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第二章
壊れた心
しおりを挟む人族の神“アーディン”視点です。
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ほどなくして、私の神力か溜まった。
何故今なのだ!! 何故、トモコが汚される前ではなかったのか!?
自分自身への怒りと苛立ちで頭が一杯になった。
そして、その怒りは男と、神王へと向いたのだ。
異界へ渡った私は、まず男を殺した。勿論楽に殺しはしなかった。徐々に恐怖を与え、追い込んでから絶望を与えて魂ごと消滅させた。スマホとやらと共に。
それでも怒りは収まることはなかった。
神王…奴を殺さなくてはこの怒りは収まらない。
しかしこの選択は、最悪の結末を生む事ととなる。
カイシャとかいうものからの帰りだった神王を亡き者にする為、私はトモコを連れて帰る力だけを残して、全力で殺しにかかった。
身体は人間の娘であっても、魂は神王なのだ。これで殺せるかは分からない。
そう思っていたが、すぐ魂だけとなった神王に呆気にとられる事となる。やはり人間だったからだろうと無理矢理自身を納得させたが。
本来なら魂も消滅させてやりたいが、神王がいなければ世界は崩壊する。だから魔素を世界に満たす為に…利用する為に魂を捕まえて私達の世界へと移動させたのだ。
しかし、神王の死を知ったトモコがとった行動は…
自害だった。
これは最悪だ。
自害をした魂はどの世界にも受け入れてはもらえない。さ迷った果てに消滅する運命にあるのだ。
私は無理矢理トモコの魂を連れて世界を渡った。
けれどもやはり、世界はトモコを受け入れはしなかった。
無理矢理連れてきた影響で、彼女の魂から“色”が失われ、肉体を再編しても髪も瞳も透明がかった白であった。
さらに目覚める事もなくこんこんと眠りについたまま月日が流れた。
そんな折りに私の創り出した精霊の1人が、力比べとかで獣人の神の眷族の核を狩ってきたのだ。
それは相手も承諾していた事だったそうで、まぁ稀にそういった事もある為に今後は止めてくれと注意しただけで済ませたのだが、その後精霊は何故か私に核を渡してきたのだ。
返しに行こうかと思っていたが、あまりにも美しい色をしたその核をトモコに見せたくなった。
眠り続ける彼女のそばへと核をかざしたその時、彼女の中へと核が吸い込まれそして気付けば…トモコの瞳が開いており、その半透明な目で私を見つめていた。
勿論歓喜したが、しかしそれはすぐに閉じられ、そのまま開く事はなかった。
私はすぐさま自身の精霊に核を狩って来るよう命令した。だが、一名を除きその命令を聞き入れる者はいなかったのだ。戸惑い、自分たちの主はおかしくなったのかと見てくる。
例え自分で創った精霊といえども、仲間を狩るような愚か者は居ないという事だ。神王の命でない限り。
私は思い付いた。
これは神王を目覚めさせる為だと説得すればいいのだと。
トモコを神王に仕立てるのは気が引けたが、核を集める為だと自身に言い聞かせて精霊達へと命を出した。
そしていくつかの核をトモコへ与えれば思惑通り、彼女はほんの少しだけ“色”を取り戻したのだ。だがまだ足りない。
だというのに、魔素の尽きかけたこの世界では核を集める事すらままならなかった。
こちらへ連れて来た神王は何をしているんだと苛立ち、人族をけしかけてようやく動き出した事にさらに苛立ちが増した。
その苛立ちは、世界に魔素が満ちた時に霧散したが。
何故ならトモコが目覚め、精霊達の前に姿を現したからだ。
刹那ではあったが力を与えればトモコは目覚めるのだと確信した瞬間だった。
絶妙のタイミングで姿を現した神王に、疑いだしていた精霊達は、水を得た魚のように核を集め出した。
だというのに神王は、私の意に背いた動きをし始めたのだ。
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