異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

文字の大きさ
上 下
74 / 587
第二章

乙女ゲーム “剣竜王ヴァルバルギ”

しおりを挟む


あのピアスは…っ

「剣竜王ヴァルバルギの守護するパルティターン村のリューシオの娘、リュカの想い人ライディンが親友アランに2人の夢の約束として渡した、私の作ったピアスだ!!」
「あ゛? 今なんてった?」

ロードが訝しげな声を出すが、返事が出来る余裕が無い。
私の頭の中は、何故人族の神がそのピアスを持っているのか!? という疑問で一杯だったからだ。

「主様? バッドギルティ…村? のライディングアランっていう人にピアスをプレゼントしたんですか?」

違う。何だか村の名前が恐くなっている。人の名前も必殺技の名前のようになっているぞショコラ。

確かにあれは私が8年前に頼まれて作ったピアスだ。
能力で拡大して確認したが、細かい箇所の柄は私のオリジナルだから間違いない。

「違うよショコラ。ライディンやアランにピアスをプレゼントなんてするわけがないでしょ。…私があのピアスを作って渡したのは、アランのコスプレをするからって製作を頼んできたにだよ!!」
「は…? こ、コス…?」
「主様~、こすぷれって何ですか??」

説明しよう。コスプレとは、漫画やアニメの登場人物の扮装をする事である。

戸惑うショコラとロードに余計な知識を与えながら、私は過去を思い出していた。


◇◇◇


「みーちゃん!! 今度のコミケで剣竜王ヴァルバルギのコス併せする事が決まったよ!!」
「いや、剣竜王ヴァルバルギって何!? すごい名前なんですけど!?」
「私が今ハマってる乙女ゲームの題名だよぉ~」
「乙女ゲーム!? 剣竜王ヴァルバルギってのが!?」

どうかんがえても乙女ゲームより冒険や戦闘もののゲームではないだろうかという題名を叫びながら、嬉しそうに走ってくる美人な親友は漫画、アニメ、ゲームが大好きなオープンオタクである。

「あのね、私がコミケでやるのは、剣竜王ヴァルバルギの守護するパルティターン村のリューシオの娘リュカの想い人ライディンの親友アランなの!! それでね、手先が器用なみーちゃんにお願いがあるんだけど、アランがライディンからプレゼントされたピアスを作ってもらいたいんだぁ~」
「可愛くおねだりされても、ツッコミどころがありすぎて逆にツッコめねーよ!?
 剣竜王からのその前置きいるぅ!? 今の説明アランだけでよくない!? 
てか誰がメインキャラなのそのゲーム!?」

結局まくし立てるようにツッコめば、丁寧にゲーム内容を語ってくれた親友を、そうじゃないと殴りたくなったのは言うまでもない。

ちなみに剣竜王ヴァルバルギのストーリーは、異世界から召喚された女子高生が主人公プレイヤーで、召喚先が竜王ヴァルバルギの頭の上だった事から物語が始まる。
ヴァルバルギはドラゴンではあるが、何故か剣の扱いがその世界トップレベルなのだそうだ。
ブレスでも、魔法でもない、剣の扱いで竜王となった異色のドラゴンなんだとか。
それはもはやドラゴンである事に何の意味があるのだろうか。

誰に召喚されたかも謎な主人公が過酷な世界を生きていくには強くなるしかない!! という脳筋な考えの元、ヴァルバルギに弟子入りし、様々なモンスターを師匠ヴァルバルギと共に倒して行くまさに脳筋ファンタジーである。
問題なのは主人公の武器が弓だという事だ。剣ではないのか。
そして、修行の中で出会う見目麗しい男性諸君との恋愛模様がちょろっとあるかなぁ程度の、後は戦いの日々というどこが乙女ゲームぅぅ!? な剣竜王ヴァルバルギは、一部のファンから異様に支持されるというマイナーなゲームである。
そして題名にもなっているヴァルバルギではあるが、攻略対象ではない。
全てにおいて裏切られるゲーム。それが剣竜王ヴァルバルギなのだ。

◇◇◇


余計な事も思い出してしまったが、そのアランのピアスを作って欲しいと言ってきた親友こそが、「アンタより彼氏の方が大事だから」と私を切り捨てたあの親友である。

つまり元親友の、8年前にコスプレで使用していたピアスをあの人族の神が付けている事になるわけで……。

これは、ボケられているのだろうか?
もしかして人族の神はああやってツッコミ待ちとか?

蔑んだ目をされたけど、こっちが蔑んだ目をしてもいいのでは? と思えてくるのは気のせいだろうか。


「あ~…つまり、親友にプレゼントしたピアスを人族の神が今付けているって話でいいのか?」

そんな事をつらつら考えていると、突然ロードにそうふられ、心を読まれた!? と驚いていたら…

「全部口に出してましたよ~」

とショコラに笑われた。
思わず手で口をふさいだこの間抜けさに、ロードもショコラもただ優しい眼差しを向けるだけだった。
しおりを挟む
感想 1,621

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

処理中です...