミヤビ」
「ナンデショウカ?」
嫌な予感がして一歩下がろうにも、腰を抱かれていて動けない。
「トモコが家に来てからひと月。全然俺の事構ってくれてねぇよなぁ」
掴まれていた腰を両手で持って、クルンと回され向かい合わせにさせられる。
「…3人と1匹で飲んだりしてるよ?」
「2人きりでは飲んでねぇだろ。それに…」
右手の親指でちょん、と唇に触れられて心臓が跳ねた。
「キスも、してねぇ」
耳元で吐息を感じながらの色っぽい声と言葉に、心臓どころか身体が跳ねた。さながら、しっぽを太くしながら硬直して跳ねる猫のように。
き、き、き、くぅぇあーーー!!!?
「ミヤビ…」
ゾクリとするような色っぽい声で呼ばれて「うひゃい!?」と声を出してしまった。
耳がっ耳が溶けそうだ!!
「ミヤビ、好きだ」
私の反応が面白かったのか、そう言ってククッと笑うロードがいつもより男らしく見えて顔に熱が集まってくる。
しかし、ニヤニヤ笑うロードの余裕そうな態度に段々と腹がたってきた。
「何だかロードは女慣れしてる」
だから言ってしまった。子供のような事を。
「あ゛?」
眉間にシワを寄せるロードから顔を反らし、さっきからモヤモヤしていた事を口にする。
「だって女の子の好きそうな所に詳しいし、エスコート慣れしてた」
自分でも一体何を言っているんだと心の中では思うのに、口は勝手に言葉を紡ぐ。
「騎士はレンメイさんやカルロさんみたいに紳士だから、ロードも女の子には紳士なんでしょ」
ロードは私をつがいだと言って好いてくれているが、実質恋人でもないのにこんな発言はおかしいんだと分かっている。
なのに何故か止まらない。
あれだけ助けてくれたのに。お礼を言わなくちゃいけないのに。何だコレ!?
「ちょっと待て、そりゃあオメェが好きそうな所は事前にチェックすんのが当然だろ。大体、レンメイとカルロが女に対して紳士っつーが、アイツらが紳士なのは好きな女とその関係者にだけだぜ。騎士とか関係ねぇからな。俺だってオメェとその家族以外にゃこんな接し方しねぇよ。…つーか、オメェ何かおかしくねぇか?」
「おかしくないよっ ロードなんてレンメイさんとカルロさんと3人でお付き合いしてれば良いんだよ!!」
何言ってんだぁ!? 私の口ィィ!? ちょ、これ違う。私じゃない。そりゃちょっとはロード×レンメイとか色々よぎったけどもォ!?
「ミヤビ…オメェ変なもんでも食って……あ゛」
あ゛? あ゛って何だ。
「オメェがさっき食ってたサラダにキノコが入ってなかったか?」
「入ってたけどそれが何!? 」
「それって、ほんのりピンクがかってなかったか?」
……確かにピンクがかってた。けど味は椎茸だったよ。サラダに椎茸って微妙って思ったから覚えてる。
そう言うと、ロードの顔が引きつり「やっぱりな」と小さな声で呟いた。
「もしかして、毒キノコだったり……?」
私の顔も盛大に引きつる。
「いや、毒じゃねぇ。毒じゃねぇがちょっと厄介なやつだな」
「厄介!?」
解毒!! 解毒しろ私の身体!!
「そのキノコな、“ジェラシータケ”って言って…食った人間の嫉妬心を増幅させるキノコなんだわ。しかもシイタケとそっくりで間違い易いから、割りと頻繁に飯に紛れてる」
ジェラシータケ……嫉妬心の増、幅……
はいぃぃ!!!?
24
お気に入りに追加
2,574
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる