異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第二章

つがいと真相

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「殺した…?」

愕然とした声で呟いたのはロードだった。
後ろは振り向かずに人族の神を見据えていれば、彼はクッハハハと笑い始める。

「そうだ。あれは見物だった! 異界で呆気なくその命を散らした間抜けな神王の姿は!」

おぅ…マヌケな死に方をしたのか。どんな死に方だったのか聞きたいような聞きたくないような。
考えたくはなかったが、私のBLコレクションは誰か処分してくれただろうか…。

しかし人族の神のこの豹変はおかしくないか? ノリが芝居がかっているというか…クッハハハとか笑い方もわざとらしいし。何だか無理矢理な感じがする。

『“アーディン”!! お主は何を言っている!? 異界で神王様を殺した!?』

悲鳴に近い声を上げるヴェリウスを特に何も言うことなく一瞥する人族の神。

「まさか…っ 異界にまで神王様の魂を探しに行ったとは聞いていたけれど、殺して連れて来ただなんて…ッ」

自分が何をしたのか分かっているの!? と青白い顔をして叫ぶランタンさんには悪いが、もうちょっと質問を投げ掛けてみようと言葉を口にする。

「私は貴方に殺される程憎まれているのでしょうか?」

会った事もない神に何故殺される位憎まれているのか全く分からない。
しかしこの質問に目の前の神の形相は益々歪み、美人が台無しになっている。

「憎いだと…? ああ、憎いっ 貴様さえ気付いていれば…っ 貴様が私の“つがい”を見捨てなければ…っっ」

つがい…?


◇◇◇


神王様が御隠れになってから気の遠くなるような年月が過ぎた。
魔素で満ち溢れていた美しい世界は今や影も形もなく、滅びの一途を辿るのみであった。
神王様が再びこの世界に顕現されなければ、近い将来跡形もなく消えるだろう。
それが我が君神王様の望みであるのならば致し方ない事だ。しかし、もしも我が君の魂が異界で迷い帰って来れないのであれば、こちらへお連れするのが私の使命である。
何故ならば、空間を繋ぐ事に特化した能力を持つのは神族の中でも私だけだからだ。

とはいえ、私が移動出来る程の“扉”を創るには神力をある程度溜めなければならない。
異界へと移動された事までは分かっている我が君の魂を探す為に、針先程の小さな穴を開け、様々な世界へと空間を繋げた。針の穴程度であれば力の消耗も抑えられ、我が君の力を感じる事も可能であるからだ。

しかし異界とは、我が君はどこまでも自由なお方だ。

奔放な我が君の魂を見つけたのは、それから間もなくの事であった。

異界を見る事の出来る鏡で我が君の魂を写し出せば、平凡な人間の娘としてお育ちになり、神王としての記憶もなく平和に暮らしていたのだ。ならば見守り、寿命が尽きた時に魂をお迎えにあがれば良いだろうと思っていた。

人間の寿命など、あっという間なのだから。

そうして見守っていること数年、我が君がコウコウセイとかいうものになったあの日、私は“つがい”と出会った。

“イノウエ・トモコ”。
誰よりも美しく愛らしい女性だった。

彼女は我が君とすぐに意気投合し、親友というものに収まった。私のつがいが主の親友とは喜ばしい事だ。

月日が経つにつれ、我が君のそばに侍るつがいが羨ましく、つがいのそばにいる我が君が妬ましくなっていったが、2人の幸せそうな顔は私を幸せにしてくれた。

トモコにカレシという男が近付く度に私は異界へ渡ろうとしたが、トモコはカレシとやらには自身の身体を触れさせる事はなかった。だから力が溜まるまではと我慢が出来た。
2人の寿命が尽きれば、トモコも我が君もこの世界へ連れてくる事が出来るのだと。

我慢に我慢を重ねて見守っていたある日。
我が君の寿命が半分尽きた頃だったろうか、
トモコが、私のつがいが、男に汚されたのだ。

その男はトモコのカレシというやつだった。腹がたったが、いつものように早々に会わなくなるだろうと思っていた。何故ならトモコの魂はつがいである私を求めていたからだ。
彼女の魂が私を求めるあまり、私に少しでも似た形の魂を見つけてはそばにおき、確認している時の関係がカレシなのだ。
だから彼女は絶対カレシとやらに身体を触れさせない。本能で私ではないと感じているからだ。

しかし、今回のカレシとやらは強引な男だった。
拒んだトモコを無理矢理汚し、それをスマホとかいう道具に撮って脅したのだ。
その時に私の神力が溜まっていれば…っ
すぐにでも異界へ渡り、トモコの元へと駆け付けたのに!!

男が要求したのは金と身体だった。更にそれはエスカレートし、魔の手は親友である我が君に伸びようとしていた。

だから、トモコは全てを捨てざるをえなかった。

みーちゃん助けて、と1人になれば涙して、我が君の前では淡々と決別の言葉を吐いた。

あの時に、我が君が気付いていれば…っ あの時に手を差し伸べていれば…っ

けれど、そんなトモコに返ってきたのは、神王の心ない言葉だった。
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