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第二章

判決! 有罪である!!

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「みーちゃんに……っ何て事言ってんだっこの顔だけ男ーーー!!」

わめく人族の神にキレたトモコが、負けない位大声で叫んだ。
自身のつがいの怒鳴り声に怯んだ人族の神は、目を見開いてトモコを凝視している。

「誰がみーちゃんのせいで傷付いたって!? 私はねぇっみーちゃんが居たからあんな事をされても生きてこれたの!! それを一度でも私から奪ったアンタが、何ふざけた事言ってんだーーー!!!」

あ、殴った。
トモコが人族の神の方へ走って行って、グーで頬を殴ったのだ。その後殴った方の手を涙目でブンブン振っている様子から、自分の手にダメージがあった事が伺えた。
仕様がないのでこっそり治療しておいた。

「と、トモコ…」

一方、殴られた側は心にダメージは負っても身体はピンピンしているようだ。にもかかわらず殴られた頬を手で押さえ、トモコを驚愕の表情で見つめている。

「あのクズ男を殺してくれた事と、この世界に連れて来てくれた事には感謝するけどね…」

その言葉に人族の神の瞳が輝いた。が、

「けど、みーちゃんを殺した事は一生許さない!! みーちゃんを責めた事も!! 後、そのピアス私がみーちゃんから貰ったんだから返して!!!」

キッと睨んで捲し立てるので人族の神は徐々に力が抜けていき、ついには崩れ落ちた。追い討ちをかけるようにランタンさんがピアスを取り返してトモコに渡したので、ハラハラと泣き始める始末である。

「す、すまなかった…っ トモコ、トモコ許して…っ」
「嫌! 許さないっ」
「そんなぁ~」

子供のように泣き出した人族の神にとどめをさし、ズンズンとこちらへ戻ってきたトモコは、フンッと鼻から息を吐いて取り戻したピアスを私に見せたのだ。ドヤ顔で。

『ミヤビ様、アーディンは…あやつはもう“神”ではありません』

尻尾を垂らしたヴェリウスが、私の隣で人族の神の様子をうかがいながら哀しそうな声をもらした。

『神王という存在を手にかけたあの者の魂は穢れてしまっているのです』

だからか。
魂が穢れてしまっているから、あんなに不安定な状態なのかと納得する。

ヴェリウスは前足でカリカリと、大理石の床を意味もなく引っ掻くと耳をふせて私を見上げた。

『ミヤビ様…』
「なぁに?」

言い辛そうにしているヴェリウスに聞き返す。
もしかして魂を浄化して欲しいのかな?

『…あやつをどうか、ミヤビ様の手で葬ってやって下さいませんか…最期の情を、かけてやっては下さいませんか?』

ヴェリウスから殺人(神?)を推奨された件んんん!!!
ムリムリ、無理だから!!!
生粋の日本女子である私が人を殺せるわけがないだろう!?
チラッとトモコを見ると、話が聞こえたのか「あばばばば」と言いながら足をガクガクさせていた。
ランタンさんは険しい表情でこっちの様子をいかがっているのでプレッシャーがすごい。ロードは…兜で顔が見えない。

『勝手な事を申しているのは重々承知しております。ですがこのまま我らが消してしまうのはあまりに憐れで…』

消す!? ヴェリーちゃん、消すって何ですか!? 思考が危ない人になってますよー!!
ヤバイ。このままでは私が人族の神を殺す流れになってしまう。
一体どうしたら……これはもう、穏便に断るしかない!!

「…殺しはしないよ」

ヴェリウスとランタンさんを見てはっきり伝えた。

「この人がこんな風になったのは、元はといえば私のせいでもあるから。「みーちゃん!?」」

トモコがそれは違うよと首を横に振る。その様子に笑いかけると話を続けた。

「けど、“神”としての力は剥奪する。彼の穢れた魂は浄化して、人族として一からこの世界でやり直させる」

これが裁判官としての私の判決であった。
ん? 私はいつから裁判官になった? ま、いっか。
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